洋館に棲まう者

住原かなえ

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第三の語り

05

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5月1日
家中の壁が黒い。なぜ。
玲奈はメグちゃんのいたずらだと言っている。

5月2日
家に長い毛の犬が入ってきた。
玲奈は居間の壁から飛び出してきたのだと言った。

5月
また俊介が絵を描いていた。
家が黒い何かで覆われている絵だ。
最近、俊介が怖い。
怖い。

5月
正行が仕事から帰るなり家が焦げ臭いと言い始めた。
何も燃えていないのだから、そんな臭いがするはずない。
正行は時々変なことを言う人だ。

5月
今日は食堂で大勢の人と食事を楽しんだ。
ご馳走を皆が喜んでくれた。
お客さんは沢山いた。

田舎者みたいな言葉で話す人がいた。
どこかの山か寺で育ったのだろうか。

5月
今日は客と家でばったり会ってしまった。
案外、優しそうな人だった。
俊介なら懐いてくれるかもしれない。
あの子は内気すぎるのだ。
もっと自分の意見を言うべきだ。

5月
俊介がまた妙な絵を描いていた。
いつもの牧場に洋館が建っているのだ。
俊介は一体何が言いたいのか。伝えたいのか。
私には分からない。
やはり、俊介に色鉛筆をあげたのは間違いだったのかもしれない。

5月
家の前にまた誰かがいる。
いや、家の中の外と言うべきか。
誰なのだろう。

6月
家の中が随分と散らかっている。
あちこちに人形がある。
玲奈のおもちゃにこんなものはあったっけ。

6月
優しい年配のお婆さんと出会った。
何だか服装がユニークだった。
世間話をしばらくしていた。

6月
この家に住むのは、もう限界かもしれない。

6月
正行が最近イライラしている。
どうしたの。
私は何もしてない。

6月
病院に行こうと正行が言った。
なんで?
あの人は私が嫌いなのかもしれない。

6月
ますます家が汚くなっている。
使用人は一体どこをみて掃除しているのだろう。

6月
今日は客と会った。
とても緊張する相手だ。
失礼なことは絶対に出来ない。

6月
鏡を見たら、顔が黒くなっていた。
なんで。

7月
ああ、あの人形をなくしてしまった。
どこを探しても、この広い家でそうそう簡単に見つかるわけもない。
10も部屋があるというのは、大変だ。

7月
俊介が老女と何やら話し込んでいた。
あの子は老女によく懐いている。

7月
ドッグフードが切れている。
そろそろ買い出しにいかないと。

7月
誰かが家の中を歩いている。

7月
俊介の扱いはむずかしい。




玲奈が優しく手を振ってくれた。
あの子は大切な娘なのだ。
宝物といえる。



正行が家に入ってきた。
私は追い出そうとした。
誰なの。

私は頭が変なのかもしれない。



今日は久しぶりに家族でそろってご飯を食べた。
しばらくいなかった娘も帰ってきてくれた。
知らない男の子が一人いたのは少し気になったけど。
これが家族の正しい形なのかもしれない。




変な人たちが家にきた。
娘さんを虐待してるんじゃないか、だって。
頭がおかしいんじゃないのか、と本気で思った。
私の大切な娘を傷つけるなんて、そんなのあり得ない。


私はすごく幸せだ。
本当に色々なことがあったけど、娘にも辛い思いをさせたけど、こうしてみんなで一つになれるのって、やっぱり素敵だし、理想的。
今日の食卓は全員が揃って豪華だった。

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