前世の記憶は役立たず!ーエルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎるー

藤 野乃

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アルシア移住

ダンジョン、まだ行けてない

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 ギャンギャン……いてぇ!やめて!……ガフガフ!ワンワン……

 遠くからフレスベルグの悲鳴が聞こえる。
 ケルベロスは、無事借りてきたようだ。
 ──序列をわからされてるみたいだけど。

 ケルベロスは体育会系だからね。

「はぁはぁ、全くひどいやつらだよ!」

「あ~パンジーちゃんだァ~! かっわいいー!」

 ティティはケルベロスの周囲を飛び回って、パンジーちゃんの頭を順繰りに撫でた。

 ──序列はやはりフレスベルグが最下位か。
 まあ、想定通りね。

 フレスベルグはようやくパンジーちゃんの右頭から解放され、よろよろと椅子に座り込んだ。

「で、俺はさー、デジュカ大陸のダンジョンの涅槃岳に行きたいんだけど」

「ダメダメー! 私、お婆ちゃんに絶対デジュカは行っちゃダメ! って言われてるからァー」

「え、何でだよ! デジュカ、安全な観光地としても有名じゃん?」

 ティティは、そこそこ真剣そうな顔付きになった。
 手のひらサイズだけど、ちゃんと大人の女性の姿をしている。
 四枚あるハネはトンボの羽のような形状で、ちょっとだけキラキラしてるけれど、ほぼ透明。
 とても美しい妖精だ。
 ──ちょっとだけアホの子だけど。

「んとね、大昔にデジュカでチョー大事件があってね! ハネをもぎまくる怖ぁいエルフがいてね、ハネ妖精のみんなで~、ティティのご先祖様も魔界に移住したんだよォ~!」

(やだ、ソイツ知ってるわぁ…………)

「だからね!伝説の──えっと、ハネモギ? が居るデジュカは禁断の地なの!」

「なにそれカッコいいな!? んじゃ、デジュカは今度でいいや!」

「あのね! ゴブリンの秘密の迷宮に行こ!」

「おっけー!」

 ──どうやら話は決まったようだ。

「あ、ジューン。カルミラから荷物と手紙預かってきたぞ」

 フレスベルグが渡してきた、中々の大荷物を受け取り、手紙を読んでみた。


 ◆
 ジューンへ。
 フレスベルグには任せられないので、貴女にお願いしますね。
 パンジーのドッグフードとおやつ、食器、お気に入りの毛布、ケアグッズを同封します。
 水は魔力水をあげて下さい。
 真ん中の子はふやかしたドッグフードで。
 左右の子はそのままで大丈夫。
 パンジーはダイエット中なので、おやつのあげすぎは控えて貰えるとありがたいです。
 休憩時、余裕があったら同封のクリームを肉球に塗ってあげて下さい。
 首回り、脇、尻尾の付け根は毛玉になりやすい部分なので一日一回はブラッシングお願いいたします。

 ※追伸
 左の子は涙目なので、こまめに拭いてあげて下さい
 ◆


「カルミラ、なんだって?」

「パンジーちゃん、ダイエットしてるんだって。おやつはあげすぎないでって」

「へえー、太ってるようには見えないねッ! ね、パンジーちゃん!」

 マゼンダピンクの首輪がよく似合うパンジーちゃんは、機嫌よく尻尾を振った。

「なあ、子犬は? 子犬はおやつ食うのか?」

「子犬は食べないし排泄もしないわよ。たまに尻尾振ったりキャンとかクーンって鳴くけど、それも多分反射行動で……感情はない、とされているわね」

 フレスベルグはパンジーちゃんから距離をとり、呟いた。

「ますます意味不明な生き物だなぁ」

「いいからさっさと魔結石薬を飲んじゃいなさい。一日三回だからね」

「はいはい─────おええぇ! 苦っ!!」

「だから薬局に行けって言ったじゃないの。薬局には甘いシロップタイプもあるわよ?」

「…………ごめん、ちょっと待ってて……薬局行ってくる……」

 ──だから言ったのに。

 エルフは効率派、薬なんて効けばいいのよ。
 味なんてつけるわけがない。
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