あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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出禁 第十二話 ダンジョン出禁、再び その1

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「えっと……おまえ達、どうしたんだ? 」
 有意義なダンジョン探索を終えて、自宅へと戻ったオレは、暗闇に沈む部屋の中で、雨に濡れた捨て犬みたいに打ち沈むロック、ナナイの兄妹とフラウを見つけた。
「あ、JJようやく帰ってきた。……黙って出て行ってもよかったんやけど、一言だけでも言うとこ思てな」
 ん? 出て行くのか。
 オレは暖炉に火をいれ、魔石灯に明かりを灯しながらフラウに聞き返す。
「なんだ、ロックたちの……ラムサーチ村だっけ? 一緒に行ってくれる人見つかったとか? 」
 ロック兄妹は、奴隷狩りをしていた貴族らしき女とゴロツキにさらわれてこの街まで来たのだが、生まれた村は遠く二人だけでは帰れない。一緒に行ってくれる大人を探していたはずだが。誰かいい人見つかったのかな。
「そうじゃないんだ」
「なんやガタイのいい、柄の悪い横柄な奴が来たんや」
 ロックが首を横に振り、その横でフラウがその理由を話し始めた。
「女衒のマクシミリアンって言うてたけど知っとる? 」
「女衒のマクシミリアン……誰だそれ? 」
 聞いたこと有るような、無いような名前だけど……。でも女衒なんて知り合いはいない。
「それで、金がどうのこうの言うてたで」
「金? 」
「JJッ! お金借りたらちゃんと返さなきゃダメでしょ」
 フラウと話をしているところにナナイが割って入り、訳のわからないことを言う。
「? ……そりゃ金は必要だし、返さなくていい金なら借りたい――ッ!? 」
「やっぱり! 」
 金なら借りたいくらいだけど、まだ借金はしていない――。そう言おうとするがナナイがオレの言葉を遮る。
「やっぱり私たちあの女衒に売られるんだわ、嫌よそんなの! 」
「ナナイ、JJを責めちゃダメだよ。JJが借金したんじゃなくって、親のジーンって奴が悪いんだから」
「そうね。JJには罪は無いわ。……でもここに居たら危ないのは同じでしょッ! 」
 ナナイのほとばしる魂の叫びがオレの胸に突き刺さる……わけは無い。何の話をしているんだかさっぱりだ。 
 どうやらナナイたちの中では、ジーンがオレの親って事になっていて、そのジーンが女衒のマクシミリアンとか言うやつに借金をして、なぜかそのカタにナナイたちが売り飛ばされる事になっているらしい。……なんでそんな話に? 
「ちょ、ちょっと待て。認識にちょっとずれ、……というか亀裂に近い乖離が有るようなんだが……」
 オレは懇切丁寧に、オレというかジーンに借金は無いこと、女衒に知り合いはいないを説明する、が……。
「どうしてJJにそんなこと言えるのよ」
 と、ナナイから横槍が入り、
「そうだよ、親が子供に借金の事を正直に話す訳が無い」
 さらにロックに突っこまれる。
 なんだかロックもナナイも思いつめたような顔をしている。
「やっぱり、ここには住めないな。ナナイ、とにかく出て行こう」
 ロックが、ナナイの手を引いてドアに向かう。 
 ロックとナナイはなにか大きな勘違いをしている。オレはロックの手をとって引きとめる。
「ちょっと待てよ、出て行くってどこに行くんだ」
 保護者じゃないから止める権利はないけど、事情を知ってる者としては一応聞いておきたい。
「当ては無いけど、どっか野宿でもするさ。この十日間本当に世話になった。それはありがたかったけど、妹を危険な目にあわせるわけにはいかないんだ」
 そう言ってロックは俺の腕をやんわりと振りほどいて、妹と出て行ってしまった。
 冒険者として鍛えたオレの腕だが、ただの少年であるロックの腕をつなぎとめることは出来なかった。
 何なんだ。妹を危険な目にあわせるってどういう事だ?
「それじゃJJ、ウチもあの二人が心配だからついて行くわ。大賢者は見つかったら知らせたるわ。……まあ見つからん思うけど」
 そう言ってフラウも出て行こうとする。
 最後、小声で不穏なことを言ったような気がするが、気のせいだよな。
 なんだかんだでこの十日程はオレよりもあの二人とすごす時間の方が多かったから、情が移ったのかもしれない。
 もうしかたねえ、止めねえよ。
 止めねえけど……。
「待てよ」
「なんや、ウチも自分がカワイイさかいここには残らんで」
「自分で自分をカワイイって……、ナルシスト? 」
「自分の身体が心配だから! 出で行くて言うとるんやっ」
 分かってるよ。よく分かんないけど。
「これ持ってけ」
 オレは、ポケットに突っ込んでいた、今日の稼ぎをフラウに手渡す。
「これだけあれば、安宿だったら四、五日くらいは三人で泊まれるだろ。その間に村に帰る方法を見つけろ、ってあいつらに言っとけ。それとこれ以上は面倒見ないから、ってな」
 フラウは、手元に押し付けられた金とオレを交互に見た後、小さく頷いて足早に出て行った。

 三人が出て行った部屋は大きかった。元々はジーンが一人で住んでいた安い部屋だから、それほど大きくないはずなのだが、とても大きく感じられた。
 そして、暖炉に入った火が部屋を暖めているはずなのに、部屋は闇に沈んだ外よりも寒かった。
「なんなんだよっ」
 まあ、たったの十日ほど家に居候させて、ご飯作ってもらって、ちょっと世話をした、それだけの関係だ。だが……。
 だがあんな感じで出て行かれると、無性に腹が立つ。
 オレはキッチンにおいてあった葡萄酒を取ってきて、グラスに注ぐのももどかしく一気に飲んだ。
 ブハッ、ゲヘッゲハッ。
 ……盛大に吐き出した。お子様の身体は酒を受け付けなかった。
 何か拭くものはないかと洗面所でタオルを探すと、ピンクの小綺麗にたたまれたタオルが目に留まった。着替えも小物も何もないナナイのために、フラウが買って欲しいと頼んだので買ってやったものだ。
 もしかしたら……。そう思って探してみると、洗面所にはロック兄妹のために買ったタオル、歯ブラシ、ヘアブラシ、あと部屋の隅に綺麗にたたまれたちょっとした着替え。あいつらに買ってやった全てが置いてあった。
 オレはタオルを床に投げつけた。
 せっかく買ってやったのに。あいつら、オレが買ってやった物なんて歯ブラシ一本要らねえって言うのか。もう知らねえ。あいつらなんかどうなろうと。
 オレは、お子様の身体では受け付けない酒に負けてグラグラする身体をなんとかベッドまで運び、そのままドロのように眠りに着いた。


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