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第二章 王都編
第三十八話 入学前夜 その3
しおりを挟む暫くして、壇上から執事らしき男の声がして、オレを呼ぶ声がした。
人ごみが邪魔してよく見えないが、壇上にはシャーロットとロレンツォ、ディアが上がってオレを待っているようだ。
シャーロットとロレンツォの制服姿のお披露目で、ディアも辺境伯家の後援で学校に通うので一緒にいる。そしてオレも辺境伯家から奨学金をもらっている態なので一緒に呼ばれたようだ。
本当にめんどくさい。
シャーロットと同じクラスになれば奨学金分の補填をするからとクラリッサ夫人にお願いされて、わざとBクラスになったのに、それがいつの間にか、辺境伯家の好意で奨学金をもらっている形にすりかわっている。
なんだか辺境伯家の好感度を上げる駒にされてる気がして、納得がいかない。
やはり、クラリッサ夫人は侮れない。
「ちょっと行って来るね」
ここで文句を言っても仕方ないので、ちょっと顔見せてすぐ帰って来よう。
壇上では、執事の紹介に合わせて、シャーロットが壇上でくるりと回って制服姿を披露し、ロレンツォはモデルのように歩いて近い年代の女性から黄色い声を受け、ディアは緊張しながらペコリと頭を下げカワイイと声援を受けていた。
オレの順番がきたので一歩前に出ると、、
「クスクスッ、何あのカッコ」「制服に着られているな」「ダサ」「子供が背伸びして……」
と散々に言われた。
オレだって本当は、こんなぶかぶかなカッコ悪い制服姿をお披露目するのも不本意なんだ。
オレは頭を下げるとすぐに袖に引っ込んだ。
ああもうやだ、本気でハミル家と縁を切りたい。
でもディアのためだし、リベルタの願いでもあるからな仕方ない。
恥を忍んでここは我慢しよう。
制服のブレザーを腕のマジックリングに仕舞い、カッターシャツにネクタイという姿になった。カッターシャツも腕まくりをしているがブレザーの腕まくりよりもまだましだ。
「……そんな、困ります」
「良いから付き合えよ。悪いようにはしないぞ」
リベルタの元に戻ると、またナンパ貴族に絡まれていた。
なんか断ってもしつこく付きまとわれている感じだ。
仕方ない、オレはリベルタの側に駆け寄って
「ねえママ、オシッコ~」
モジモジしながらリベルタの手を取る。子供にこう言われたら母親は子供の相手をしないといけないからな。
「え、ホント? 大変! じゃあ失礼します」
リベルタもオレの演技に乗った。だが、
「小僧、邪魔すんな」
貴族がオレに殴りかかって来た。
おっと、問答無用か。オレはヒョイヒョイと男の拳を交わす。
激高した男は大振りに殴ってきた。
せっかく穏便に済ませてやろうとしたのに。
仕方なくオレは、光の精霊に頼んでこの男に目暗ましをする。
「ウッ、眩しい! 」
目がくらんだ男は勢いをつけて殴ろうとしてきたのでバランスを崩し、フラフラとそのまま近くのテーブルのスパゲティの山に頭から突っ込んでいった。
えっと、オレは何もしていないからね。
普通の人には精霊は見えないから、そう見えているはず。実際手は触れていない。
「これ、JJくんがやったの? 」
スパゲティまみれで、「目が、目が~」と言いつつのた打ち回る貴族を見つけて、戻ってきたディアとシャーロットが唖然としていた。
「まさか。貴族様に手なんか出さないよ。シャーロットお姉ちゃん、変な言いがかりはやめてよ」
「えっと、ごめんなさい」
「なんか酔っ払っちゃったのかな」
テーブルに置かれていた酒も頭から被っていたので丁度いい。
シャーロットにはそう言い訳しておいた。
機嫌が悪かったのでぶん殴ってやりたかったけど、こんな公衆の面前で貴族を殴ったらどうなるのか分からないので勝手に転んでくれてラッキーだった。
「リベルタお姉ちゃんをナンパしてきて、僕を殴ろうとして勝手に転んだんだよ」
「へっ、ザマアミロ」
ディアには小声で本当の事を打ち明ける。ディアはリベルタに近づく男には容赦はない。ジーンにも同様に冷たいから複雑だけど。
ディアが戻ってきたので、オレ達は逃げるように、パーティ会場を後にした。
「JJくんアリガトね」
「ん、アリガト」
オレは親子にお礼を言われてちょっと照れくさくて、頭をかいて誤魔化した。
帰り道、安い食堂が有ったのでそこで夕食にした。
せっかくパーティに出たけど三人とも食事は全然食べられなかったからね。
そしてオレはその時、もう二度と貴族のパーティなどには出る事も無いだろうし、誘われても出ないようにしよう、と心に強く誓ったのだが、それはすぐに破られる事になるのだが、それはまた後のお話だ。
後日、学校に入学した後だが、シャーロットから制服姿を見て感想を言ってほしかったと責められたが、それどころではなかったので許して欲しい。
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