嫌われ王子様の成長 〜改心後、暴君の過去が役に立つこともある〜

ぽんちゃん

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107 罪悪感

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 潔癖症克服のお手伝いとはいえ、ロバート様はファーガス兄様の婚約者だ。
 きっと良い気はしていないはず。
 俺だったら、絶対に嫌だ。
 今度こそ世紀末覇者に殺されると覚悟する。

 青褪める俺の頭を、よしよしと優しく撫でるファーガス兄様。
 いつもならほっこりとするのだが、今回ばかりはまったく落ち着くことが出来ない。

 「ロバートは、喜んでいたぞ?」
 「そうですよね、怒るに決まって……えええッ!?」

 予想外のことに驚きすぎて、めちゃくちゃ大声を出してしまう。
 そんな俺にくつくつと笑うファーガス兄様は、満面の笑みだ。

 寝起きにイケメン兄の全開の笑みに、こんな時でも俺の胸はキュンとする。

 「ロバートがリオンに怒るはずがない。むしろ、自分のことのように喜んでいたぞ?」
 「よ、喜ぶ? ロバート様、ちょっとおかしいんじゃ……?」

 素直な思いを口にして、ハッと気付く。

 ファーガス兄様の潔癖症が少しでも改善されたなら、必然的にロバート様との仲も深まる。
 だから喜んでいるのだと、納得した。

 「ククッ、そうかもな? リオンに直接、感謝の気持ちを伝えたいらしい。まあ、ただリオンに会いたいだけだと思うがな?」
 
 そう言って俺を安心させるように、少し戯けた口調で話すファーガス兄様。

 「ロバートが来るまで二時間はあるから、ゆっくり準備して待っていてくれ」
 「はい。あ、リュカには……」
 「ああ、リュカもリオンを心配していたから、体調が悪いと伝えてある。準備はリュカに頼むか?」
 
 こくりと頷くと、ファーガス兄様と入れ違いでリュカが兄様の部屋に入ってくる。

 小走りの専属侍従の姿に、俺はびくりと体を揺らした。
 いつも背筋がピンと伸びていて、キビキビしているけど優雅に歩くリュカだが、今日は珍しく慌てている。

 怒られるのかと思いきや、リュカは寝台のそばで膝を折った。

 「リオン殿下、体調が悪いとお聞きしたのですが、大丈夫なのですか?」
 「う、うん。ごめんね? 心配かけて……」

 今にも泣きそうな顔をしていることに気付き、申し訳ないのに胸が温かくなる。
 
 侍従の仕事だとわかっていても、俺なんかを心配してくれてすごく嬉しい。
 いつものように、俺の頑張りを聞いてもらいたかったのだが、俺を信用してくれた兄様の秘密を話す事は出来ない。
 どうしたものかと悩む俺は、やはり体調を崩したことにした。

 少し咳き込むフリをすると、リュカはすぐに着替えを持ってくると部屋を出て行った。



 胸がチクリと痛くなっていると、部屋の隅で待機している侍従三人組からの視線に気付く。

 ファーガス兄様の寡黙な侍従たちに、俺はにこっと愛想笑いをしておいた。

 「あ、あの……」
 「ん?」
 
 おずおずと話しかけてきた侍従三人組は、動きがまったく同じだ。
 三つ子じゃないかと思っていると、そわそわし始めた侍従たち。
 おいでと手招きをすると、恐る恐る近付いてくる。

 「どうしたの?」
 「っ、謎のエルは、リオン殿下のことですか?」
 「……謎のエル?」
 「あ、ええっと、王宮料理人の一人が、新作料理を生み出していると噂になっていて……」
 
 彼らの言いたいことがわかった俺は、ああ、と笑顔で頷いた。

 「内緒だぞ?」
 「っ……」

 人差し指を口に当てて、秘密にしてくれよとパチリとウィンクする。
 機械のような動きだった侍従たちが、こくこくと壊れた人形のように頷き続けていた。

 リュカを待つ間に話をしていると、俺がファーガス兄様に差し入れを持って行く度に、彼らはずっと羨ましいと思っていたらしい。
 大好きな兄様の侍従とも仲良くなりたい俺は、新作料理を作った際には、兄様の侍従たちにも差し入れをする約束をした。
 

 その後、仲良くなったファーガス兄様の侍従から、リュカが朝から俺を待ち続けていたと話を聞き、病人のフリをした罪悪感で死にかけた。



 超特急でリュカが戻って来て、まずは体を清めようと、兄様の浴室を借りることにした。
 普段よりも、更に慎重に俺の体に触れるリュカ。

 実は体調は絶好調で、ファーガス兄様と朝までイチャイチャしていたせいで寝不足なんです! とは、今更言えない状況だ。
 兄様の潔癖症改善のお手伝いをしただけで、別にイチャイチャしていたわけではないけど……。

 頭の中で言い訳をしまくる俺のガウンをゆっくりと脱がせたリュカが、その場で固まってしまう。

 「リュカ?」
 「……なんでもありません。すぐに清めます」

 何事もなかったかのように俺の体を丁寧に洗っていくリュカに、俺は首を傾げる。

 なぜか表情が抜け落ちてしまったリュカは、淡々と侍従の仕事をこなす。
 声をかけたかったが、俺は口を滑らせたくなかったので、何も話さなかった。








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