俺の婚約者は、頭の中がお花畑

ぽんちゃん

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8 信頼関係

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 それからレオンハルト様が、俺の父にも話をしてくれて、オリバーのことで怒られることは少なくなった。

 それでも理不尽なことがあると、レオンハルト様に愚痴を聞いてもらい、たくさん甘やかしてもらった。

 仕事中でもいつも俺を優先してくれ、膝の上に乗せてお菓子を食べさせてくれたり、抱きしめてくれたりと、本当の父親より距離が近かった――。




 そして俺が十二歳になり、三十二歳になったレオンハルト様は、益々男に磨きがかかっていた。

「俺、オリバーじゃなくて、お義父様と結婚したいです」
「おいおい、二十も歳が離れているんだよ?」
「それの何が問題なんですか?」
「あ、あのね、エレン。エレンが二十歳の時、私は四十だよ? しわくちゃのお爺さんだ」
「お義父様がしわくちゃ……? 全然想像出来ません」

 三十を過ぎてもこんなに美しいお顔なのに?

 皺ができても、更に色気が増すだけだと思う。

「私ももっと若かったらエレンをお嫁さんにしたかったな」
「じゃ、じゃあ、俺と結婚してください!」
「うーん。さすがにエドワードをお義父さんとは呼べないよ。それにエレンに手を出したら、私がエドワードに殺される」
「それはダメっ!」
「でしょう? だから、義理の息子なら一番近くにいられるよ」
 
 渋々頷くと、優しく頭を撫でてくれる。

「俺が大人になって、父も許してくれたら……結婚してくれますか?」
「オリバーはいいの?」
「…………あ。忘れてた」
「忘れないであげて?!」
 
 楽しそうにくつくつと笑うレオンハルト様が可愛くて仕方ない。

「……お義父様、大好きです」
「私も好きだよ。可愛いエレン」

 レオンハルト様は、俺のことを息子としか見ていないけど、それでもこうして彼の傍にいれることが嬉しい。

 大好きな人にぎゅうっと抱きつく俺は、幸せを堪能するのだった――。







 本当は毎日レオンハルト様に会いたかったけど、彼に認めてもらうために、今まで嫌々やっていた勉強もマナーも、全て完璧にこなせるように、寝る間も惜しんで努力をした。
 
 俺が立派な大人に成長していくにつれ、レオンハルト様も自分のことのように喜んでくれる。

 彼の笑顔の為ならなんだって出来る。
 俺は無敵状態だった。

 そんな時、無理がたたって寝込んでしまい、クリストフ侯爵家に顔を出すことが出来なかった。

 今日会えないと、次彼に会えるのは一週間後。

 ベッドで横になりながら、勉強の予定を詰め込みすぎたことを後悔していた。

 夕方になり、体調も回復してきたところで、レオンハルト様がわざわざお見舞いに来てくれた。

「エレン、大丈夫かい?」

 小さな花束を持つレオンハルト様は、まさに物語の中の王子様だった。

 彼が俺のために会いに来てくれたことが、嬉しくて嬉しくて堪らない。

 きゅっと上掛けを握って嬉しさを爆発させていると、レオンハルト様が俺の額にコツンと彼の額を合わせた。

「熱は下がったかな?」

 至近距離で見るレオンハルト様の空色の瞳が、惚けた俺の顔を映していた。

 少しひんやりとした大きな手が俺の頬をなぞり、とても気持ちが良い。

 うっとりと頬ずりをすると、レオンハルト様が素敵な笑顔で俺を見つめていた。

「随分と機嫌が良さそうだね?」
「お義父様に会いたかったから……」
「ふふっ、可愛いな。私もエレンに会いたくて、さっさと仕事を終わらせて走ってきたよ」
「……馬車で来たでしょう?」
「うっ。そうだね」

 くすくすと笑い合っていると、彼が小さな花束を寝台の横の机に飾ってくれた。

「オリバーは?」
「準備が遅いから置いてきた。オリバーがいた方が良かったよね、ごめん」
「ううん。うるさいからいない方がいい」
「ぷっ。確かに煩いけど、少しだけ可哀想だと思ってしまったよ」
「俺はオリバーじゃなくて、お義父様に一緒にいて欲しいから……」
 
 熱に浮かれて、ぺろっと本心を告げてしまい、目を丸くするレオンハルト様に気づいた時には、俺の顔は真っ赤になっていた。

「そう言ってくれて嬉しいよ」

 茶化すわけでもなく、俺の気持ちを受け止めてくれるレオンハルト様が大好きだ。

「まだ辛いだろうから、ゆっくり寝て」
「……わがまま言っても良いですか?」
「いいよ」
「――手を、繋いで欲しい、です……」

 すぐさま、大きな手が俺の手を優しく包み込む。
 嬉しくて口許が緩んでしまう。

「エレンが眠るまで、そばにいるよ」

 よく頑張ったね、偉い偉い。
 頑張り屋のエレンが大好きだよ。
 私の可愛いエレン。

 沢山の褒め言葉を送られて、優しく頭を撫でられる。

 ……こんなの、ドキドキして眠れないよ。

 そう思っていたのに、俺を褒めるレオンハルト様の優しい声色に胸がぽかぽかとあたたかくなり、深い眠りに落ちていくのだった――。











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