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黒く塗りつぶされた男 承
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「ん……んぅ……」
次に目が覚めた場所は、見知っている天井、ボクの部屋だった。いつの間にか戻ってきたらしい。その過程を、ボクは毛ほども記憶していなかった。
まだボクの頭の中では、黒男が列車から飛び降り続る映像が頭に流れ続けていた。それから逃げるように、今までは夢を見ていたんだと楽観的に考えようとするがうまくいかない。
当然だろうと目覚まし時計を見て――一瞬呼吸が止まった。
「七時、二十分……」
ゆっくりと言葉を反芻する。どうゆうことだ? その時間帯はボクとカラカラで電車に乗っていたじゃないか。時間が巻き戻った? それとも本当に夢を見ていて――
あ、
「忘れてたアアアアアア!!!!!」
どうして忘れてたのだろうか。慌ててボクはポケットに手を突っ込んでスマホを取り出し、電話をかける。
相手はもちろん……カラカラだ。もしかしたらまだ電車に取り残されたままなのだろうか。コール音が鳴る。
トゥルルル 一回目、
トゥルルル 二回目、
トゥルルル 三回目、
トゥルルル 四回目、
トゥルルル 五回目――
「お、ちょうどよかった。俺も今からヒデヒデに電話しようと――」
「ぶ、無事だったのかカラカラ! 今どこにいるんだよ?」
電話に出たのは、あまりにも普通で、あたかも何事もなかったかのような呑気な声の調子で話すカラカラだった。
「いやそれが奇妙なことにな、自分の部屋で目を覚ましたんだよ。ヒデヒデはどうなんだ?」
「ボクもだよ。それより……」
「ああわかってる。時間のことだろ? まあそんなこと、俺らが得られた成果に比べれば些細なことだぜ」
「成果? 成果って――」
「学校から渡されたテストの予定表見てみろよ。面白いもんが見れるぜ」
クククッと下品に笑うカラカラに促されて、ボクは壁際に貼った予定表に目を通す。そしてすぐに、その違和感に気づいた。
「嘘、だろ……?」
「ところがどっこい、現実らしい」
予定表には、ボクとカラカラが黒男に渡した数学と理科のテストの部分がぽっかりと抜け落ちており、まるで初めから存在していないことになっていた。
通常のテスト期間は三日間で三教科ずつ行う仕組みになっているが、数学と理科がなくなったことで一日目と三日目が二教科のみで終了している。
「本当に、存在が消えたんだ……」
「あくまでも消えたのはテストのみだな。教科書や課題のプリントはそのままだ。さっき親に消したテストのこと聞いたけど、予定表通り試験から除外されてたぜ。これで俺の小遣いは守られたわけだ。ところでヒデヒデ」
「ん?」
「また行こうぜ。実は黒男をいかにうまく利用できるか、俺はすでに考えているのさ! 明日の黄昏時にまた、駅にこいよ?」
「……もちろん」
ぷつりと電話が切れる。怖いこともたしかにあったけど、これで両親から大目玉を食らう心配はなくなり、いっときの平和が訪れたわけだ。自覚してきたら……なんか、
「疲れた……」
少しだけ休もう。ボクは電気を消すと、布団に入らずベットに倒れ込む。明日はなにを消してもらおうかと想像するだけで、自然とニヤケ顔が止まらない。
睡魔が足音を立てて近づいてくる。そろそろだと思い、ボクは意識と体を委ねた。
次に目覚めたら、夜食にカップ麺とチャーハンを食べよう。ゴクリとつばを飲み込む。すごく楽しみだ。まぶたをゆっくりと下ろしていく。
これが、最現実世界での最後の目覚めとなった――
次に目が覚めた場所は、見知っている天井、ボクの部屋だった。いつの間にか戻ってきたらしい。その過程を、ボクは毛ほども記憶していなかった。
まだボクの頭の中では、黒男が列車から飛び降り続る映像が頭に流れ続けていた。それから逃げるように、今までは夢を見ていたんだと楽観的に考えようとするがうまくいかない。
当然だろうと目覚まし時計を見て――一瞬呼吸が止まった。
「七時、二十分……」
ゆっくりと言葉を反芻する。どうゆうことだ? その時間帯はボクとカラカラで電車に乗っていたじゃないか。時間が巻き戻った? それとも本当に夢を見ていて――
あ、
「忘れてたアアアアアア!!!!!」
どうして忘れてたのだろうか。慌ててボクはポケットに手を突っ込んでスマホを取り出し、電話をかける。
相手はもちろん……カラカラだ。もしかしたらまだ電車に取り残されたままなのだろうか。コール音が鳴る。
トゥルルル 一回目、
トゥルルル 二回目、
トゥルルル 三回目、
トゥルルル 四回目、
トゥルルル 五回目――
「お、ちょうどよかった。俺も今からヒデヒデに電話しようと――」
「ぶ、無事だったのかカラカラ! 今どこにいるんだよ?」
電話に出たのは、あまりにも普通で、あたかも何事もなかったかのような呑気な声の調子で話すカラカラだった。
「いやそれが奇妙なことにな、自分の部屋で目を覚ましたんだよ。ヒデヒデはどうなんだ?」
「ボクもだよ。それより……」
「ああわかってる。時間のことだろ? まあそんなこと、俺らが得られた成果に比べれば些細なことだぜ」
「成果? 成果って――」
「学校から渡されたテストの予定表見てみろよ。面白いもんが見れるぜ」
クククッと下品に笑うカラカラに促されて、ボクは壁際に貼った予定表に目を通す。そしてすぐに、その違和感に気づいた。
「嘘、だろ……?」
「ところがどっこい、現実らしい」
予定表には、ボクとカラカラが黒男に渡した数学と理科のテストの部分がぽっかりと抜け落ちており、まるで初めから存在していないことになっていた。
通常のテスト期間は三日間で三教科ずつ行う仕組みになっているが、数学と理科がなくなったことで一日目と三日目が二教科のみで終了している。
「本当に、存在が消えたんだ……」
「あくまでも消えたのはテストのみだな。教科書や課題のプリントはそのままだ。さっき親に消したテストのこと聞いたけど、予定表通り試験から除外されてたぜ。これで俺の小遣いは守られたわけだ。ところでヒデヒデ」
「ん?」
「また行こうぜ。実は黒男をいかにうまく利用できるか、俺はすでに考えているのさ! 明日の黄昏時にまた、駅にこいよ?」
「……もちろん」
ぷつりと電話が切れる。怖いこともたしかにあったけど、これで両親から大目玉を食らう心配はなくなり、いっときの平和が訪れたわけだ。自覚してきたら……なんか、
「疲れた……」
少しだけ休もう。ボクは電気を消すと、布団に入らずベットに倒れ込む。明日はなにを消してもらおうかと想像するだけで、自然とニヤケ顔が止まらない。
睡魔が足音を立てて近づいてくる。そろそろだと思い、ボクは意識と体を委ねた。
次に目覚めたら、夜食にカップ麺とチャーハンを食べよう。ゴクリとつばを飲み込む。すごく楽しみだ。まぶたをゆっくりと下ろしていく。
これが、最現実世界での最後の目覚めとなった――
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