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第8章:王国決戦編

定期報告

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「さてと、そろそろ一旦国に連絡を入れるとするか。兵を遣すように言わなきゃいけねえしな」

 床にはシクシクと顔を両手で隠して泣くゴウテンと、それを慰めながら謝罪しながら彼の背中を摩ってするミコトがいた。

「ひ、酷いです、ミコト様。お、俺を盾にするなんて……」

「ごめんってば。後でなんでも言う事一つ聞いてあげるからさ。機嫌直してよ」

「絶対ですからね」

「あ、でもエロいのはダメだよ。一応アタシも巫女だから清純でなきゃいけないし」

 冗談半分のその言葉にゴウテンは慌てる。

「ちょっ、ミコト様!?」

 何せ彼女の後ろには鬼が控えていたからだ。

「あ? ゴウテンてめぇミコトちゃんに手ぇ出そうとしてたのか?」

「い、いえ。そんな、滅相もありません!」

「じゃあ、ミコトちゃんにはそんな魅力もねぇってのか?」

「いいえ! いつも誘惑されています!」

「ならやっぱり手ぇ出そうとしてんじゃねぇか!!」

「ひ、ひぃぃぃ!」

 伸びてくるコウランの手を必死に掻い潜って、ゴウテンは部屋から転がるように逃げ出した。

「それじゃあ、兵を呼ぶついでにゴウテンを潰してくるわ」

 どう見ても後者の目的の方が比重は大きいのだが、ジンもハンゾーもミコトもそれには一切触れず、コウランが部屋から出て行くのを見送った。

「……ミコト様。流石にゴウテンが可哀想です」

「ああ。本当に」

 ハンゾーとジンの咎めるような視線に、ミコトは一瞬気まずそうにしてから、気を取り直し、舌をぺろりと出して、

「ア、アタシ知―らない!」

と、可愛らしく言った。

 しばらくして、ボロボロになったゴウテンが戻ってきた。どうやらコウランに絞られたらしい。酷く疲れているようだった。

「お、お疲れー」

 ミコトがそう言うと、ゴウテンは僅かに恨めしそうな瞳を向けるも、すぐに肩を落として盛大な溜息を吐いた。

「じゃ、じゃあ、俺はちょっと出てくるわ」

 そんな彼を見て、気まずそうにしながらもジンは部屋を出ようとする。

「デート?」

「さあな」

 背後から投げかけてきたミコトの言葉を流すと、ジンは目的地へと向かった。

~~~~~~~~

『久しぶりだな。しばらく連絡をして来ないから死んだかと思っていたぞ』

 人も入って来ないような路地裏で、ジンは以前エデンから出る時にティファニアから譲り受けていた連絡用の黒い小さな球、『サラトの球体』を取り出していた。これは連絡手段を持たないジンに下賜されたものである。最後に使用してからかれこれ2年ほど経っていた。

「サリオンさん、ごめん。でも、最近までいた場所では何故か使えなかったんだ」

 ジンはこれまでの話をざっくりと話す。ウィルが死んだと聞かされてから『サラトの球体』を使えば、その話を聞かされると思い、それが怖くて使えなかった事。魔人と遭遇した事。カムイ・アカツキの国で訓練をした事。姉の事。法魔の事。そしてこれから起ころうとしている事。それらを報告する。

『ふむ。まあ、お前の気持ちを考えればそう思ってしまう事もわかる。だがどんなに悲しくても、こちらからはお前に呼びかけることが出来ないのだから、定期的に連絡はしてくれ。ティファニア様も随分と心配されておられたのだぞ』

 サリオンの言うことは正しかった。彼らからジンに呼びかける事は難しい。どんなタイミングになるか読めないからだ。仮に命懸けの戦いをしている時に重なれば、ジンの死ぬ確率を上げてしまう可能性がある。

「ごめん」

『……まあいい。しかしカムイ・アカツキの国か。恐らくその国に張られた結界が干渉していたのだろうな』

「かもしれないな」

『だが丁度良い時に連絡をしてくれた』

「どういう事だ?」

『4日前、神剣マタルデオスの所有者、つまり勇者が現れた』

「なんだと!?」

 思わず声が大きくなる。幸いな事に近くに誰もいないため、聞いている者はいなかった。

「……本当なのか?」

『ああ、メザル共和国に潜入中の使徒から連絡があった。確実と言って良いだろう』

「どんな奴か分かるか?」

『容姿は逆立った青い短髪に、金色の瞳。背丈は170後半センチほどで体型はスラリとしているが、適度に引き締まっているそうだ。また4人の共を連れているらしい。それから一番大事なことがある』

「なんだ?」

『人格が破綻しているということだ。神剣を手に入れてまだ4日だというのに、既に無辜の民が数十名殺害されているらしい。人を人とも思っていない屑を勇者に選ぶとはフィリアも相変わらず狂っているな』

「マジか……今どこにいるか分かるか?」

『分からない。監視に付いていた者から1日おきに受けていた連絡が突然無くなったのだ。恐らくその者に殺されたのだろう。今他の者が調査をしているが、どうやらその男はまだ生きているようだ』

「使徒が簡単に殺されたって言うのか」

『ああ、元々勇者は四魔を打倒し、エデンに侵略する為に創られた存在だからな。圧倒的な力を持っていると考えていい。それこそ四魔と同等か、それ以上のな』

「……そうか」

『気をつけろよ。もし出会ったら、逃げる事も考慮に入れておけ』

「分かっている。無理はしないさ。多分ね」

『……その言葉を忘れるなよ。お前はいつも無理しすぎるからなぶぎゃっ!』

「サ、サリオンさん!?」

『もう! サリオンったら、ジン君から連絡が来たのになんで私を呼ばないのかしら。あっ、ジン君。久しぶりね!』

 向こうから聞き覚えのある声が聞こえてくる。僅かに舌足らずで、幼い少女のような声だ。すぐに誰か分かり、ジンは思わず微笑む。

「ええ、お久しぶりです。ティファニア様」

『もう! 固いわよ、ティファで良いって言ってるでしょ!』

 頭の中でプリプリと怒っているティファニアの顔が浮かぶ。

「そうでした。ティファ様はお元気でしたか?」

『ええ。そっちはどう?』

「俺もです」

 それからしばらくの間、ジンはティファニアと談笑を続け、気がつけば日が落ちていた。

「それじゃあ、そろそろ切ります」

『分かったわ。サリオンからも聞いているだろうけど、勇者には本当に気をつけてね。かなりの曲者らしいから』

「はい。ありがとうございます」

『バイバイ』

 ティファニアがそう言うと『サラトの球体』は徐々に光を失っていき、やがて元の黒い球に戻った。

「狂った勇者……か」

 ジンはボソリと呟いた。

~~~~~~~~

「なるほど、勇者が現れたのか」

 宿に戻ったジンは、先程サリオンから聞いた話をコウラン達にも話した。部屋の中にはコウランとハンゾーしかおらず、ミコトとゴウテンは外に食事に行ったらしい。案の定、話を聞いたコウランとハンゾーは難しい顔を浮かべた。

「陛下、これは強引にでも鎧を盗んだ方がいいのでは?」

「そうしたいのは山々だが、隠し場所もわからねぇし、どんな罠を宝物庫に仕掛けているかも分からねぇ。その勇者達がこの国を目指しているかも分からない段階なら、こちらから手を出すのはあまり得策とは言えねぇな」

「しかし、ジン様が得た情報だと人格が破綻しているそうではないですか。失敗して、相手に鎧が渡った場合、さらに手をつけられなくなるのでは?」

「そうなんだよなぁ。どうするか……」

 2人は頭を悩ますが答えは出なかった。

「じゃあ、俺、また外出るから」

「ええ、行ってらっしゃいませ」

「おう」

 ジンは2人に見送られて、部屋を出て、宿屋からシオンと約束したレストランへと向かった。

「……それで、シオンと言ったか? どういう子なんだ?」

「可愛らしい子ですよ。それに、互いに深く思い合っています」

「へぇ、そういえばアカツキの血が混じっているんだったか?」

「ええ、アカリ様の付き人だったツクヨを覚えていらっしゃいますか?」

「ああ、ツクヨさんか。覚えているよ」

 コウランは姉のアカリの一つ上で、コウランの事も可愛がってくれた女性の顔を思い出す。彼にとってもう1人の姉のような人だった。

「あの者の娘が彼女だそうです」

「へぇ、ツクヨさんのねぇ。確かに面影があったな。しっかし世界は狭いな」

「全くもって、その通りですな」

 まるで何もかもが運命に仕組まれているかのようだった。

「まあ、今度ジンにはしっかり話を聞くとして、今は勇者について考えないとな」

「そうですね。いかがいたしましょうか」

「……とりあえず、所在地だけでも確認してぇ。メザルに潜伏しているトウマに連絡して情報を集めさせろ」

「了解いたしました」

「任せた。そんじゃあ俺は一旦国に戻る」

「はっ!」

 そうしてコウランはハンゾーに命令を下すと、首にかけていた『転移の勾玉』を服の下から取り出し、一瞬にして消えた。この勾玉は一度行ったことのある場所なら何処へでも3箇所まで行くことが出来る物であり、アカツキの秘宝の一つである。誰が造ったかは不明だが、普段は宝物庫に保管されている。

「さてと、わしも何か食べに行くか」

 部屋の中に1人取り残されたハンゾーはそう呟くと、部屋から出て階下の食堂に向かった。
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