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龍の章
レヴィとカミーラ4 復讐
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「誰がこんな事をした?」
レヴィはカミーラに尋ねる。その表情は怒りに満ち溢れていた。
「それは……」
その顔を見てカミーラは怯んだ。普段はぶっきらぼうで優しさなど見せなくとも、怖くはなかった。だが今の彼は以前見た彼と同じだった。
「そ、それを話したらどうするつもりですか?」
カミーラは勇気を出して尋ねる。
「決まっているだろう。殺してやる」
レヴィは吐き捨てるように言った。
「……私の家族みたいに?」
何故そんな事を言ったのか分からなかった。だがカミーラの口から溢れ出た言葉にレヴィは驚愕した。
「何を……?」
「あなたが私の家族を殺したように、あの人達も殺すんですか?」
殴られたような衝撃をレヴィは受ける。自分がした罪の結果が目の前にいる事を理解した。
「俺が、俺がお前の家族を?」
「はい。あなたは私の両親も、弟も殺しました。私の目の前でお母様は命を落としました。お父様もオーラムも屋敷に潰されて死ぬました」
そこでレヴィはもう一度彼女の顔をよく見た。そして、数年前に滅ぼした街で泣き叫んでいた少女の面影がある事に気がついた。
「そんな……俺が、俺がお前を……」
「確かにご主人様達は悪魔です。でもあなただって、私からしたら同じです。いえ、殺した数ならあなたの方が遥かに多いでしょう」
「俺は……」
「私はあなたを許せない。だけど、私はあなたがこれ以上誰かを殺すのは見たくない。あの人達は確かに人でなしです。でも、あの人達にも家族がいます。もしあなたが彼らを殺せば、私と同じ境遇の子を作る事になるかもしれない」
「……俺は」
レヴィは何を言っていいのか分からなかった。ノヴァを滅ぼして以来、人間のような感情が自分の中に芽生え始めた事に彼は混乱していた。今まで人間ではなく、龍魔として生きてきた。だからこそ、人間らしさの証明である様々な感情を受け入れる事が困難だったのだ。今抱く感情が罪悪感である事すら彼には理解できなかった。
「なら、俺はお前のために何をすればいい?」
「……レヴィさんはこれからどこかに行くんですよね?」
「ああ」
「それなら……それなら私も連れて行って下さい。あなたの側で、あなたが何を成すのか、私に見せて下さい」
「……分かった。約束する。それと、俺はお前の望むようにもう誰も殺さない事を誓おう」
「レヴィさん!」
カミーラは笑顔を浮かべる。レヴィもそれを見て笑った。互いに依存するような歪な関係である事に彼らはまだ気づいていなかった。カミーラにとってレヴィは地獄のような生活で生きる意思を抱かせ続ける為の存在であり、レヴィにとってカミーラは人間として接してくれる唯一の存在であった。お互いがお互いに欠けた面を埋め合い、傷を舐め合う関係である事に彼らはいつ気がつくのだろうか。なんてね。
~~~~~~~~
突然大きな音と共に屋敷が揺れたため、急いで寝室の本棚の裏にある隠し部屋にマリツィアと共に隠れた。しばらくの間、外から悲鳴が聞こえてきた。しかし、その声はいつの間にか止んでいた。
「何があったんでしょう?」
「分からん。誰かが攻めてきたか? だが、わしに敵対するものなどいないはずだが」
そんな事を小声で話しながら、隠し部屋にある小さな穴から外を見ていると、寝室のドアが吹き飛び、赤髪の青年が部屋の中に入ってきた。その手は血に塗れ、体に巻いた包帯は血で染まっている。青年はぐるりと部屋を見回すと、隠し部屋がある本棚に向かって歩き出した。
「き、来た……」
マリツィアが小さく呟いてコーションに抱きつく。
「大丈夫。静かにしていればバレないはずだ」
二人は息を潜めて青年が去るのを待つ。だが青年は本棚に向けて拳を振るった。そのまま本棚はあっけなく破壊され、隠し部屋が顕になった。
「見つけた」
青年は禍々しく笑う。
「ぶひぃ! な、何者だ、貴様は!」
コーションは青年を指差して叫んだ。その瞬間、彼の指が弾け飛んだ。
「ぴぎぃ!?」
あまりの痛みにコーションは蹲る。そんな彼の後ろで、マリツィアは尻餅をつきながら後ずさった。
「ぐふぅ、ぐふぅ、なんでこんな事をするんだ!」
今度はコーションの左耳が吹き飛ぶ。悲鳴と共に床を転がる。
「こんな事? お前が今までやってきた事と何が違う?」
「わ、わしはこの国の侯爵だぞ! こんな事をしていいと思っているのか!」
痛みを堪えながら、コーションは怒鳴る。だが青年はそんな彼を見て嘲笑う。
「侯爵? 単なる人間だろ? そこらにいるのと何が違うんだよ」
「き、貴様!」
青年の爪が禍々しく伸びると、顔を上げたコーションの右目にそのまま突き刺さった。
「いぎゃあああああああ!」
爪が引き抜かれ、血があたりに飛び散る。軽く手を振るとビチャッという音と共に抜き取られた眼球が床に転がった。
「ぶふぅ、ぶふぅ、た、助けてくれ……」
マリツィアの方に這いずっていく。
「ひっ!」
彼女は小さく悲鳴をあげて、涙を流しながら失禁した。
「さてと、汚ねぇから触りたくねえが、確か性器にもなんかしていたな」
青年は足を振り上げると、コーションの股間を蹴り飛ばした。グチャッという音がなり、今までにないほどコーションが悲鳴をあげてから気絶した。
「寝てんじゃねえよ」
だが青年はコーションを起こすために髪を掴んで持ち上げると、その鼻を鋭い爪で削ぎ落とした。痛みからコーションは意識を覚醒させた。
「ゆ、許して! 許してくれ! 頼む、金ならいくらでも!」
「ああ、それも忘れてたな」
爪を元に戻すとコーションの前歯を一本掴み、引き抜いた。
「ぎゃああああああああ!」
コーションは悲鳴とともに口を閉じようとして、青年の指に噛み付いた。だがまるで鋼鉄に噛み付いたかのようで、噛んだ歯の方が折れた。
「あんまり暴れんなよ。手が狂うじゃねえか」
「ごべんなざい、ゆるひて! ゆるひてくだひゃい!」
「そう言った奴らをお前は許したのか?」
「ぶひっ!?」
そのまま青年は髪を掴んで立ち上がらせると、その左胸に爪を突き立てた。その痛みに叫ぶも、徐々に爪が自分の体に沈んでいく感覚に恐怖する。骨が妨げることもなく、その爪はどんどん心臓に近づいていく。肺が抉られ呼吸が困難になり、やがては心臓に触れた。
「ぴぎぃ! や、やめ!」
「死ね」
青年はそう呟くとコーションから心臓を引き抜いた。そして血まみれのそれを床に投げ捨てた。ドサリとコーションは痙攣しながら倒れ、やがて動きを止めた。
「さてと、次はお前だ」
マリツィアに顔を向けて青年はそう告げる。
「どうして! 私、何も悪いことしてないのに!」
「そうか。分からねえか。まあ、仕方ない。愚かなまま死んでいけ」
それから30分、コーションと同じ様な拷問を受けて、マリツィアは絶命した。青年は彼らの死体に向かって黒炎を放つ。瞬く間にその火は彼らを燃やし尽くし、部屋に飛び火してあっという間に屋敷に燃え広がった。
レヴィはヴァトーク邸を出て、森で眠っているカミーラのもとへ歩き始めた。
~~~~~~~~
「どこに行っていたんですか?」
「起きてたのか」
「はい、少し前に」
「ちょっと体を動かしにな。ここからどこかに行くにしても体が動かなきゃどうしようもないだろ」
「……そうですか。あんまり無理しないで下さいね」
「ああ」
レヴィはカミーラに笑いながら頷いた。それに安心したのかカミーラはまた目を閉じて眠りについた。
「……お前を守る事が、俺のお前への贖罪だ」
ボソリと呟く彼の言葉は彼女には聞こえなかった。
レヴィはカミーラに尋ねる。その表情は怒りに満ち溢れていた。
「それは……」
その顔を見てカミーラは怯んだ。普段はぶっきらぼうで優しさなど見せなくとも、怖くはなかった。だが今の彼は以前見た彼と同じだった。
「そ、それを話したらどうするつもりですか?」
カミーラは勇気を出して尋ねる。
「決まっているだろう。殺してやる」
レヴィは吐き捨てるように言った。
「……私の家族みたいに?」
何故そんな事を言ったのか分からなかった。だがカミーラの口から溢れ出た言葉にレヴィは驚愕した。
「何を……?」
「あなたが私の家族を殺したように、あの人達も殺すんですか?」
殴られたような衝撃をレヴィは受ける。自分がした罪の結果が目の前にいる事を理解した。
「俺が、俺がお前の家族を?」
「はい。あなたは私の両親も、弟も殺しました。私の目の前でお母様は命を落としました。お父様もオーラムも屋敷に潰されて死ぬました」
そこでレヴィはもう一度彼女の顔をよく見た。そして、数年前に滅ぼした街で泣き叫んでいた少女の面影がある事に気がついた。
「そんな……俺が、俺がお前を……」
「確かにご主人様達は悪魔です。でもあなただって、私からしたら同じです。いえ、殺した数ならあなたの方が遥かに多いでしょう」
「俺は……」
「私はあなたを許せない。だけど、私はあなたがこれ以上誰かを殺すのは見たくない。あの人達は確かに人でなしです。でも、あの人達にも家族がいます。もしあなたが彼らを殺せば、私と同じ境遇の子を作る事になるかもしれない」
「……俺は」
レヴィは何を言っていいのか分からなかった。ノヴァを滅ぼして以来、人間のような感情が自分の中に芽生え始めた事に彼は混乱していた。今まで人間ではなく、龍魔として生きてきた。だからこそ、人間らしさの証明である様々な感情を受け入れる事が困難だったのだ。今抱く感情が罪悪感である事すら彼には理解できなかった。
「なら、俺はお前のために何をすればいい?」
「……レヴィさんはこれからどこかに行くんですよね?」
「ああ」
「それなら……それなら私も連れて行って下さい。あなたの側で、あなたが何を成すのか、私に見せて下さい」
「……分かった。約束する。それと、俺はお前の望むようにもう誰も殺さない事を誓おう」
「レヴィさん!」
カミーラは笑顔を浮かべる。レヴィもそれを見て笑った。互いに依存するような歪な関係である事に彼らはまだ気づいていなかった。カミーラにとってレヴィは地獄のような生活で生きる意思を抱かせ続ける為の存在であり、レヴィにとってカミーラは人間として接してくれる唯一の存在であった。お互いがお互いに欠けた面を埋め合い、傷を舐め合う関係である事に彼らはいつ気がつくのだろうか。なんてね。
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突然大きな音と共に屋敷が揺れたため、急いで寝室の本棚の裏にある隠し部屋にマリツィアと共に隠れた。しばらくの間、外から悲鳴が聞こえてきた。しかし、その声はいつの間にか止んでいた。
「何があったんでしょう?」
「分からん。誰かが攻めてきたか? だが、わしに敵対するものなどいないはずだが」
そんな事を小声で話しながら、隠し部屋にある小さな穴から外を見ていると、寝室のドアが吹き飛び、赤髪の青年が部屋の中に入ってきた。その手は血に塗れ、体に巻いた包帯は血で染まっている。青年はぐるりと部屋を見回すと、隠し部屋がある本棚に向かって歩き出した。
「き、来た……」
マリツィアが小さく呟いてコーションに抱きつく。
「大丈夫。静かにしていればバレないはずだ」
二人は息を潜めて青年が去るのを待つ。だが青年は本棚に向けて拳を振るった。そのまま本棚はあっけなく破壊され、隠し部屋が顕になった。
「見つけた」
青年は禍々しく笑う。
「ぶひぃ! な、何者だ、貴様は!」
コーションは青年を指差して叫んだ。その瞬間、彼の指が弾け飛んだ。
「ぴぎぃ!?」
あまりの痛みにコーションは蹲る。そんな彼の後ろで、マリツィアは尻餅をつきながら後ずさった。
「ぐふぅ、ぐふぅ、なんでこんな事をするんだ!」
今度はコーションの左耳が吹き飛ぶ。悲鳴と共に床を転がる。
「こんな事? お前が今までやってきた事と何が違う?」
「わ、わしはこの国の侯爵だぞ! こんな事をしていいと思っているのか!」
痛みを堪えながら、コーションは怒鳴る。だが青年はそんな彼を見て嘲笑う。
「侯爵? 単なる人間だろ? そこらにいるのと何が違うんだよ」
「き、貴様!」
青年の爪が禍々しく伸びると、顔を上げたコーションの右目にそのまま突き刺さった。
「いぎゃあああああああ!」
爪が引き抜かれ、血があたりに飛び散る。軽く手を振るとビチャッという音と共に抜き取られた眼球が床に転がった。
「ぶふぅ、ぶふぅ、た、助けてくれ……」
マリツィアの方に這いずっていく。
「ひっ!」
彼女は小さく悲鳴をあげて、涙を流しながら失禁した。
「さてと、汚ねぇから触りたくねえが、確か性器にもなんかしていたな」
青年は足を振り上げると、コーションの股間を蹴り飛ばした。グチャッという音がなり、今までにないほどコーションが悲鳴をあげてから気絶した。
「寝てんじゃねえよ」
だが青年はコーションを起こすために髪を掴んで持ち上げると、その鼻を鋭い爪で削ぎ落とした。痛みからコーションは意識を覚醒させた。
「ゆ、許して! 許してくれ! 頼む、金ならいくらでも!」
「ああ、それも忘れてたな」
爪を元に戻すとコーションの前歯を一本掴み、引き抜いた。
「ぎゃああああああああ!」
コーションは悲鳴とともに口を閉じようとして、青年の指に噛み付いた。だがまるで鋼鉄に噛み付いたかのようで、噛んだ歯の方が折れた。
「あんまり暴れんなよ。手が狂うじゃねえか」
「ごべんなざい、ゆるひて! ゆるひてくだひゃい!」
「そう言った奴らをお前は許したのか?」
「ぶひっ!?」
そのまま青年は髪を掴んで立ち上がらせると、その左胸に爪を突き立てた。その痛みに叫ぶも、徐々に爪が自分の体に沈んでいく感覚に恐怖する。骨が妨げることもなく、その爪はどんどん心臓に近づいていく。肺が抉られ呼吸が困難になり、やがては心臓に触れた。
「ぴぎぃ! や、やめ!」
「死ね」
青年はそう呟くとコーションから心臓を引き抜いた。そして血まみれのそれを床に投げ捨てた。ドサリとコーションは痙攣しながら倒れ、やがて動きを止めた。
「さてと、次はお前だ」
マリツィアに顔を向けて青年はそう告げる。
「どうして! 私、何も悪いことしてないのに!」
「そうか。分からねえか。まあ、仕方ない。愚かなまま死んでいけ」
それから30分、コーションと同じ様な拷問を受けて、マリツィアは絶命した。青年は彼らの死体に向かって黒炎を放つ。瞬く間にその火は彼らを燃やし尽くし、部屋に飛び火してあっという間に屋敷に燃え広がった。
レヴィはヴァトーク邸を出て、森で眠っているカミーラのもとへ歩き始めた。
~~~~~~~~
「どこに行っていたんですか?」
「起きてたのか」
「はい、少し前に」
「ちょっと体を動かしにな。ここからどこかに行くにしても体が動かなきゃどうしようもないだろ」
「……そうですか。あんまり無理しないで下さいね」
「ああ」
レヴィはカミーラに笑いながら頷いた。それに安心したのかカミーラはまた目を閉じて眠りについた。
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