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26.天涯孤独
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我は邪神。我はかつて神の名を冠したモノ。我はこの世に只一人で生まれ出でしモノ。我は他者と繋がりを持たぬモノ。
我等邪神は、ただ、天涯孤独の身の上なのだ。
それを寂しいと思った事はない。人間や他の種族達と異なり、邪神は生まれた時から一人だ。それが当然であると思っているからこそ、特に何の哀しみも覚えない。それが、邪神という存在なのだ。
世界。そう、生きていく事を許された世界があれば、それだけで。ただそれだけで、邪神は他には何も望みはしない。生きていく場所。自分を受け入れてくれる世界。弾かれた存在である邪神は、それを求める。
フーアは、そんな俺達と同じように思える。人間の子供。救済の使命を帯びた勇者の少年。普通ならば対極にあるはずの、望まれて生まれた子供。けれどあの少年は、俺達に良く似ている。
生きる場所を切望し。受け入れてくれる存在を渇望し。自分というモノを肯定する何かを求め。生まれてきた意味を無意識に誰かに問い続ける。そんな脆い愚かさが、邪神と通じる哀しさが、望まれて生まれ、祝福されて育ったはずの少年に、ある。
寝顔を見るたびに、俺は思う。時折夢にうなされる姿を見るたびに、俺は思う。無意識に伸ばされる腕に気付いた時に。戦慄く唇で何かを請う姿を見た時に。孤独に耐える小さな姿を見た時に。俺は、この少年は、天涯孤独なのではないかと、思う。
家族はいるといった。祖父と、母と、弟妹達と。けれどそれは、本当に家族であるのか。そのような事を、俺は思わざるを得ない。少なくとも、フーアを見ているとそう思う。
当たり前を渇望しているのかもしれない。ごく普通の人間として生きていく事。それはできないと笑って言い切りながら、時折不意に瞳が陰る。ならば、それをさらけ出してくれればいい。意地を張り続けなければ、もう少し楽になれるだろうに。
フーアは己を疎んでいる。このごろ、漸くその事に気づけた。自分はいらない存在なのだと、彼は思っている。おかしな話だ。フーアがいなければ、この世界を救う事は不可能だというのに。異界とこの世界を繋ぐだけの力を持つモノは、そうそう簡単には存在しない。
確かに。俺自身も、やろうと思えば出来る。だがしかし、負担の大きさを考えれば、やりたくはない。アレを、何と言えばいいのだろうか。脳内を何かの力によって掻き回されるのに似ている。その激痛を思いだし、俺は思わず身震いした。
——…………世界を救済したら、お前はどうする?
——……どうするって……。どうもしない。俺は俺だし。
——オメガ神殿に戻るのか?
——さぁなぁ……。特に決めてはいない。
——そうか。
俺の問いかけに、はぐらかすように笑うだけだった。何だろうか。時折不意に、お前に向けて腕を伸ばしたくなる。捕まえておかないと、消えそうに思えた。馬鹿馬鹿しいと、思いながらも。
何故?その答えを俺は必死に求めている。俺には解らないんだ、フーア。何故お前を気にしているのか、何故お前がそうなのか。どちらも解らなくて困る。それでもやはり、こうして傍にいるのだろうが。
旅が終わる時に、答えが出ればいいと、そんな事を思った……。
我等邪神は、ただ、天涯孤独の身の上なのだ。
それを寂しいと思った事はない。人間や他の種族達と異なり、邪神は生まれた時から一人だ。それが当然であると思っているからこそ、特に何の哀しみも覚えない。それが、邪神という存在なのだ。
世界。そう、生きていく事を許された世界があれば、それだけで。ただそれだけで、邪神は他には何も望みはしない。生きていく場所。自分を受け入れてくれる世界。弾かれた存在である邪神は、それを求める。
フーアは、そんな俺達と同じように思える。人間の子供。救済の使命を帯びた勇者の少年。普通ならば対極にあるはずの、望まれて生まれた子供。けれどあの少年は、俺達に良く似ている。
生きる場所を切望し。受け入れてくれる存在を渇望し。自分というモノを肯定する何かを求め。生まれてきた意味を無意識に誰かに問い続ける。そんな脆い愚かさが、邪神と通じる哀しさが、望まれて生まれ、祝福されて育ったはずの少年に、ある。
寝顔を見るたびに、俺は思う。時折夢にうなされる姿を見るたびに、俺は思う。無意識に伸ばされる腕に気付いた時に。戦慄く唇で何かを請う姿を見た時に。孤独に耐える小さな姿を見た時に。俺は、この少年は、天涯孤独なのではないかと、思う。
家族はいるといった。祖父と、母と、弟妹達と。けれどそれは、本当に家族であるのか。そのような事を、俺は思わざるを得ない。少なくとも、フーアを見ているとそう思う。
当たり前を渇望しているのかもしれない。ごく普通の人間として生きていく事。それはできないと笑って言い切りながら、時折不意に瞳が陰る。ならば、それをさらけ出してくれればいい。意地を張り続けなければ、もう少し楽になれるだろうに。
フーアは己を疎んでいる。このごろ、漸くその事に気づけた。自分はいらない存在なのだと、彼は思っている。おかしな話だ。フーアがいなければ、この世界を救う事は不可能だというのに。異界とこの世界を繋ぐだけの力を持つモノは、そうそう簡単には存在しない。
確かに。俺自身も、やろうと思えば出来る。だがしかし、負担の大きさを考えれば、やりたくはない。アレを、何と言えばいいのだろうか。脳内を何かの力によって掻き回されるのに似ている。その激痛を思いだし、俺は思わず身震いした。
——…………世界を救済したら、お前はどうする?
——……どうするって……。どうもしない。俺は俺だし。
——オメガ神殿に戻るのか?
——さぁなぁ……。特に決めてはいない。
——そうか。
俺の問いかけに、はぐらかすように笑うだけだった。何だろうか。時折不意に、お前に向けて腕を伸ばしたくなる。捕まえておかないと、消えそうに思えた。馬鹿馬鹿しいと、思いながらも。
何故?その答えを俺は必死に求めている。俺には解らないんだ、フーア。何故お前を気にしているのか、何故お前がそうなのか。どちらも解らなくて困る。それでもやはり、こうして傍にいるのだろうが。
旅が終わる時に、答えが出ればいいと、そんな事を思った……。
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