銀河ラボのレイ

あまくに みか

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青白磁色の樹

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 レイはグロウを背後に連れて、月面の端までやって来た。

 月の端には、小さなアーチ状の橋がそらへと伸びている。

 クリスタルの橋は、周りの星々の光をうけて、エメラルドグリーンや深紅、鮮やかな青色を映し出していた。

 橋の先に、小舟が一そう、ゆらゆらと揺れている。
 レイが先に橋を渡り、小舟に乗った。振り返ってグロウに手を差し出す。

「ルーナも連れて行くの?」

 グロウの腕の中でルーナが、プシュンと鼻を鳴らした。

「もちろん、ってルーナが言ってるよ」

 グロウが無邪気に笑って、小舟に飛び乗った。

「本当に、ルーナはさみしがり屋さんなんだから」

 そう言いながら、レイはオールを手に取る。一晩でルーナとグロウの仲が深まったことが、嬉しかった。


 舟は音もなく、滑るように宙を進んで行く。

 色とりどりの星が、ちかちかと瞬いている。

 上からも下からも、舟を囲むように、星たちが輝いていて、舟はその中を静かに滑っていく。

 グロウはその景色を、じっと黙って見つめていた。この美しさは、声を出した途端に、弾けてなくなってしまうのではないかと思われた。


 舟は星たちの間を通り抜け、やがて青白磁色の樹が目の前に見えてきた。

 樹は細い幹から横へ横へと枝が広がっており、自身が立つ星をおおうようにして立っている。

 レイは舟を樹が立つ星へ近づけて、停まった。

 少し手を伸ばして、枝にぶら下がっている、深紅の実に触れると、それはほろりとレイの手の中に落ちた。

「はい、今日のごはん」

 深紅の実をグロウに投げてよこすと、自分とルーナの分の実をレイはもいだ。

 グロウは手の中で、コロンと丸い実を見つめた。それは、宝石のように硬く光沢を持っており、とても食べ物には見えなかった。

「殻を割るんだ」

 レイは口をモゴモゴさせながら、舟のへりで実を割ってやり、中身をグロウの手にのせてやった。

 深紅の殻の中には、黄色の柔らかい団子のようなものが入っていた。

 グロウは一口食べて、驚いた。口の中いっぱいに、甘い香りが満ち、ホロホロと舌の上を転がったかと思うと、溶けるようになくなってしまった。

「おいしい! レイ、もう一つ食べてもいい?」
「いいとも」

 うなずいて、樹を見上げた時だった。


 鈴の音色が、宙に響いた。


 二人の頭上を、ほうき星が通り過ぎていった。


「天使」


 グロウはその一瞬の出来事に、息をのんだ。


 流れる衣を身にまとった、美しい天使が星を先導して飛翔していた。その羽が、羽ばたく度に鈴の音がシャリン、シャリンと鳴る。


 ほうき星には、たくさんの人間たちが乗っていた。おじいさん、おばあさん、赤ん坊を抱いた女の人、男の人。


 みんなそれぞれ、髪の色や肌の色が異なっていたが、みんな幸せそうな顔をして前を向いていた。

 一人の栗毛の男の子が、グロウたちに気がついて手を大きく振った。

 それら全ては、一瞬の出来事だった。



 ほうき星が通り過ぎると、再び辺りに静けさが戻った。


「今のは、なに?」

 宙を見上げたまま、グロウは尋ねた。

「あれは、死者を天界へ連れて行くところだよ」
「みんな、死んじゃったの?」
「そうだよ」
「どうして、みんな死ぬの?」
「さぁ、どうしてだろうね」

 レイはオールをやさしく漕いだ。

「ぼくにも、わからないんだ」


 舟は青白磁色の樹から離れていく。

 レイは樹を見つめながら思う。


 いつかこの樹は、自分が立つ星の養分を吸い取り、やがて星が無くなり、そして、この樹も枯れるだろう。
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