暖をとる。

山の端さっど

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-13℃ 練乳仕込みコッペパン

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「はむっ」
「懐かしいなあ、コッペパン」

 僕が訪ねた理由も知らず探偵は呑気だ。

 なんのことはない。欠席者の給食だ。倍率は高かったが僕が得るのは当然な勝負だった。ただし昼食後に小テストを控えていたため胃への過負荷を避けて持ち帰りだ。軽いランニングで消費した今こそちょうど良い脳と身体への栄養補給となる。

「ところで昨日車を出して留守にしていたようだが」
「……おっと、残念だが探偵には守秘義務って奴が」
皿達千さらだち市」

 口にした途端探偵は「ぶはっ」と間抜けにも咽せた。

「お、おいちょっ……どこでそれ聞いてきた」
「その様子を見るに僕の調査力もあながち探偵のそれに劣らないらしい」
「ここで優劣競ってどうするよ貴君」

 探偵にしてはくだらない事を聞く。昨日僕が間違いなく登校していながらも単独で計画を立て調査に行った探偵の動向を知った理由が「誰かから聞いた」の筈が無かろうに。

「旧友の元を訪ねるのが守秘義務だとは知らなかったよ」
「一体どこまで知って……いや、そこまで知っててその先は知らないって事は、何か仕掛けてたな?」

 僕は肩をすくめておく。いつかたどり着く答えがより早くなる程度のヒントなら出しても問題はない。どうせ二度とは使えない手だ。

「俺の声を拾った訳じゃあない。『旧友』までは知ってるが追撃がないからその先のカードは多分ない。……車内にカメラでも置いたか?」
「遅くもご名答。探偵にバレないように事務所近辺でのみ数枚の写真撮影と事務所近くの受信機への送信を行うように仕込んだ。まだ天井に張り付いたままだ」
「なるほど、カーナビを撮影したか。目的地の住所と登録名を見て……はあ、どこからそんな技術とモノ拾うんだか天才様よぉ。次から見つけたら覚えてろよ」

 僕だって易々見つかる仕掛けをする気はない。

「……俺の知る限り『スターラー連続殺人』の初めての犯行を最初に発見したのが『旧友』殿だ。ようやく話を聞きに行けた」

「旧友」は仮名か。口ぶりからして相手から呼び名を指定されたようだ。いずれにせよ引っ掛かるネーミングだ。

peepピープ
「『覗き見』『雛鳥の鳴き声』スラングで『仲間・友人』」

 不意に言われた英単語にその訳で返す。……なるほど。

「十年前『ピープ』って名のついた覗き魔が捕まったろ。もう足は洗ったんだが名前は古くなっても気に入ってるらしい」

 交友関係の広い事で実に結構。少し探偵を見直した。
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