25 / 105
-25℃ 怪談よびこ笛
しおりを挟む
「お前、まだ引きずってんのか?」
「いや……」
同僚――同期の刑事の言葉に応える中年男の顔色は確かに悪い。元女上司の話題が出れば一層暗くなる。
「無理もねえよな、捜査は行き詰まりだ。スターラーの奴も、なにも美人殺すことないだろうに」
「美人?」
「美人だろ。スタイルも良し、性格は明るい、眼鏡ってのがまた」
暗い空気を変えようと戯けた事を言う同期刑事は、中年刑事の葛藤を知るよしもない。今度は軽蔑の音を含ませて遠くを見やる。
「それに、あいつが次の課長だろ?」
他の署からやってきた背の高い男は、たいそうな子供好きらしい。今日はわざわざ現場にやって来て元気に檄を飛ばしている。
「行方不明になったのは、まだ10かそこらの子供たちだ! こんな可愛い子たちが可哀想だろう! 絶対にすぐ見つけ出せ!」
「案外あいつが犯人だったりしてな」
同期の囁き声に刑事は「勘弁してくれ」と首を振った。……先ほど、捜査資料のクラス写真を舐めているのを、二人で目撃してしまったのだ。
上司は置いておくとして、奇妙な事件だ。この小学校で、昼休みの間に4年A組の児童30人が消えた。集団誘拐が疑われ、警察も動員して校内も学校周辺も捜索しているが、一人も見つからない。目撃証言もない。実に不気味だった。聞き込むうちに妙な噂だけが立ち上ってくる。
「旧校舎のよびこ笛」。
「子供の間で流行ってる怪談か。笛の音が聞こえる方に行くと旧校舎にたどり着いて、着物を着た子たちが寿命のいくらかと引き換えに欲しいものをくれるとか」
もちろんこの学校に旧校舎はない。十年ほど前、旧校舎を壊したその場に建て直されたからだ。しかしあろうと無かろうと学校の怪談に「旧校舎」はつきものらしい。
「んで、この現場だ」
綺麗な教室に落ちていたのはただ一つ。一枚の薄いプラスチック片……バラン。
「弁当の日でもないのになんでこんなモンが?」
「コンビニ弁当持たせるような家庭は無いと信じたいな」
子のいない二人の刑事には小学生のリアルが分からない。
「誘拐犯バランからの連絡も無いしな」
「変な名前をつけるな」
「いいだろう、別に」
不意に視線を感じて刑事は振り返る。しかし臨時休校となったため、もう生徒はいない。気のせいかと思ったとき、一羽のカラスがすぐそばに降り立った。
カラスは人間などには目もくれず、地面を突く。何もないように見えたそこには――
「え?」
コンビニ弁当が埋まっていた。
「いや……」
同僚――同期の刑事の言葉に応える中年男の顔色は確かに悪い。元女上司の話題が出れば一層暗くなる。
「無理もねえよな、捜査は行き詰まりだ。スターラーの奴も、なにも美人殺すことないだろうに」
「美人?」
「美人だろ。スタイルも良し、性格は明るい、眼鏡ってのがまた」
暗い空気を変えようと戯けた事を言う同期刑事は、中年刑事の葛藤を知るよしもない。今度は軽蔑の音を含ませて遠くを見やる。
「それに、あいつが次の課長だろ?」
他の署からやってきた背の高い男は、たいそうな子供好きらしい。今日はわざわざ現場にやって来て元気に檄を飛ばしている。
「行方不明になったのは、まだ10かそこらの子供たちだ! こんな可愛い子たちが可哀想だろう! 絶対にすぐ見つけ出せ!」
「案外あいつが犯人だったりしてな」
同期の囁き声に刑事は「勘弁してくれ」と首を振った。……先ほど、捜査資料のクラス写真を舐めているのを、二人で目撃してしまったのだ。
上司は置いておくとして、奇妙な事件だ。この小学校で、昼休みの間に4年A組の児童30人が消えた。集団誘拐が疑われ、警察も動員して校内も学校周辺も捜索しているが、一人も見つからない。目撃証言もない。実に不気味だった。聞き込むうちに妙な噂だけが立ち上ってくる。
「旧校舎のよびこ笛」。
「子供の間で流行ってる怪談か。笛の音が聞こえる方に行くと旧校舎にたどり着いて、着物を着た子たちが寿命のいくらかと引き換えに欲しいものをくれるとか」
もちろんこの学校に旧校舎はない。十年ほど前、旧校舎を壊したその場に建て直されたからだ。しかしあろうと無かろうと学校の怪談に「旧校舎」はつきものらしい。
「んで、この現場だ」
綺麗な教室に落ちていたのはただ一つ。一枚の薄いプラスチック片……バラン。
「弁当の日でもないのになんでこんなモンが?」
「コンビニ弁当持たせるような家庭は無いと信じたいな」
子のいない二人の刑事には小学生のリアルが分からない。
「誘拐犯バランからの連絡も無いしな」
「変な名前をつけるな」
「いいだろう、別に」
不意に視線を感じて刑事は振り返る。しかし臨時休校となったため、もう生徒はいない。気のせいかと思ったとき、一羽のカラスがすぐそばに降り立った。
カラスは人間などには目もくれず、地面を突く。何もないように見えたそこには――
「え?」
コンビニ弁当が埋まっていた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる