カピバラになりたい牛

3.

「も～～『おはよう！今日は少し髪型が違うわね、切ったのかしら？』」
「はぁ～……
お前も毎日毎日よく喋るな。他の牛はずっと黙ってるぞ？なんで朝イチ担当のお前が朝からモーモー言うんだよ……目を覚ませってか、出勤する時に十分覚めとるわ。」

私が鳴くの迷惑みたいだけど、鳴くとこうしてなにかお話してくれるから、ついつい鳴いてしまうわ。
強く伝えたいと思っているから声が勝手に出てしまうのもあるのだけれど。

いつも朝一で話しかけてダメならもう話さないのだけれど、今日は聞きたいことがあるの。

「も～～『ねぇ、“カピバラ”ってどんな子なの？』も～～『私は見たことがないから、教えて欲しいわ』も～～『ダメかしら？』」
「…ほんとに今日はよく喋るな。なんだ？なんかあるのか？
………どこも怪我してねぇぞ？大丈夫か？
……獣医にでも見せてみるか…？」

あら、うっかり何度も鳴いてしまったから心配かけてしまったみたいね。
でも大丈夫よ。どこも怪我してないわ。

すごく心配したような顔をして私のことを見つめてくれる。嬉しいわ。初めてじゃないかしら、こんなに私のことを見つめてくれるのは。
やだ、そう思うと恥ずかしいわ…///

「急に鳴かなくなった……なんだ？大丈夫か？」

あ、照れてる場合じゃないわ。急いで大丈夫だと伝えないと！

「((ペロッ))」
「ぷえっ……顔を舐めるな。………大丈夫なんだな？今日はちょっと機嫌が良かっただけなんだな？……ならよし。心配して損した。
そう言えばお前は初めの方はよく鳴いていたな。
最近は朝に1度だけだから、うっかりしてた」
「も～～『えぇ、大丈夫よ。』
も～～『そうねぇ、初めは何とかしたくて沢山鳴いて、お喋りしようとしていたわね…覚えててくれてたみたいでとっても嬉しいわ！』」

「ほんとによく喋るな。ご機嫌なんだな。こうしてると少し可愛く思えるよな……。まぁ所詮牛、カピバラには勝てないがな。

あぁ、カピバラに会いたい。カピバラが恋しい…」