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1章
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(カルロ視点)
「こんにちは、君がカルロかい?」
爽やかで透き通るように美しい声、そんな声が僕が遊んでいた壁に設置された掃除がされてない、ほこりで薄汚れた窓から聞こえた。
その部屋はお仕置部屋と母様が言っていた部屋だった。母様からは部屋には決して入るなと言われていたが、別に中には入っていないし、母様は茶会だから怒られないとタカをくくって、忠告を忘れたフリをしてお仕置部屋の前の使い勝手のいい壁を背に日向ぼっこをしていた。
もう少しで眠れそうだと思った時に、その声は頭上から聞こえてきた。
「うん、僕がそうだよ。君は誰?」
何故か眠気が冷めてしまった僕は、いつもは無視するはずの人の声にいつの間にか答えていた。自分でも驚いたが、何故だか話しかけてくる人に興味が湧いていた。
「私かい?私は……この部屋を掃除する使用人ですよ」
違う。瞬時にわかった。だってこの屋敷にいる人間はどんな人間でもさっきみたいにタメ口は使わないし、基本自分からは話しかけたりしない。
でもたまに媚び売るような視線と表情をしたメイドなんかが話しかけてくるけど、そういうことをするメイドと彼とは何かが決定的に違うと思った。何かがなんなのか、僕にはまだわかってないけど兎に角違うことはわかった。
「そうなの?ねぇ、名前を教えてよ。僕だけ名前を知られてるのはずるいし、名前がないとあなたのことを呼べないよ」
僕がそう言うと彼は困ってしまったのか数秒静かになる。そんな彼の事情なんて考え無しに僕は彼の名前が、彼のことが知りたいと思っていた。僕にとって彼は初めて僕に媚びなかった人間であり、僕の家庭教師と乳母も呆れるほどの眠気を覚まさせた人だったからだ。
「私はシル。気軽にシルって呼んでください」
「わかった、じゃあ僕のとはルーって呼んでよ」
顔の知らない彼の名前はシル。凛とした透き通ったような美しい声を発する僕が初めて気になった人はシル。忘れないように脳内で復唱している時、シルは困ったような声を上げた。
「そんな、カルロ様のことをそんな風に呼ぶなんて…無理ですよ」
「…さっきは敬称なしで僕のこと呼んだのに愛称呼びはダメなの?」
「うっ…それは…」
シルは悩ましげに言葉を紡ぐが、そんなシルが可愛くて僕はクスクスと笑う。僕の笑い声が聞こえたのかシルは「笑うな!」と照れながら僕に怒った。
使用人の振りをしてるくせに素が抜けていないシルの声にまた面白くなって自然とえみがこぼれた。
「じゃあ、シルのために僕が譲歩してあげる。カルロって僕のことを呼んでね?もちろん敬称はなしでタメ口ね?」
「そんな無礼なこと…」
シルは顔を見なくても想像がつくくらい困ったような様子で頭を悩ませる。でも僕はどうしても、何故かどうしてもシルには「カルロ」と呼んで欲しかったから強行突破することにした。
「僕がいいって言ってるからいいの!わかった?」
「はぁ…もうわかったよ、よろしくね。カルロ」
その瞬間、彼がフッと笑ったような気がした。
僕はまだ見ぬ彼の素顔を想像して声のように綺麗な人なんだろうな…と妄想に勤しんでいた。
︎︎⟡
彼と時々話すようになってから数ヶ月が経った時、僕はふと彼の顔が見たくなった。
僕はどうしても彼の素顔が知りたくて、使用人たちにシルという使用人がいるか聞いて回ったが、いい答えが得られずかなりガッカリしていた。予想はしていたがやはり使用人ではなかったみたいだ。
いつも彼と話す時は僕が部屋の外側の壁によりかかって燦燦と降り注ぐ太陽を浴びながら、シルが薄暗い部屋の窓の外を眺めながら話している。
顔を見ずに話してもこれだけ心地がいいんだから、対面して話したらもっと楽しいのに…とどうしようもない欲望が僕の口から出そうになったが、口を噤んだ。きっと彼が困るのがわかったからだ。
彼から発せられる言葉も声もどれも心地いいもので聞いていて苦にならない。乳母や母の話を聞くだけでも眠気が襲ってくるのに、彼の声を聞いても全く眠気も飽きもこない。不思議な人なんだなぁとシルに対して好ましい気持ちが話していく事に増えていった。
「カルロ、私はあと数年経ったら学園に通うことになってしまうから君とは話せなくなってしまうんだ」
寂しいけど義務だから仕方がないよね。と彼は寂しげにかつ、唐突に衝撃の事実を話し出す。そんなの聞いてない!と僕が身を乗り出しそうになった瞬間シルは「でも」と口にする。
「私が13の時になったらカルロが入学できるから5年は一緒にいられるね」
学園入学は10歳からだから…と、彼の年齢を推測するとおそらく今は8歳だということがわかる。僕と3歳しか違わないのに、そんなに若いのにこんなにかっこよく話せるものなんだな…と感心する。
その瞬間僕が見てきた中で、似たような凛々しい言葉遣いで話している人が脳裏によぎった。その人は僕の父様だった。
父様は優しくも丁寧であり、凛とした声で言葉を紡ぐ。彼の言葉遣いが父様にあまりにそっくりなことに気づいた僕はニヤニヤが止まらない。母様は好きじゃないけど父様のことは好いている僕は、シルが父様みたいにかっこいい人だったらいいな!と1人笑みを零した。僕はシルの言葉に耳を傾けながらまた壁によりかかっていた。
顔を見せない、凛とした透き通るような声の持ち主であるシルに僕は惹かれていた。
「こんにちは、君がカルロかい?」
爽やかで透き通るように美しい声、そんな声が僕が遊んでいた壁に設置された掃除がされてない、ほこりで薄汚れた窓から聞こえた。
その部屋はお仕置部屋と母様が言っていた部屋だった。母様からは部屋には決して入るなと言われていたが、別に中には入っていないし、母様は茶会だから怒られないとタカをくくって、忠告を忘れたフリをしてお仕置部屋の前の使い勝手のいい壁を背に日向ぼっこをしていた。
もう少しで眠れそうだと思った時に、その声は頭上から聞こえてきた。
「うん、僕がそうだよ。君は誰?」
何故か眠気が冷めてしまった僕は、いつもは無視するはずの人の声にいつの間にか答えていた。自分でも驚いたが、何故だか話しかけてくる人に興味が湧いていた。
「私かい?私は……この部屋を掃除する使用人ですよ」
違う。瞬時にわかった。だってこの屋敷にいる人間はどんな人間でもさっきみたいにタメ口は使わないし、基本自分からは話しかけたりしない。
でもたまに媚び売るような視線と表情をしたメイドなんかが話しかけてくるけど、そういうことをするメイドと彼とは何かが決定的に違うと思った。何かがなんなのか、僕にはまだわかってないけど兎に角違うことはわかった。
「そうなの?ねぇ、名前を教えてよ。僕だけ名前を知られてるのはずるいし、名前がないとあなたのことを呼べないよ」
僕がそう言うと彼は困ってしまったのか数秒静かになる。そんな彼の事情なんて考え無しに僕は彼の名前が、彼のことが知りたいと思っていた。僕にとって彼は初めて僕に媚びなかった人間であり、僕の家庭教師と乳母も呆れるほどの眠気を覚まさせた人だったからだ。
「私はシル。気軽にシルって呼んでください」
「わかった、じゃあ僕のとはルーって呼んでよ」
顔の知らない彼の名前はシル。凛とした透き通ったような美しい声を発する僕が初めて気になった人はシル。忘れないように脳内で復唱している時、シルは困ったような声を上げた。
「そんな、カルロ様のことをそんな風に呼ぶなんて…無理ですよ」
「…さっきは敬称なしで僕のこと呼んだのに愛称呼びはダメなの?」
「うっ…それは…」
シルは悩ましげに言葉を紡ぐが、そんなシルが可愛くて僕はクスクスと笑う。僕の笑い声が聞こえたのかシルは「笑うな!」と照れながら僕に怒った。
使用人の振りをしてるくせに素が抜けていないシルの声にまた面白くなって自然とえみがこぼれた。
「じゃあ、シルのために僕が譲歩してあげる。カルロって僕のことを呼んでね?もちろん敬称はなしでタメ口ね?」
「そんな無礼なこと…」
シルは顔を見なくても想像がつくくらい困ったような様子で頭を悩ませる。でも僕はどうしても、何故かどうしてもシルには「カルロ」と呼んで欲しかったから強行突破することにした。
「僕がいいって言ってるからいいの!わかった?」
「はぁ…もうわかったよ、よろしくね。カルロ」
その瞬間、彼がフッと笑ったような気がした。
僕はまだ見ぬ彼の素顔を想像して声のように綺麗な人なんだろうな…と妄想に勤しんでいた。
︎︎⟡
彼と時々話すようになってから数ヶ月が経った時、僕はふと彼の顔が見たくなった。
僕はどうしても彼の素顔が知りたくて、使用人たちにシルという使用人がいるか聞いて回ったが、いい答えが得られずかなりガッカリしていた。予想はしていたがやはり使用人ではなかったみたいだ。
いつも彼と話す時は僕が部屋の外側の壁によりかかって燦燦と降り注ぐ太陽を浴びながら、シルが薄暗い部屋の窓の外を眺めながら話している。
顔を見ずに話してもこれだけ心地がいいんだから、対面して話したらもっと楽しいのに…とどうしようもない欲望が僕の口から出そうになったが、口を噤んだ。きっと彼が困るのがわかったからだ。
彼から発せられる言葉も声もどれも心地いいもので聞いていて苦にならない。乳母や母の話を聞くだけでも眠気が襲ってくるのに、彼の声を聞いても全く眠気も飽きもこない。不思議な人なんだなぁとシルに対して好ましい気持ちが話していく事に増えていった。
「カルロ、私はあと数年経ったら学園に通うことになってしまうから君とは話せなくなってしまうんだ」
寂しいけど義務だから仕方がないよね。と彼は寂しげにかつ、唐突に衝撃の事実を話し出す。そんなの聞いてない!と僕が身を乗り出しそうになった瞬間シルは「でも」と口にする。
「私が13の時になったらカルロが入学できるから5年は一緒にいられるね」
学園入学は10歳からだから…と、彼の年齢を推測するとおそらく今は8歳だということがわかる。僕と3歳しか違わないのに、そんなに若いのにこんなにかっこよく話せるものなんだな…と感心する。
その瞬間僕が見てきた中で、似たような凛々しい言葉遣いで話している人が脳裏によぎった。その人は僕の父様だった。
父様は優しくも丁寧であり、凛とした声で言葉を紡ぐ。彼の言葉遣いが父様にあまりにそっくりなことに気づいた僕はニヤニヤが止まらない。母様は好きじゃないけど父様のことは好いている僕は、シルが父様みたいにかっこいい人だったらいいな!と1人笑みを零した。僕はシルの言葉に耳を傾けながらまた壁によりかかっていた。
顔を見せない、凛とした透き通るような声の持ち主であるシルに僕は惹かれていた。
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