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プロローグ

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この話は俺が体験した過去の話。
ヒーローを知る前のお話

「おい!知ってるか?正義のヒーロージャスティマン!」
「なにそれ?」

いまから15年前幼稚園児の時の話
おれはまだヒーローとは何か知らなかった。
今みたいにテレビを見ているわけではないし
ヒーローが目の前にあらわれたこともない

「おい!時代遅れだぜ。じゃあ!おれヒーローやるから、ゆきひさ!おまえ犯罪者な!」
「えぇいやだなー」

ヒーローの相手は怪人なんかではない
強盗・殺人・脱獄 ヒーローが戦う相手は犯罪者
ヒーローは人気のために犯罪者と戦い
応援してくれた金で生活している。

「みつけたぞ!犯罪者!」
「ぬ!見つかったか!なら!いくぞ!」

最初は嫌だったがやってみたら、楽しく
ノリノリだった。

「くらえ!セイバー斬り!」

木の棒を持ち、走ってくる
俺は叩かれることを恐れた。
手加減をしようという気は全くないように見えた。

「ああああ」

僕はとっさにしゃがんだ。
怖かった。

「たああああああああ」

"ばん、ばん、ばん"

背中が痛い。
木の棒が服に当たる鈍い音がした。

「痛い!痛いよ!!」
「犯罪者はこうなるんだ!おら、おら!」

僕の気持ちは通じなかった。

「痛い!やめてよ!」
「あーははは!こうしてやる!こうして!」

彼はやめることなく叩き続けた。
すると…

「こら!やめなさい!」

先生が止めに来てくれた。
周りの子が言ってくれたらしい。
彼は叩くのをやめ、先生にこっぴどく怒られていた。

幸い怪我はなかった。
親からはすごく心配され、僕は何故か涙が出た。

次の日

「昨日はごめん。」

彼から謝られビックリしている僕がいた。

「え、あ…うん。大丈夫だよ。」

とっさに出た言葉だった。
まさかあの彼から謝られるなんて100%ないとおもっていたから。

それから、彼は僕の所に来なくなった。
なぜか分からない。ただ虚しさだけがあった

あれから数日が経ち、おじいちゃんから

「あした、ポワールタワーにいこうか」

大好きなおじいちゃんとのお出かけにうきうきして夜は寝れなかった。
と言いつつも9時間は寝た。

次の日、僕は7時に起きて準備した。
めっちゃたのしみだった。

「おはよ、ゆきひさ…はやいな」

おじいちゃんは起きたてでまだ目が開いていなかった。
まるでそれは数字の3だった。

「おじいちゃん目が3になってる!」
「ん?」
「うぅん、なんでもない。」

僕は言うのをやめた。
傷つくと思ったから

「おじいちゃん!なんじにいくの?」

おじいちゃんはご飯を食べながら、

「う~ん、10時くらいかの」
「10時って長いハリが10のとこ?」

まだ僕は時間をすべてわかってはいなかった

「いんや、短いハリが10のとこじゃよ」 

テーブルの上にあった小さな置き時計をもち、おじいちゃんは優しく教えてくれた。

「まだまだじゃーーん」

僕は駄々をこねた。
今の時間は8時 あと2時間もあった。

「すぐじゃよ、ちょっと待ってなさい」

おじいちゃんは奥から何かを持ってきた。
それは四角い機械だった。

「おじいちゃん、これ何?」
「これは真ん中のボタンを押すと」

おじいちゃんが真ん中の赤いボタンを押すと
機械がたてに開き光が出てきた。
その光は周りに広がる。

「これは?」
「バーチャル戦闘マシン、バーチャロンじゃよ」
「バーチャロン」

バーチャロンという機械は室内で使う擬似
戦闘訓練マシン
バーチャロンを起動させるとバーチャロンが開き内部センサーが部屋の高さ広さを計測
バーチャル映像を投影させ、場所を作り出す。
そして敵となる犯罪者を映し出し擬似戦争を作り出す代物

「うわ!」
ゆきひさは驚きのあまり尻もちをついた。

「だいじょうぶかい?」
おじいちゃんが僕を起こしてくれた。

センサーが部屋の測定を終え、部屋の中が変わり始める。

「おじいちゃん!おじいちゃん!ここどこ?」
「ここはフルシティ、綺麗だろ。」

映し出された街の名はフルシティ。
元冒険者という者が沢山いた街
だが、魔王復活により崩壊。
冒険者達は戦った。だが魔物の群れに限界はなく、倒しても倒しても群れの襲撃は続いた。
冒険者達は次々倒れ、死んで行った。
冒険者は絶望し、死を選ぼうとした時
勇者が現れたのだ。
勇者と冒険者は最後の戦いに出た。
劣勢だった。だが、勇者と魔王は一騎討ちをし、なんとか魔王を倒した。
魔物は撤退を開始。100年たったが魔物は来ず、平和となった。

「わぁぁぁぁぁきれーー」
僕は夢中でうろついた。
綺麗な刀、防具、盾、骨董品。
でも、見回す限り、みんな綺麗なのを持っていなかった。
血痕やひび割れ、折れていたりしていた。
僕は不思議に思った。

「おじいちゃん、なんで皆きたないの?」
「それはな、装備には色んな思い出あるからじゃ。」
「思い出?」
「あぁ」

おじいちゃんは話してくれた。
フルシティでの思い出を、女は気が強いということ。
そしておばあちゃんの事も…

「おばあちゃん…」
「おじいちゃんがおばあちゃんに出会ったのは運命なのかもしれないな。」

おばあちゃんは僕が生まれた直後死んでしまった。
戦死だった。
僕のおばあちゃんはヒーローだった。
ヒーロー名は「グラン・トワーズ」
犯罪者を追っている先で、パワー型の
犯罪者、「ドンドット」の不意打ちをくらい
グランも戦ったが、力負けをし、死んでしまった。

「おばあちゃんに会いたかったな…」
「あぁそうだな」

おじいちゃんは悲しげな顔をしていた。
悲しそうなおじいちゃんは初めて見た。

「おじいちゃん!短いハリが10になるよ!」
「ん?お!そうだな、準備しないとな!」
「うん!」

おじいちゃんとぼくはじゅんびして
バスに乗りポワールタワー付近を歩いていた。

「おじいちゃん!たま!たま!」
「お~でかいな~」

僕は初めて大きな玉をみた。
ポワールタワーは325kmのタワー
てっぺんには丸い球体があり、そこからみる
景色は絶景らしい。

「いこう!はやく~」
おじいちゃんの服を引っ張る僕
はじめてのポワールタワーにウキウキしていた。

あれが起きる前までは

「はやくーー」
僕はおじいちゃんの服を引っ張って歩いていると

"ドン""ガジャン"

いきなり大きな音が鳴った。
音の方向をみると人がポワールタワーにめり込んでいた。

「お、おじいちゃん」
僕はおじいちゃんをみた
唖然とした、まるで恐怖に落とされたような顔。

「おじいちゃん!おじいちゃん!」
僕は必死におじいちゃんの服をゆさぶった

「はぁ!?」
おじいちゃんは正気を取り戻した。

「逃げるぞ!ゆきひさ!」
おじいちゃんは僕を抱き抱え走り始めた
おじいちゃんは足が悪く、走れない
けど、いまは全力で走っている。
僕はただしがみついていることしか出来なかった。

"ヒューン""ドゴーン"

突如空から岩が降ってきた

「あぁ、やばいやばいやばい」
おじいちゃんの走った方向に岩が飛んできたのだ。

「おじいちゃん」
僕は怖かった。
今何が起きているのか、理解することが出来なかった。
だって僕はまだテレビでもヒーローを見た事はないし、災害にもあったことはない
そんな僕が今、災害で犯罪者をヒーローを
まじかでみている。

これを6歳児が理解できるだろうか。

「こわいよ…」
涙がこぼれ始めた。
「よしよし、大丈夫だから!おじいちゃんを信じなさい!」
おじいちゃんの言葉が僕の支えだった。

「おじいちゃんが生きて生きてお前を家に連れていく!ここでは死なんぞ!」

おじいちゃんは全力で走った。
だが走れる方向には犯罪者がいる。
おじいちゃんは歯を食いしばった。

「まだ走れるぞ!おじいちゃんはああああ」
おじいちゃんは叫んだ
痛い足を全力で動かした。

「おじいちゃん」
周りを見るのをやめて、おじいちゃんの服に顔をうずめた。

「おい!ヒーローさんよ、何が街の平和だ
これを見てまだそれが言えるかよ」
犯罪者がポワールタワーにめり込んでいるヒーローに問いかける

「俺は…街を救いたいからヒーローをしてるんだ。だが、今の現状はよくない…」
ヒーローが動き始める

「そうだろ!これは全てお前がやったんだ
後悔しながら死にやがれボンクラ」
犯罪者は銃をポワールタワーの玉に向け放った。

「うぉぉぉぉ犯罪者ああああ」
ヒーローは犯罪者へ飛んでいき、右ストレートで犯罪者の顔面を殴った。

「ふへへへ、お前の負けだ。ボンクラ」
犯罪者は不敵な笑みを浮かべていた
「なに」
犯罪者を睨むヒーロー
「上を見な」
ヒーローが上を見ると目の前にポワールタワーの玉があった。
「あ」
ヒーローと犯罪者はポワールタワーの玉の下敷きになり死亡した。

たまが落ちる5分前

「大丈夫だからな!心配するなよ!」
おじいちゃんはずっと語りかけてくれていた。
「うん」
僕は頷いた。

「あれは…」
おじいちゃんは玉が落ちてきていることに気づいた
「なに?」
僕が顔をあげようとした時
「見るな」
おじいちゃんは僕の頭を抑えた
「なんで?」
僕はおじいちゃんに問いかけた。
「ダメだ」
おじいちゃんはダメだ以外言わなかった。

「く、あと少しなのに」
「おじいちゃん?」
おじいちゃんの顔を見た。悔しそうだった。
「どうしたの?」
おじいちゃんは僕の顔を見て言った。
「よく聞きなさい。これが最後の言葉だ」
おじいちゃんの最後という意味がわからなかった。

「お前はつよい!何事にも挫けるな!
お前はわしらヒーロー家族の血を引いている。お前もギメラ能力者だ!」
おじいちゃんは僕を見て微笑んだ

「これが最初で最後の力だああああ」
おじいちゃんは僕を持ち上げ投げた
その時少しだがおじいちゃんが見えた
赤い目をしたおじいちゃんが

「ああああああああ」
僕は地面に転がり倒れた。

遠くから"ドン"と鈍く重い音がした。

僕は何とか起き上がり、後ろを見た
だがそこにはおじいちゃんの姿はなく
大きな玉だけがそこにあった。

「おじいちゃん…おじいちゃん!」
僕は泣いた。
大好きなおじいちゃんの死は6歳の僕には重すぎた。
おじいちゃんが言っていたギメラ能力者とは何か
その言葉は涙と共に奥底に封じ込まれた。

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