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第12章 旭日中学剣術部の恋愛事情 後編
ラブ・トレ・ミッション!先輩と後輩の距離感はゼロに近い。③ ~駆け引きランニング、心は前へ?~
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『冬季も桐生といい雰囲気になってるし、姫柊も綾野も……あいつの弟とイチャイチャしてる。』
日下部は黙って、その情景を思い浮かべる。
『俺は……たぶん、そういうの、向いてない。無口だし、目立つのは苦手。思ってることを口に出すのも、得意じゃない。』
無意識のうちに、香織の姿を目で追っていた。
無駄のない動きでストレッチをする彼女。その横顔に、言葉にならない感情が滲む。
『でも――このチャンス、綾野が渡してくれたもんなら。無駄にしたくない。』
一歩引いて、静かに想いだけが、胸の奥で波紋のように広がっていた。
「さて、津田君、まずはランニング行こうか。六十キロ、時間は四時間くらいね。」
聖奈の声は、どこまでも柔らかく、だけど迷いがなかった。
「香織ちゃんは、二十キロを一時間半で。そのあと、百メートルダッシュを十秒インターバルで二十本。大丈夫、できるでしょ?」
さらりと言い放ったそのメニューに、月華が心の中で絶句する。
(な、なんか今……平然とえげつないこと言った!?)
聖奈の表情はいつも通り。だけど、その笑顔の裏に、月華は一度味わった“鬼指導モード”の気配を感じていた。
(あの笑顔、やばい時の笑顔だ……。)
「津田君、私がペースを作るから、ついてきてね。抜かれないように。ただし、私のほうが速いから。」
「ええっ、それってけっこうヤバ……」
「抜かれたら、離された距離十メートルごとに追加一本。ちゃんと覚悟してね。」
「うすっ……!」
津田は顔を引きつらせつつも、内心では違う意味でドキドキしていた。
(うわ……聖奈先輩、今日もキレイすぎ。あの笑顔で、あんな指令出すとか……ギャップがヤバい。やっぱ俺、ちょっと好きかもしれん……。)
(いや、ちょっとどころか……もし俺がこのランニングで見直されたら……)
(『津田君、意外と頑張り屋さんなんだね』とか言われて……そのまま何かが始まっても……いや、さすがに妄想飛びすぎか!?)
でも妄想は止まらず、顔がじわじわゆるみはじめる。
「それじゃ、日下部君、香織ちゃん、準備いい? では、スタート!」
聖奈が手を叩き、ランスタートの合図を出した。
津田はトップスピードでスタートダッシュを決めた。勢いそのままに先頭を駆け抜けていく。
その後ろを、聖奈が機械のようにブレない理想フォームで追いかける。速さもリズムも、すべてが計算されているかのようだった。
一方、香織は無理のない自然なペースで走り始めていた。その少し後ろから、日下部が無言でついていく。
彼の足音は静かで、リズムは一切乱れない。
(……悪くないな。宮崎さん、速さより安定を選んだ。無駄がない。考えてる……)
日下部は、声に出すこともせず、ただその背中を見つめながら、心の中で小さく評価をつけていた。
感情を見せるのが苦手な彼だが、こうして誰かの努力を見守る時間だけは、静かに優しかった。
やがて、トラックは二周目に入った。
全力で飛ばしていた津田は、徐々に呼吸が苦しくなりはじめていた。
(し、しんど……でも、けっこう離したし……ここで一回ペース落として、また聖奈先輩が近づいてきたらスパートかければ……)
自信満々のつもりだったが、今の彼にはまだ知らないことがあった。
聖奈の“理想ペース”は、津田のギリギリより少し上――
つまり、油断すればすぐに追いつかれることを。
日下部は黙って、その情景を思い浮かべる。
『俺は……たぶん、そういうの、向いてない。無口だし、目立つのは苦手。思ってることを口に出すのも、得意じゃない。』
無意識のうちに、香織の姿を目で追っていた。
無駄のない動きでストレッチをする彼女。その横顔に、言葉にならない感情が滲む。
『でも――このチャンス、綾野が渡してくれたもんなら。無駄にしたくない。』
一歩引いて、静かに想いだけが、胸の奥で波紋のように広がっていた。
「さて、津田君、まずはランニング行こうか。六十キロ、時間は四時間くらいね。」
聖奈の声は、どこまでも柔らかく、だけど迷いがなかった。
「香織ちゃんは、二十キロを一時間半で。そのあと、百メートルダッシュを十秒インターバルで二十本。大丈夫、できるでしょ?」
さらりと言い放ったそのメニューに、月華が心の中で絶句する。
(な、なんか今……平然とえげつないこと言った!?)
聖奈の表情はいつも通り。だけど、その笑顔の裏に、月華は一度味わった“鬼指導モード”の気配を感じていた。
(あの笑顔、やばい時の笑顔だ……。)
「津田君、私がペースを作るから、ついてきてね。抜かれないように。ただし、私のほうが速いから。」
「ええっ、それってけっこうヤバ……」
「抜かれたら、離された距離十メートルごとに追加一本。ちゃんと覚悟してね。」
「うすっ……!」
津田は顔を引きつらせつつも、内心では違う意味でドキドキしていた。
(うわ……聖奈先輩、今日もキレイすぎ。あの笑顔で、あんな指令出すとか……ギャップがヤバい。やっぱ俺、ちょっと好きかもしれん……。)
(いや、ちょっとどころか……もし俺がこのランニングで見直されたら……)
(『津田君、意外と頑張り屋さんなんだね』とか言われて……そのまま何かが始まっても……いや、さすがに妄想飛びすぎか!?)
でも妄想は止まらず、顔がじわじわゆるみはじめる。
「それじゃ、日下部君、香織ちゃん、準備いい? では、スタート!」
聖奈が手を叩き、ランスタートの合図を出した。
津田はトップスピードでスタートダッシュを決めた。勢いそのままに先頭を駆け抜けていく。
その後ろを、聖奈が機械のようにブレない理想フォームで追いかける。速さもリズムも、すべてが計算されているかのようだった。
一方、香織は無理のない自然なペースで走り始めていた。その少し後ろから、日下部が無言でついていく。
彼の足音は静かで、リズムは一切乱れない。
(……悪くないな。宮崎さん、速さより安定を選んだ。無駄がない。考えてる……)
日下部は、声に出すこともせず、ただその背中を見つめながら、心の中で小さく評価をつけていた。
感情を見せるのが苦手な彼だが、こうして誰かの努力を見守る時間だけは、静かに優しかった。
やがて、トラックは二周目に入った。
全力で飛ばしていた津田は、徐々に呼吸が苦しくなりはじめていた。
(し、しんど……でも、けっこう離したし……ここで一回ペース落として、また聖奈先輩が近づいてきたらスパートかければ……)
自信満々のつもりだったが、今の彼にはまだ知らないことがあった。
聖奈の“理想ペース”は、津田のギリギリより少し上――
つまり、油断すればすぐに追いつかれることを。
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