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第12章 旭日中学剣術部の恋愛事情 後編
ラブ・トレ・ミッション!先輩と後輩の距離感はゼロに近い。⑤ ~限界ラインと、それぞれの心~
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香織は、持久走を終えて短距離ダッシュに挑んでいた。
けれど――回を重ねるごとに、足取りがどんどん重くなるのを感じていた。
(まだ……まだいける……)
息を整えようと必死に空気を吸い込むけれど、酸素がうまく身体に入ってこない。
けれど、視線を感じて振り返ると、日下部の目が静かに自分を見つめていた。
「どうした。もう限界か?」
日下部の声はぶっきらぼう。でも、ちゃんと見てくれているのが分かる。
「まだ5本目だぞ。次、来るぞ。タイム、落ちてる。」
その言葉が、香織の背中を押してくれた。
(……頑張らなきゃ。見られてるんだ、今……)
足は重いけど、気持ちで走った。6本目、7本目……そして10本目。
けれど、そのとき――限界はすぐそこまで迫っていた。
(っ……!)
視界がかすみ、脚がふらついた瞬間。
「危ないっ。」
日下部がすぐに手を伸ばして、香織の身体を支えた。
その腕は、思ったよりもずっとしっかりしていて、あたたかかった。
「綾野。宮崎がもう限界だ。止めてくれ。」
聖奈にそう告げた日下部の声を、香織はどこか遠くで聞きながら、そっと目を閉じた。
(……悔しい。でも、ちょっと……嬉しかったかも。)
その様子をモニター越しに見ていた月華は、静かにメモを取りながら、思考をまとめていた。
(これは――バテてる証拠だ。つまり宮崎さんのタイプは、持久型の“ラストアタッカー”。時間いっぱい逃げつつ、最後の一撃に賭けるタイプ。だから、僅差の相手なら競り勝てるけど、明確な実力差があると勝ち目は薄いんだ。)
観察を重ねることで、月華の“読み”は一段と深くなっていた。
(……やっぱり、試合に勝つには、ただ技を覚えるだけじゃダメなんだ。相手を見て、判断して、自分に合った戦い方を見つける。それが、宮崎さんにもある。)
ペンを走らせながら、月華の視線が鋭くなっていく。
トラックでは、聖奈が判断を下していた。
「わかったわ。宮崎さんはしっかり休ませてあげて。私たちは――このまま続けるから。」
視線の先には、限界寸前の津田の背中。
呼吸は荒れ、汗が飛び散り、足は重くなっていた。
(それでも前を向いて走る。津田君、まっすぐなところは……嫌いじゃないわよ。)
そのとき――津田の意識が急に薄れていく。
(……なんか……遠いな……)
目の前がぐらりと揺れて、足がもつれる。ふらりと倒れかけたその瞬間――
「津田君!」
聖奈が駆け寄り、倒れかけた彼をしっかりと抱きとめた。
ふわっとした柔らかな感覚に包まれて、津田の意識はもうほとんど残っていなかった。
(え……? この体勢……めっちゃ……近い……)
(あれ? 先輩の腕……なんかいい匂いして……近……うわ、これ、もしや……ラッキーパターン……!?)
(って、俺、なに考えて……でも……ちょっと、幸せかも……)
――そして、津田は幸せそうな顔のまま、静かに意識を手放した。
「しっかりして、津田君……!」
聖奈は酸素マスクを取り出し、すぐに彼の顔に当てた。
その表情は真剣で、焦りと優しさがにじんでいた。
(無理させすぎた……私、まだまだ未熟ね……)
タオルで汗を拭き、額にそっと手を当てる。
その指先には、確かな温度があった。
そんな二人の様子を、モニター越しに見ていた月華は、小さく息を吐いた。
(……先輩、めっちゃ真剣だし。本気で心配してる……)
画面の中、抱きかかえられてる津田の顔が、やけに幸せそうに見えてた。
(……ちょっと待って、その顔なに? 倒れた直後の顔じゃないでしょ。それ、絶対……勘違いしてるやつでしょ……)
ため息混じりに、ペンを止めずに思う。
(ほんと、最後の最後で“美味しいとこ”だけ持っていくとか、どんな才能よ……)
(……一応、頑張ってたのは認めるけど――減点対象だよ、その顔。)
そうぼやきながらも、月華はきちんと走行記録と体力データをメモしていた。
彼女もまた、着実に成長している途中だった。
けれど――回を重ねるごとに、足取りがどんどん重くなるのを感じていた。
(まだ……まだいける……)
息を整えようと必死に空気を吸い込むけれど、酸素がうまく身体に入ってこない。
けれど、視線を感じて振り返ると、日下部の目が静かに自分を見つめていた。
「どうした。もう限界か?」
日下部の声はぶっきらぼう。でも、ちゃんと見てくれているのが分かる。
「まだ5本目だぞ。次、来るぞ。タイム、落ちてる。」
その言葉が、香織の背中を押してくれた。
(……頑張らなきゃ。見られてるんだ、今……)
足は重いけど、気持ちで走った。6本目、7本目……そして10本目。
けれど、そのとき――限界はすぐそこまで迫っていた。
(っ……!)
視界がかすみ、脚がふらついた瞬間。
「危ないっ。」
日下部がすぐに手を伸ばして、香織の身体を支えた。
その腕は、思ったよりもずっとしっかりしていて、あたたかかった。
「綾野。宮崎がもう限界だ。止めてくれ。」
聖奈にそう告げた日下部の声を、香織はどこか遠くで聞きながら、そっと目を閉じた。
(……悔しい。でも、ちょっと……嬉しかったかも。)
その様子をモニター越しに見ていた月華は、静かにメモを取りながら、思考をまとめていた。
(これは――バテてる証拠だ。つまり宮崎さんのタイプは、持久型の“ラストアタッカー”。時間いっぱい逃げつつ、最後の一撃に賭けるタイプ。だから、僅差の相手なら競り勝てるけど、明確な実力差があると勝ち目は薄いんだ。)
観察を重ねることで、月華の“読み”は一段と深くなっていた。
(……やっぱり、試合に勝つには、ただ技を覚えるだけじゃダメなんだ。相手を見て、判断して、自分に合った戦い方を見つける。それが、宮崎さんにもある。)
ペンを走らせながら、月華の視線が鋭くなっていく。
トラックでは、聖奈が判断を下していた。
「わかったわ。宮崎さんはしっかり休ませてあげて。私たちは――このまま続けるから。」
視線の先には、限界寸前の津田の背中。
呼吸は荒れ、汗が飛び散り、足は重くなっていた。
(それでも前を向いて走る。津田君、まっすぐなところは……嫌いじゃないわよ。)
そのとき――津田の意識が急に薄れていく。
(……なんか……遠いな……)
目の前がぐらりと揺れて、足がもつれる。ふらりと倒れかけたその瞬間――
「津田君!」
聖奈が駆け寄り、倒れかけた彼をしっかりと抱きとめた。
ふわっとした柔らかな感覚に包まれて、津田の意識はもうほとんど残っていなかった。
(え……? この体勢……めっちゃ……近い……)
(あれ? 先輩の腕……なんかいい匂いして……近……うわ、これ、もしや……ラッキーパターン……!?)
(って、俺、なに考えて……でも……ちょっと、幸せかも……)
――そして、津田は幸せそうな顔のまま、静かに意識を手放した。
「しっかりして、津田君……!」
聖奈は酸素マスクを取り出し、すぐに彼の顔に当てた。
その表情は真剣で、焦りと優しさがにじんでいた。
(無理させすぎた……私、まだまだ未熟ね……)
タオルで汗を拭き、額にそっと手を当てる。
その指先には、確かな温度があった。
そんな二人の様子を、モニター越しに見ていた月華は、小さく息を吐いた。
(……先輩、めっちゃ真剣だし。本気で心配してる……)
画面の中、抱きかかえられてる津田の顔が、やけに幸せそうに見えてた。
(……ちょっと待って、その顔なに? 倒れた直後の顔じゃないでしょ。それ、絶対……勘違いしてるやつでしょ……)
ため息混じりに、ペンを止めずに思う。
(ほんと、最後の最後で“美味しいとこ”だけ持っていくとか、どんな才能よ……)
(……一応、頑張ってたのは認めるけど――減点対象だよ、その顔。)
そうぼやきながらも、月華はきちんと走行記録と体力データをメモしていた。
彼女もまた、着実に成長している途中だった。
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