××の十二星座

君影 ルナ

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一章

二十八 スコーピオ

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 ヴァーゴに教えられた客間に続く扉を叩く。叩いた後に朝早過ぎてまだ寝ているかしら? と気がついたわ。このノック音で起きてしまったのなら申し訳ないわね。

「……誰?」

 警戒心に満ち溢れた声が扉の奥から聞こえた。寝起きではなさそうで良かった……のかしら?

 でも空気が張り詰めたような気がする。このポラリス候補は相当慎重派か、疑り深い人間か。

 ふーむ、それを解く為にもこちらから自己紹介するべきかしらね?

「ワタシはスコーピオ。で、ここにいるもう一人が……」
「リーブラです! はじめまして、ポラリス候補さん!」
「……誰?」

 ワタシのこの自己紹介で聞き返されるとは思わなかったわ。だって誰もが知る十二星座のスコーピオよ? それなのに『誰?』って! 驚いちゃったじゃない!

「十二星座のリーブラです!」
「……ああ、皆のお仲間サンか。」

 数秒の間があったわね。やっぱりワタシ達の名前は知らないのかしら? 子供でも知っていることだけれども……?

「そうです、お仲間さんです!」

 リーブラのおかげでようやく話が通じたらしい。少しだけ警戒が解けた声でそう、と呟くポラリス候補。

「お話しましょ?」

 さて、ポラリス候補は部屋から出てきてくれるかしら……





 数秒が数分にも感じた。多分現実時間的にはそれ程長い時間でも無かっただろうが、そう感じてしまう程首を長くして待った。三人の間には沈黙が続く。



 カチャリ……

 ゆっくり、静かに扉が開いた。

「……ども。マロンデス。」

 閉じたような、それか途轍もなく細い目。至る所がぴょんぴょんと跳ねた短い茶髪。男にしては高く、女にしては低い声。ひょろひょろとした背格好。

 ワタシ達と同年代くらいの少年だろうことが分かったわ。

「はじめまして、マロンさん!」
「……どもデス。り、リーブラサン。」
「ワタシもはじめましてね。」
「はじめまし、て……スコーピオサン。」

 マロンはどこかたどたどしく呟く。あら、人見知りかしら?

「ま、マロン……」

 初対面でマロンにどう接していいか分からずやきもきしていると、ヴァーゴがキャンサーとジェミニを連れてここまでやって来た。

「ルグ? どうしたの?」
「あ、えと、この城ではちゃんとヴァーゴって呼んで欲しい、かな。」
「ごめん。ヴァーゴ。」
「うん。」

 あら、ヴァーゴとは普通に話せるようね。ワタシ達も少しすれば仲良く話せるかしら?

「で、ヴァーゴ、どうしたの?」
「そ、それが……」

 ヴァーゴは恐る恐る背後を向いた。
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