××の十二星座

君影 ルナ

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一章

三十一 アリーズ

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 我輩とトーラスは期限ギリギリまで捜索し、急いで城に帰ってきた。しかしやはり目的の人物は見つからなかった。

 焦燥感だけが我輩の中に積もっていくが、それを表に出さずに早足で城の中を歩く。

「アリーズちゃん、皆はもう帰ってきているかしら?」
「……さあ? 流石に我輩でも未来を見ることは出来ないからなんとも言えないかな。」
「あらそう? アリーズちゃんはいつも先々を見据えているイメージだったから分かるかと思ったわ。」

「それはちゃんと情報があった上での推察だからね。情報が一欠片も無い者に対して予測は不可能だよ。」
「そう……」

 トーラスは溜息をついて落ち込んだようだった。それを横目で見ながら我輩は言葉を続ける。

「でもトーラス。一ついいかい?」
「何かしら?」
「我輩は第六感を信じるタイプでね。なんとなく今回見つかったような気がするんだよ。」
「あら!」

 トーラスは嬉しそうに破顔する。まあ、我輩の第六感故に確信はないが。

 でもまあ、ポラリスたり得る人物(全属性持ち)が見つかったとしても、慎重に見極めなければならない。これは他の皆は苦手だろうからこそ我輩が。第六感などというものは一先ず置いておいて。

 猫を被っているならそれを剥がして、笑顔の仮面を付けているならそれも剥がして、剥がして剥がして剥がして……

 そうして残ったその人の本音、本性を見極めなければ。これは十二星座の存続、延いてはこの世界の存続に関わるのだから。

 気を引き締めて城の会議室に入る。

「二人ともお帰り~」

 会議室にいたのはカプリコーンだけだった。他はまだ帰ってきていないのだろうか。

「カプリコーンか。ならサジタリアスも帰っているね。」
「まあね。君達が最後だよ。」
「あらあら皆早いわねぇ~!」
「と言ってもスコーピオ達とキャンサー達の組も今日の朝戻ってきたところだから二人がすごく遅かったわけじゃないよ。」
「それなら良かったわ。」

「でもカプリコーン。君達は一番遠い島国に行ったはずだろう? 何故我輩らよりも早く帰って来れた?」

 最もな質問を投げかけると、カプリコーンはすんなり答えてくれた。

「ああ、それなんだけど、ポラリスになり得る可能性がある人物を見つけてね。」
「へぇ、ということは全属性持ち?」
「まだ分からない。全員集まってから鑑定しに行った方が良いかなって思ってね。」

 まだ分からない、とはどういうことだろうか。もしかして鑑定を受ける年齢よりも下の者……? 幼子でも連れてきたというのか?

 もしそうなら親御さんは連れて行くことに賛成したというのか?

「カプリコーンちゃん、まだ分からないってどういうことかしら?」
「あー、俺も詳しくは知らないけど、学校にも行っていなかったから鑑定のしようがなかったって。」
「あら……」

 明らかに訳ありであると言わんばかりな理由。やはり我輩が見極めなければ。そのポラリス候補が我輩らの敵か味方かを。
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