××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
53 / 113
一章

四十(※)

しおりを挟む
※暗いの注意
──

 それからというもの、島の人間から、母は父の被害者という位置付けの扱いを受けた。そして私はそんな風に家庭を壊した化け物と罵られた。

 どうやら私が生まれる前の父は優しく正義感のある人間だったらしく。だからこそこうなったのは私のせいである、らしい。島の人の言い分はそうだった。

 まあ、化け物であるのは本当かもしれないので反論も何も無いのだけれども。
そんな風に母は被害者として、私は化け物として周りからヒソヒソと噂される日々を送っていた。




 とある日の夜。島の人間が一人訪ねてきた。私が対応しようと玄関の扉を開けるとその人は何も言わずに無理矢理私を外へ連れ出した。

 恐怖に怯える暇もなく広場に連れて来られた私。ドサっとそこら辺に乱雑に投げられ身を打つ。

「この化け物が消えればっ……!」

 島の人達が集まってきていたらしい。あちこちから罵詈雑言を私に投げつけ、私を無理矢理連れてきた人はどこから取り出したのか斧を持ってきていた。


 ああ、ここで私は殺されるのだと察した。

 満月に照らされながら私は死を受け入れて目を閉じる。

ザクッ……




「ひっ、な、な、何故!?」

 戸惑いの声と共に肉を割く音が聞こえたのに、全く痛みを感じない。おかしいとフッと目を開けると……

「母さんっ!」

 目で見えているもの全てが遅く見える。そんな錯覚に陥る程、私の頭はおかしくなってしまったようだ。

 斧で斬られていたのは母だった。そう、私を庇ったのだ。

「生き、て……マロン……」

 それが母の最期の言葉となった。その後すぐ力が抜けたように母が崩れ落ちる。母から吹き出る血が、母の背後にある月と被って見える。そして周りでこの惨劇をただ見ているだけの群衆……

 それら全てがゆっくりハッキリと網膜に焼き付いた。
しおりを挟む

処理中です...