××の十二星座

君影 ルナ

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一章

四十七 アリーズ

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「まあいいや。」
「ぶへっ」

 マロンの右目をもう少し眺めていたいとも思った。しかしマロンの怯えようが酷かったので掴んでいたマロンの顎をペイっと放り、マロンが元々座っていた席の隣に座る。

「ほらマロン、早く座って。」

 マロンは我輩を警戒していたが、勉強しなければという気持ちの方が大きかったのだろう。おずおずと先程まで座っていた席に着いた。

 サジタリアス、マロン、我輩と並び座り、我輩はずいとマロンが書き写しているノートを眺める。

「ふーん……」

 ここから色々なことを頭に叩き込むとなると、なかなか時間が掛かりそうだ。しかし……

 勉強もそうだが武術も何か習得させておかなければ。後はあれと、あれとあれと……

「マロン、集中力が切れたら違うことをしようか。」
「な、何……?」

 我輩はマロンに相当怖がられているらしい。まあ、あんな初対面を果たしたのだから仕方がないのだろうけど。

「マロンには勉強だけでなく、武術かなにかを習得してもらう。だから集中力が切れたらそっちに移ろう。」
「アリーズ、それもお前の考えのうちなのか?」
「勿論。」

 今のところ一番ポラリスに近しい人物はマロンだ。十二星座の皆が好意的である面、そして身体能力の面においては。十二星座の三人を一撃で沈める程だからね。

 ただ、マロンがポラリスになるために圧倒的に足りないものがある。そう、水属性魔法だ。それがありさえすれば、マロンはポラリス候補筆頭となれたのに。

 我輩はまだマロンを認めてはいないが、悪いやつではないことは分かる。だからマロンがポラリスになっても悪くはないと思えるのだ。はてさてどうにかならないものか……






「ふぅ……」

 あれから数時間。休憩もなくみっちりと集中し続けてマロンの脳は疲弊しているのだろう。机にグッタリと伏せ、うー……だとかなんとか唸っている。

「じゃあマロンの集中力も切れたようだから、街に出ようか。」
「街!」

 ぴょこんと頭を上げて反応するマロン。どこか嬉しそうだ。

 ただし勿論、街に行くのにも目的はある。我輩ら御用達の武器屋に寄ることだ。そこでマロンに合う武器を見つけることが目的。まあ、もしかしたらヴァーゴのように素手で、ということもあるだろうが。選択肢は多い方が良い。

「自分は面倒く……疲れたから部屋に戻」
「サジタリアスもおいでよ。ね?」

 面倒くさいだなんてまたまたぁ……。サジタリアスは引きずってでも連れて行くよ。属性持ちの意見も聞きたいからね。ああ、そうそう。サジタリアスは火属性持ちだよ。あれ、前に言ったっけ?



 色々な思惑を胸の奥に秘めながらニッコリと笑ったつもりが、どうやら怖い笑みに映ったらしく。サジタリアスもマロンも我輩から物理的に距離をとった。酷いなぁ。
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