××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
100 / 113
一章

八十七

しおりを挟む
「さあて、ちょっと動いたらお腹空いたんじゃない? どこかに食べに行こうよ。」

 気を取り直して、と手を叩き場の空気を変えたのはカプリコーンだった。

「そうしましょ。で、何かリクエストはあるかしら?」

「あたくし、ここの近くに新しく出来たカフェに行ってみたいわ!」

「それいいね!」

 ポンポンと会話は弾む。私は街に出たのも初めてだからね、お任せしようと思って口を噤んでおくことにした。

 アクエリアスが提案したその……かふぇ? とか言うところに行くことが決まったらしい。三人はゾロゾロと店を出ようとした。

「ま、待ってください!」

 それを引き止めたのはこの薬草店のおじいさん──先ほど脅されそうになっていた、あの──だった。

「先ほどは助けていただいてありがとうございました。わずかばかりですが、何かお礼を……」

 腰を90度になるほど曲げ、何度もありがとうありがとうと告げる。それを見た三人はフッと笑って言葉を紡ぐ。

「ああ、それは気にしないでくださいな。国民を助けるのも俺達の仕事ですから。」

「え……?」

「そうよ。あたくし達は当たり前のことをしたのだから、あなたは気にしないでくださいまし。」

「そうよー。……でもそうね。じゃあ、一つだけ。また来た時、ワタシの話し相手にでもなってくれないかしら?」

「そ、そんなことはいくらでも……!」

「ありがとう。じゃあ、今後ともよろしくお願いしますわ」

 スコーピオがそう提案し、双方納得してから──おじいさん方はそんなものでいいのか?と少し不満そうだったが──私達はお店を後にする。

「スコーピオが出したお礼、あれって何か意味が含まれていたりするの?」

 お店が見えなくなった頃、私はそう聞いてみた。

「そうねぇ、国民の生の声を聞きだす場所、っていうのはいくらあってもいいのではないかって思うのよ。だから、かしらん?」

「へえ……なるほどね……」

 ステラというこの国の問題、それをじかに聞くことでよりよい国を作っていく。そんな堅い志を垣間見た気がする。

 やはりこの人たちはこの世界のトップ、十二星座なのだな。そう改めて実感したのだった。
しおりを挟む

処理中です...