ほたるいはシスイを照らす光となり得るか

君影 ルナ

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一章 五月の日常

1

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 リリリリリ……

 目覚ましの音が部屋に鳴る。カーテンの隙間から光なんて入らない時間に鳴らされたそれを、私は二度寝をしないように体を起こして止める。

 眠い。その一言に尽きる。何度も出る欠伸を嚙み殺しながら目を擦るが、それでも尚眠気は私を二度寝へと誘う。そんな中、半分眠りながらも部屋の電気を付けると、その明かりのおかげで少しだけ頭が覚醒したような気もした。

 駄目だ、早く完璧に覚醒しなければ。昨日残した仕事がまだたくさんある。本当なら眠らずにこなすべきだとは思うが、以前それをやり続けたら倒れてしまった。

 そのせいでその後数日眠り続けていただなんてこともあり、それからはちゃんと睡眠も取っている。その方が効率がいいと知ったから。

 何故私に人間のような機能が付いているのかは理解出来ないが、まあ、そう出来ているのだからと言われて仕舞えば仕方ない。

「仕事……」

 ああ、こうグダグタ考えている暇があるのなら、父から任された仕事を一つでもこなさなければ。登校時間に間に合わなくなる。

 部屋の中に併設された洗面所で顔を洗い、双葉高校の制服──白いブレザーに緑色のリボン、黒のプリーツスカート──に着替え、腰の辺りまで伸びた水色の髪は取り敢えず適当に一つに括る。よし、準備完了。

 私は一度背伸びをし、部屋の中に備え付けられた執務机に向かう。そこに乗り切らない程積まれた書類の山にウンザリしながら、私は作業に取り掛かる。








「お、終わったぁ……」

 ただ今の時刻、午前七時。あれから三時間経っていたらしい。ようやく全ての仕事を終わらせた私は達成感に包まれる。が、これから学校なのだ。疲れてもいられない。

「よし、あの方法を……」

 最近好んでいるストレス発散方法を実践することにした。椅子に深く座り、目を閉じる。数秒そのままジッとしていれば、

ジワ……

ジワジワ……

 目が熱くなり、水分が滲み出る。最近好むストレス発散方法とは、所謂涙活とかいうやつである。感動する映画などが無くとも涙を出し止め出来るようになってからは、ずっとこの方法を使っていた。

 涙を出すなんて簡単。それでストレスが取れるなら御の字ではないか。そんな風に考えながら涙を出し続ける。

 それは頬を伝い、顎から落ちる瞬間に姿を変えた。


ポゥ……


 それは蛍のような淡い灯りとなり、床に落ちることなく部屋を浮遊する。涙の数だけ頬から落ちた灯りはフワフワと浮かぶ。






 はて、いつからだったろうか。涙が光に変わるようになったのは。


 はて、いつからだったろうか。その光が二、三日消えなくなったのは。


 はて、これは一体何者なのだろうか。
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