2 / 36
一章 五月の日常
1
しおりを挟む
リリリリリ……
目覚ましの音が部屋に鳴る。カーテンの隙間から光なんて入らない時間に鳴らされたそれを、私は二度寝をしないように体を起こして止める。
眠い。その一言に尽きる。何度も出る欠伸を嚙み殺しながら目を擦るが、それでも尚眠気は私を二度寝へと誘う。そんな中、半分眠りながらも部屋の電気を付けると、その明かりのおかげで少しだけ頭が覚醒したような気もした。
駄目だ、早く完璧に覚醒しなければ。昨日残した仕事がまだたくさんある。本当なら眠らずにこなすべきだとは思うが、以前それをやり続けたら倒れてしまった。
そのせいでその後数日眠り続けていただなんてこともあり、それからはちゃんと睡眠も取っている。その方が効率がいいと知ったから。
何故私に人間のような機能が付いているのかは理解出来ないが、まあ、そう出来ているのだからと言われて仕舞えば仕方ない。
「仕事……」
ああ、こうグダグタ考えている暇があるのなら、父から任された仕事を一つでもこなさなければ。登校時間に間に合わなくなる。
部屋の中に併設された洗面所で顔を洗い、双葉高校の制服──白いブレザーに緑色のリボン、黒のプリーツスカート──に着替え、腰の辺りまで伸びた水色の髪は取り敢えず適当に一つに括る。よし、準備完了。
私は一度背伸びをし、部屋の中に備え付けられた執務机に向かう。そこに乗り切らない程積まれた書類の山にウンザリしながら、私は作業に取り掛かる。
「お、終わったぁ……」
ただ今の時刻、午前七時。あれから三時間経っていたらしい。ようやく全ての仕事を終わらせた私は達成感に包まれる。が、これから学校なのだ。疲れてもいられない。
「よし、あの方法を……」
最近好んでいるストレス発散方法を実践することにした。椅子に深く座り、目を閉じる。数秒そのままジッとしていれば、
ジワ……
ジワジワ……
目が熱くなり、水分が滲み出る。最近好むストレス発散方法とは、所謂涙活とかいうやつである。感動する映画などが無くとも涙を出し止め出来るようになってからは、ずっとこの方法を使っていた。
涙を出すなんて簡単。それでストレスが取れるなら御の字ではないか。そんな風に考えながら涙を出し続ける。
それは頬を伝い、顎から落ちる瞬間に姿を変えた。
ポゥ……
それは蛍のような淡い灯りとなり、床に落ちることなく部屋を浮遊する。涙の数だけ頬から落ちた灯りはフワフワと浮かぶ。
はて、いつからだったろうか。涙が光に変わるようになったのは。
はて、いつからだったろうか。その光が二、三日消えなくなったのは。
はて、これは一体何者なのだろうか。
目覚ましの音が部屋に鳴る。カーテンの隙間から光なんて入らない時間に鳴らされたそれを、私は二度寝をしないように体を起こして止める。
眠い。その一言に尽きる。何度も出る欠伸を嚙み殺しながら目を擦るが、それでも尚眠気は私を二度寝へと誘う。そんな中、半分眠りながらも部屋の電気を付けると、その明かりのおかげで少しだけ頭が覚醒したような気もした。
駄目だ、早く完璧に覚醒しなければ。昨日残した仕事がまだたくさんある。本当なら眠らずにこなすべきだとは思うが、以前それをやり続けたら倒れてしまった。
そのせいでその後数日眠り続けていただなんてこともあり、それからはちゃんと睡眠も取っている。その方が効率がいいと知ったから。
何故私に人間のような機能が付いているのかは理解出来ないが、まあ、そう出来ているのだからと言われて仕舞えば仕方ない。
「仕事……」
ああ、こうグダグタ考えている暇があるのなら、父から任された仕事を一つでもこなさなければ。登校時間に間に合わなくなる。
部屋の中に併設された洗面所で顔を洗い、双葉高校の制服──白いブレザーに緑色のリボン、黒のプリーツスカート──に着替え、腰の辺りまで伸びた水色の髪は取り敢えず適当に一つに括る。よし、準備完了。
私は一度背伸びをし、部屋の中に備え付けられた執務机に向かう。そこに乗り切らない程積まれた書類の山にウンザリしながら、私は作業に取り掛かる。
「お、終わったぁ……」
ただ今の時刻、午前七時。あれから三時間経っていたらしい。ようやく全ての仕事を終わらせた私は達成感に包まれる。が、これから学校なのだ。疲れてもいられない。
「よし、あの方法を……」
最近好んでいるストレス発散方法を実践することにした。椅子に深く座り、目を閉じる。数秒そのままジッとしていれば、
ジワ……
ジワジワ……
目が熱くなり、水分が滲み出る。最近好むストレス発散方法とは、所謂涙活とかいうやつである。感動する映画などが無くとも涙を出し止め出来るようになってからは、ずっとこの方法を使っていた。
涙を出すなんて簡単。それでストレスが取れるなら御の字ではないか。そんな風に考えながら涙を出し続ける。
それは頬を伝い、顎から落ちる瞬間に姿を変えた。
ポゥ……
それは蛍のような淡い灯りとなり、床に落ちることなく部屋を浮遊する。涙の数だけ頬から落ちた灯りはフワフワと浮かぶ。
はて、いつからだったろうか。涙が光に変わるようになったのは。
はて、いつからだったろうか。その光が二、三日消えなくなったのは。
はて、これは一体何者なのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる