15 / 36
二章 六月のほたるい
14
しおりを挟む
シスイside
あまりの雨の強さに、停電してしまったらしい。一瞬で暗くなった室内。外を振り返り見ると、辺り一帯が暗闇に包まれているのが一瞬で確認出来た。
「皆さん大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかな」
「僕も~」
紅蓮さんと緑さんからは返事が戻ってきた。が、もう一人、珈夜さんの声は聞こえない。ああ、いけない。珈夜さんは暗い所が駄目なんです。何故いち早く気がつかなかったのだろう、と一瞬悔やみ、行動を起こす。
この間の思考は暗くなってから五秒くらいの出来事である。
「紅蓮さん、緑さん、明かりは手元にありますか?」
手探りで珈夜さんの元へ移動しながら口は動かす。二人の手元に明かりがあれば付けてもらう。無ければ……
「あ、無いな。携帯は鞄の中だ。」
「僕も~」
もちろん私も無い。持ち歩くことも無かったから。
二人の光源の在りかである鞄は部屋の隅に置かれている。そこに移動するまでに二人が怪我をしてはいけない。さてどうするべきか。
と、頭をフル回転させている間に珈夜さんの背中らしきものが手に当たり、私はそれをさする。ああ、すごく冷たくなっている。それに震えが酷い。
「……分かりました。珈夜さん、ほんの少し待ってください。」
私はなんの躊躇いもなく涙を流すことにした。普通じゃないと怖がられるのでは、という思考はこの時一切なかった。
ジワリと滲んで頬を伝い、顎から水分が重力に従って落ちると、ちゃんといつも通り光へと変化する。フヨフヨと浮かぶそれを珈夜さんの前に集めると、ほんの少しだけ震えが小さくなった。
いつもより三割増しで勢いよく涙を流し続けると、二分後にはもう二人、紅蓮さんと緑さんの顔も見えるまで明るくなった。
「珈夜さん、どうですか? まだ明るいとは言えませんが、少しマシにはなりませんか?」
「っ……、」
ゆっくり、ゆっくり首を縦に振る珈夜さん。だんだん震えも小さくなっていき、呼吸も穏やかになりつつあった。もちろん、この間もずっと涙は流しっぱなしだ。
「大丈夫、大丈夫、私がいますから。」
珈夜さんは一度、私と一緒に誘拐されたことがある。その時から珈夜さんは暗い場所が駄目なのだ。
それを知っているからこそ、生徒会の仕事もほどほどにして明るい時間に帰って良いといつも言っているのに……素直に聞き入れてくれはしない。いつも大丈夫だと言って無理をする。
「もう少し涙出していた方が良いですかね。」
今は珈夜さんの恐怖を少しでも減らすのが先決だ、と私は他には何も考えずにそう言った。
この光景を目の当たりにして、息を飲んでいた人がいたなんて知らずに。
あまりの雨の強さに、停電してしまったらしい。一瞬で暗くなった室内。外を振り返り見ると、辺り一帯が暗闇に包まれているのが一瞬で確認出来た。
「皆さん大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかな」
「僕も~」
紅蓮さんと緑さんからは返事が戻ってきた。が、もう一人、珈夜さんの声は聞こえない。ああ、いけない。珈夜さんは暗い所が駄目なんです。何故いち早く気がつかなかったのだろう、と一瞬悔やみ、行動を起こす。
この間の思考は暗くなってから五秒くらいの出来事である。
「紅蓮さん、緑さん、明かりは手元にありますか?」
手探りで珈夜さんの元へ移動しながら口は動かす。二人の手元に明かりがあれば付けてもらう。無ければ……
「あ、無いな。携帯は鞄の中だ。」
「僕も~」
もちろん私も無い。持ち歩くことも無かったから。
二人の光源の在りかである鞄は部屋の隅に置かれている。そこに移動するまでに二人が怪我をしてはいけない。さてどうするべきか。
と、頭をフル回転させている間に珈夜さんの背中らしきものが手に当たり、私はそれをさする。ああ、すごく冷たくなっている。それに震えが酷い。
「……分かりました。珈夜さん、ほんの少し待ってください。」
私はなんの躊躇いもなく涙を流すことにした。普通じゃないと怖がられるのでは、という思考はこの時一切なかった。
ジワリと滲んで頬を伝い、顎から水分が重力に従って落ちると、ちゃんといつも通り光へと変化する。フヨフヨと浮かぶそれを珈夜さんの前に集めると、ほんの少しだけ震えが小さくなった。
いつもより三割増しで勢いよく涙を流し続けると、二分後にはもう二人、紅蓮さんと緑さんの顔も見えるまで明るくなった。
「珈夜さん、どうですか? まだ明るいとは言えませんが、少しマシにはなりませんか?」
「っ……、」
ゆっくり、ゆっくり首を縦に振る珈夜さん。だんだん震えも小さくなっていき、呼吸も穏やかになりつつあった。もちろん、この間もずっと涙は流しっぱなしだ。
「大丈夫、大丈夫、私がいますから。」
珈夜さんは一度、私と一緒に誘拐されたことがある。その時から珈夜さんは暗い場所が駄目なのだ。
それを知っているからこそ、生徒会の仕事もほどほどにして明るい時間に帰って良いといつも言っているのに……素直に聞き入れてくれはしない。いつも大丈夫だと言って無理をする。
「もう少し涙出していた方が良いですかね。」
今は珈夜さんの恐怖を少しでも減らすのが先決だ、と私は他には何も考えずにそう言った。
この光景を目の当たりにして、息を飲んでいた人がいたなんて知らずに。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
6年前の私へ~その6年は無駄になる~
夏見颯一
恋愛
モルディス侯爵家に嫁いだウィニアは帰ってこない夫・フォレートを待っていた。6年も経ってからようやく帰ってきたフォレートは、妻と子供を連れていた。
テンプレものです。テンプレから脱却はしておりません。
許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。
それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。
※全3話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる