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幼児編

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「さて、そういうことで。最低限この呪文は覚えてくださいね?」
「うっ……はーい。」

 ユアはここまでやってくれたんじゃ。ちゃんとワシも頑張らないと……。パラパラと教科書を開くと先程見せてくれたライト魔法にも線が引かれていたようだ。

「ええと……さっきユアが使ってたライト魔法の呪文は……」

『我は己が魔力を使いライトを付け給う者なり。然れば光の精霊様の御力を我に貸し給え。生麦生米生卵。ぽん!』

「長っ!?」

 無理じゃ! 無理じゃ! (大事なことなので二回言う!)

「ライト魔法など(無詠唱で)ポンっと付ければ良かろう!何故かのようなめんどくさい手順を踏まねばならぬのじゃ!」
「……へ? レタアお嬢様、どういうことですか?」
「あっ、」

 ユアのその声に我に返った。やっばいのじゃ。ここにユアがいることをすっかり忘れて叫んでしまった。

「レタアお嬢様……?」
「い、いいいい今のなし!」

「お嬢様? 私に何か隠していらっしゃるのでは? 私、レタアお嬢様にずっと仕える者としてお嬢様のことは何でも知っておきたいのですが……?」

 うわおぉぉぁぁあ! どうするどうする!? どう誤魔化せば良いのじゃ!?

 き、記憶を消す魔法……は無いし……逃げ出すのにちょうどいい魔法……も思いつかんのぅ……

 ダラダラと冷や汗が滝のように流れ落ちる。……よ、よし、ならばあの方法を……!

「………………てへぺろ?」

 両手を頬に当てて今の自分に出来る最高の笑顔をつけ、可愛子ぶりっ子を演出して話題を逸らし……

「そんな可愛い仕草をしても無駄です。あ、でももう一度それやってください。写真に収めますので。」

 さっとどこから取り出したか分からないがカメラを構えてこちらをじっと見つめるユア。

「もう一度やったらさっきの見逃しては……」
「それは無理ですね。ほら、もう一度、さんはい!」
「……てへぺろ(棒)。」

 今度は死んだ目になってしまったような気がするが、そんなことはどうでもいい。このピンチをどう切り抜けるか、が重要じゃ。

「うーん、死んだ目でもレタアお嬢様は可愛いんですね! さすが我が主!」
「あ、はは……」
「さて、教えて頂けませんか?」

「嫌なのじゃ! だってユアにはずっとそばにいて欲しいのじゃから!」
「聞いたら私がレタアお嬢様から離れる、ですか?」
「そうじゃ!」

 皆が皆ワシの魔法の才能に恐れおののき、皆が皆離れていった。ユアにそんな態度を取られたらワシ、ワシ……

 ああ、泣いてしまいそうじゃ。

「あり得ませんね。私の主はレタアお嬢様だけですから!」
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