生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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隠し扉

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sideリラ

ルディと少し離れたところから男を監視していると、男は周りを気にし始めた。


見られたらまずいってことは遠目の私からでもよく分かる。


確信した。


あの男は絶対に薬を買う。


けど……


「あれ?廃墟に入って言った。」


まさかあの廃墟で薬を渡してるの?


「俺らもこっそり行ってみるか。」


見えない所に行かれたらそうするしかないよね。


少し怖いけどルディがいれば安心だ。

「うん。」


私はルディに手を引かれるまま進んだ。

ルディすごい!

足が本当に速い!!

そして静か!!


ルディの足の速さに感動していたらいつの間にか私は建物に入っていた。

この廃墟は今にも崩れそう。


中はボロボロでとても誰かが使っているとは思えない。


昔はバーか何かだったのかな?

カウンター席があって、テーブルもある。


「うわぁ…ネズミだってこんなとこ住みたくないだろうな。」


ルディもかなりここは嫌いみたい。


まぁ、好きな人なんていないだろうけど。


「そうだね。それよりどこに行ったのかな?」


見た感じ二階はない。


それなのに男の姿が見当たらない。


「まさか尾行に気付いてうまく逃げたのか??」

あの男は人間だった。

さすがにあの距離のわたしたちを察知する能力なんてないはず。


「それはないと思うよ。…クロウ先生、あの男がどこにいるか分かりますか?」


地図を持ってるのはクロウ先生だから本人に聞いた方が早い。


「………同じ建物にいるはずだ。」


え??


私とルディは顔を見合わせた。


「………俺らの目が腐ってる??」


「…のかな??」


私とルディは大混乱。


「そこにいないのか?」


私とルディはもう一度この廃墟の店を見渡した。


「いない。」
「いません。」


気味が悪い。


「もう一回よく探そうよ。どこかに隠れてるかも…」


なんて言ってみたはいいものの、隠れる場所なんてない。


「んー………。あ。」


ルディは何かを思いついたみたい。


「同じ場所にいて姿は見えない……なら。」


ルディがいきなり床に耳を当てた。


「え!?ルディ!?なに??」


私はルディの奇行に驚くばかり。


「ここにいないなら…」


ルディは耳を澄ましているように見える。


私はその仕草を見てようやく気がついた。


同じ場所にいて姿は見えない。


忽然と消えてしまうことなんてありえない。


つまり……


あの男は下にいる!!


「リラ、本当小さいけど足音が聞こえる。多分地下に繋がるドアとかがあるはずだから探すの手伝って!」


ルディが足音が聞こえると言っているんだから間違いない!

「分かった!任せて!」


今の今まで私は足手まといだった。


隠し扉を見つけるくらいの手柄は上げないと!


私は四つん這いになってドアを探し始めた。


絶対どこかにある。


ちゃんと見つけなきゃ……。


みんなの役に立たないと。


いつまでも足手まといじゃ絶対にダメ。


「ん?」

ルディがいきなり顔を上げた。


「……誰か来る。」


は!?

誰か来る!?


「ルディ、リラと隠れるんだ。今すぐ、急げ。」


ピアスからクロウ先生の声がした。


私とルディはすぐに顔を見合わせる。


「リラ、ちょっとごめん!」
「!!!?」


ルディはいきなり私を抱き上げた。


毎回思うけどルディは本当に力持ちだ。


私を抱き上げてから走って窓から出たルディ。


それなのに息が一つも切れてない。

どんな体力の持ち主なの?


さすがは狼。


狼といえばナイト元気かな?


………ナイトに会いたいなぁ。


「リラ、かなり乱暴に抱き上げちゃったけど怪我してない??」


ルディはきっといい旦那さんになる。

私は確信したよ。

絶対にいいお嫁さん見つけてね!!


「うん、ありがとう。」


私が笑顔で答えたら、ルディが固まって後ろにバタッと倒れた。


「………。」
「え??ルディ?大丈夫!?」


混乱していると…


「はっ!!!気絶してた!!!」


ルディはいきなり起き上がった。


「大丈夫なの???」


そんなにいきなり気絶するもの??

「いやぁ…びっくりした。リラ、キラースマイルちょっと封印してて!俺が無能になるから!」


キラースマイル??


「……う、うん?」


私そんなのしたっけ??


「よし、気を取り直して…ここからなら中の様子が見える。リラ、そっち側からこっそり見つからないように中覗いて。」


ルディの言う通りにしよう。


「分かった。」


ルディと私は同じ窓から店の中を覗き込んだ。

ルディが右側から、私は左側から覗く。


すると、そんな私たちに気づく事なく新たな客が入ってきた。


見たことのない男の人。

年は30代かな?

その男はカウンターの中へ行く。


そしてしゃがんでから姿が見えなくなった。



「あー、なるほどね。」


ルディが私に言ってきた。


流石にこれは分かったよ。



「あそこが入り口みたいだね。」


「あぁ、入口さえわかればこっちのもんだな。サクッと突入して中の様子も確認しようか。」


ルディの意見に賛成しようとしたら…


「待て。」


クロウ先生の静止がかかった。


「中がどうなっているかもわからないのに2人で突入は危険すぎる。とりあえず場所と入り口がわかったのならそれでいい。今すぐにこっちに戻ってきてくれ。」


クロウ先生に言われたのなら仕方ない。


「ま、それもそうだね。….リラ、戻ろっか?」


少しもやっとはするけど、ここで焦って失敗するよりはマシだよね。


「うん、とりあえずまたみんなで作戦を考えよう。」


今度は尾行なんてまどろっこしいものじゃなくて、大胆な突入作戦をね。
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