生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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リラの決断

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sideリラ

「これが僕の策だよ。…リラはどう思う?」


ライアスは私に一緒に来いと強制はしない。


しようと思えばできるはずなのに。


そこがまた狡い。


「…そうだね……うん。」


私が判断していいものなの?


私は困り果てて、チーム☆ゴーストを見た。


「みんなはどう思う?」


事が大きすぎていまいちイメージもできない。


「えーっと……どうだろ…ルディ、あんたはどう思ってるの?」


困ったダリアちゃんはルディに聞いた。


「え!?俺に聞く!?……ラルフはどう思ってんの??」


ルディはラルフに聞く。


「言っておくが、最終決定はリラがしてくれよ?あくまでこれは俺の意見だ。」


ラルフははっきりと前置きをした。


「俺は、行った方がいいと思う。」


そしてはっきりと答えてこう続けた。

「相手は得体の知れない魔女。正直、助けは1人でも多くほしい。ことがうまく行かなくても、その2人がいれば死人は出ないだろう。何なら俺らもついて行くから、リラは命の心配はしなくていい。」


え!?もし行くことになればラルフ達もついてくるの!?


「ダメだよ!着いてきたら!」


どんなに怖いところか分かってない。


「ダメじゃない!私たちチーム☆ゴーストなんだよ!死ぬ時はみんなで死ぬの!」


ダリアちゃんがとんでもない事を言い出した。


「リラ!安心して!俺はリラのためなら喜んで死ぬから!」


ごめん、ルディ。


「何も安心できない……」



むしろ不安しかない。


「死なないって言ってるだろうが。まぁ、何にしてもリラが行くなら漏れなく俺たちが着いて行く。俺たちだけ置いて行くつもりなら、今から俺がここで変身して騒いで暴れて壁にいくつも穴を開ける。」


ラルフがふざけているとは思えない。



けど、明らかに言動がおかしい。


いつもならこんなこと言わないのに。


「もちろん、君たちも連れて行くよ。いざと言う時のために切り札は必要だからね。」


ライアスの一言で、ラルフが大暴れせずに済むと分かった。


今回はみんなで一緒に行くってことか…。

どうしてだろう。


いきなり心強くなってきた。


だから私は大胆な選択をすることにした。


「行こうかな。」


みんながいるなら怖くないし、それこそ死人は出ないはず。

お互い守りあえばいいんだから。


「みんながいるなら怖くない。それに………私だってきっと何かできる。私はもうただの人間じゃないから。」



圧倒的に身体能力が上がった。


自分の身を今度こそちゃんと守れる。


「そうだね。だけど無茶はしないで。リラは確かに強くなったけど、それはあくまでも人間よりも強くなっただけ。その辺のヴァンパイアと真っ向からやり合ったらリラは負けるよ。」



強くなったと言っても体の強度だけ。


私自身は何も変わってない。



「だから僕はもう一つ提案があるんだよね。」



もう一つ提案?


まだあるの?



「これから3日間、全員で強化合宿とかどう?」



全員で……


「「「「「強化合宿!?」」」」」



ライアスの口はびっくり箱だ。


何が飛び出すか予想もつかない。



「それは俺も参加なのか?」



ルシアス様は嫌なのかな?



ちょっと楽しそうだと思うのは私だけ?


「もちろん、絶対参加だよ。むしろ僕らが主体になってやらないと。僕らはわりと強い方だからね?」



ん?わりと?


かなり強いの間違いだよね?



「リラにも身を守る術を教えられるし、僕らも互いの力量を知るいい機会だと思うんだよね。」



「でも場所はどうする?お前の家の庭でやるのか?庭なくなるぞ。」


「10才の時行った島を覚えてる?」


「ダメだ、リラが死ぬ。」


「王宮に行くなら、リラはあの島の住人から逃げられるか、倒せるかくらいの実力はつけてほしい。」


「無理だ、危険すぎる。怪我させたくない。」


ライアスとルシアス様は何の話をしているんだろう。


「怪我はさせないよ、そこは僕らがカバーすればいい。」


「カバー……。」


ルシアス様はかなり悩んでいる様子。


「着いていけてない、ちゃんと教えてくれないか?」



クロウ先生が痺れを切らしてライアスに聞いた。



「あぁ、ごめんね。その強化合宿だけど、ここからずっと南にある無人島でやろうかと思ってるんだよ。
そこの島の住人がかなりすごくてね。
修行には持ってこいの場所なんだよ。」



かなりすごい住人って何?


気になりすぎる。


「すごいってどうすごいんだ??」


ルディ、聞いてくれてありがとう!


私もそれ聞きたかったの!



「凶暴、獰猛、俊敏、巨大、ってとこかな。」


ん??



「今凶暴って言った?」


ルディは聞き間違えたのかと思ったらしい。


「言ったよ。」


私もそんな気がするから聞いてみよう。


「えっと……獰猛、とかも言った?」


上を向いてライアスに聞いたら、ライアスはクスクス笑いながら私の頬を撫でる。


「言ったよ。」


くすぐったくて私も少し笑ってしまった。


「俊敏って言ったか?」


ラルフも気になった事をライアスに聞いた。


「うん、言った。」


ダリアちゃんも笑顔を引き攣らせて聞く。


「巨大、とか言ってましたよね?」


そんなダリアちゃんに優しく笑いかけたライアスは…


「うん、言ったよ。」



容赦なく答えた。


「それから、客人嫌いだな。俺はあそこに行って片腕失くしかけた。」


ルシアス様の一言が私たちの恐怖をさらに煽った。
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