生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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囚人の条件

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sideライアス


さて、何から聞こうか。


「あの女との馴れ初めでも聞こうかな。」


ずいぶん昔の話にはなるだろうけど。


「汚らわしい、口に出したくもない。」


これは結構難航するかな?



「自分と寝た女を汚らわしいだなんて、随分とお優しいんだね。」


タランテラ、あの女はカルロスに裏切られたみたいなこと言ってたからね。


男と女で揉め事と言えばこれしかない。


「一度くらいは本気で愛したんじゃないの?」


愚かにも、カルロスはまだ若かったから。


「は?愛した?あのイカれ女を?趣味悪すぎるだろ。」


ルシアスは変なとこで突っかかってくるんだね。


「元はイカれてなくて可愛らしい女性だったかも。…その真意を知ってるのは奇しくもこの牢の中にいる男だけ。」


だからさっさと話してほしいね。


「イカれ女か……ハハ、そうだな、あの女はイカれてる。」


この男がイカれてると言うくらいだ。


余程ぶっ飛んでいるとしか考えられない。


まぁ、実際そうだけど。


「だがお前らに話す気はない。そうだな…義理の娘になら話しやすいからいろいろ話せるかもしれないな。」


義理の娘……


「黙れ。」



リラのことを言っている。


まさか自分の立場も弁えずリラを引き合いに出すなんて。



この男がリラのことを考えたと思うだけで腹立たしい。


僕の感情を読み取ったのか、カルロスが勝気に笑った。



「いいや、黙らない。あの小娘になら話してやってもいい。どうせ話すならお前たちのようなむさ苦しいのより、可憐な花を見ていたいからな。」



「可憐な花がどうかは疑問だな。」



ルシアスはそう言って牢のギリギリまで近づいた。



「俺の女だぞ?可憐なだけでおさまるかよ。」



俺の女だって。

本当に、虫唾が走る。


「ほう?軟弱そうに見えたが?」


軟弱だって?リラが?



「あの子は意外と肝が据わってるよ。」


ナメてかかると痛い目を見る。


「そんな事よりライアス、このままでいいのか?想い続けるだけでは女は手に入らんぞ。欲しいなら奪え、物も人も関係ない。俺はそう教えたはずだが?」



たしかに、小さい時に言われたことがあった。



「そう言う物騒な考えが女選びの失敗に繋がったんだね。よく覚えておくよ。」


僕が皮肉を言えばカルロスは僕を鼻で笑った。


「この俺があのイカれた女を選んだだと?笑わせるな、あの女が猫のように擦り寄ってきたから相手をしたまで。」



全く、何が本当なのかさっぱりわからないね。


「相手をしたのが間違いだ、今では復讐に狂った不死身の女になっちまった。可哀想にな、俺ならそんなヘマはしない。」


ルシアスは本当に楽しそうな顔をする。


実際楽しいんだろうね。


分からないでもないよ。


僕だって嫌いな奴を追い詰めるのは好きだから。


「ヘマも何も不死身になったのはあの女が勝手に決めたことだ。それを俺のせいにされては困る。」


責任感がないと言うか、放漫と言うか。


僕はこれと血が繋がっているのか。


僕の最大の汚点だね。


「とにかくお前の妻を連れてこい。話はそれからだ。」


迂闊にこの牢から出すこともできない。


そもそもここに入れられただけでも奇跡のようなものなのに、わざわざこの牢を開けてリスクを背負うのは馬鹿のすることだ。



「そうだね、検討してみるよ。」

「おい!お前何勝手なこと言ってんだ!」



ルシアスは本当に怒りっぽくて困るよ。


「だって、お互い引かないなら一旦離れたほうがいいでしょ?僕はこんな陰気くさいところに長くはいたくない。」



時間の無駄でもあるしね。


「それに、一度リラに聞いてみないと。リラをここに来させるにしろ、来させないにしろ、本人の承諾が必要だよ。」

「俺は反対だ。」



ルシアスはそう言い切って地下牢を後にする。


僕だって大反対だけど、状況がこれだからね。



「また来るよ。その間に情報の整理をしておいてね。」


とりあえず、ルシアスよりも早くリラに会わないとね。


リラを隠すかもしれない。


そんな面倒なことになる前に、さっさと見つけてしまおう。



あてはある。
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