生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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新・チーム☆ゴースト

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sideリラ


「あ!リラちゃん!」


ライアスが行ってしまった後、私の元へ来たのはダリアちゃんだった。



「ダリアちゃん…」


「…どうしたの?」



やっぱりすぐに気付くね。


「えっと………もう少し後で話してもいい?」


今はまだ話したくない。


自分でも整理がついてないから。


「いいよ!ちゃんと待ってる!」


これほどいい友達がいるだろうか。

私にはもったいない。


「それよりどうしたの?何かあった?」


私をわざわざ探しに来るなんて。


「うん!新メンバーの歓迎会しようよ!」


新メンバー?


「あぁ、ルーカスくん?」

「そうそう!」



それもそうだね。


こういう時こそ、明るい話題が欲しい。



「どこでやるの?」


私の部屋はルシアスがいるから無理だ。



「ラルフの部屋だって!お酒も食事も用意しているから早く行こう!!」


これは無礼講になりそう。


「うん!」


ルシアスに許可を取らなくてもいいかな??


いいよね?


多分……

歓迎会ならルシアスだって怒らない。



*******************

sideルーカス


「リラ達遅くね??」


ルディはもうこれを言うのは3回目だ。


「ダリアが探しているからすぐ見つかる。」


ラルフはそう言いながらワインを全員分注いだ。


それはそうと……


「これは?」


派手な三角帽子だ。


これを被る必要ある?


「それは主役の帽子だ、被っとけ。」


ラルフは男前だ。


「男前だね。顔がいい、本当に。」

 
場が静まり返った。


何かおかしなことを言っただろうか?


以前、クロウさんに言われた。


思ったことを口にするときは気をつけろと。


何か不快にさせたか?


そんなつもりはなかったんだけど。


「な…何で!!何でラルフだけ!?俺は!?俺も結構顔いいからね!?」


静まり返ったと思ったらルディがうるさい。


「見る目があるじゃないか。」


ラルフは俺を褒めてくれた。


「はぁぁあ!?てか顔で言えば俺の方が上じゃね!?」


ルディは騒がしい。


だけど嫌いじゃない。


「俺は、ルディのその喧しくて鬱陶しい感じ、すごく好き。」


嘘をつくのは嫌いだ。


嘘はよくないことしか招かない。



「はぁああ!?それ褒めてないって!!」



トントン。



「あ!リラとダリアだ!」


ルディは見ていて面白い。


表情がコロコロ変わる。


「どーぞー!!」


ルディは特にリラが好きみたい。



「「お邪魔しまーす!!」」



それもそのはず、リラは可愛い。

もちろん、ダリアも。



「ごめんねー!お待たせ!」

「お待たせ。」



リラとダリアはどこに座ろうか迷ってる。



「ほら、美女2人、主役を囲んでやれよ。」


ラルフがそういうと2人は照れながら俺の隣にきた。



「いいのかな、私たちで。」


リラは美女と言われて照れている。


「いいに決まってるよ、ラルフ公認の美女なんだから。」


ダリアは嬉しそうだ。




「全員集まったな!とりあえず乾杯しようぜ!」


ルディがリラとダリアにワインを渡す。


俺たち男はもうすでにワインが目の前に置かれていた。



「いいねいいね!!ほら、ルーカス持って!」


ダリアがテーブルに置いてあったワインを俺に渡した。


「ルーカス、帽子がずれてるよ。」


リラは俺の帽子の位置を直してくれた。


「よし、完璧!」


なるほど、これが王子様を射止めた笑顔か。


納得。



「じゃあルディ、派手に頼むぞ。」



ラルフがルディに乾杯を任せた。



きっとルディの得意分野だからだ。


「任せろ、それじゃあ新メンバー、ルーカスに乾杯ー!!!」


「「「「乾杯~!」」」」



グラスとグラスがぶつかる音が気持ちいい。


ここにいるみんなは俺のことを受け入れてくれる。


仲間だと信用してくれているんだ。


クロウさんの言う通りだった。


今までは先祖のことがあったから隠れて生きてきた。


お祝いなんて初めてだ。


今まで、誕生日ですら祝われたことはなかったから。


暖かい。


すごく…嬉しい。




「「「え。」」」



俺の顔を見てみんなが固まる。


どうしてだろう。


俺はまだ何も言っていないのに。


「え!?ちょっ、どうしたの??」


ダリアが俺を見て焦り始めた。


「ルーカス?ごめんね?何か嫌だった??」


どうしてリラは謝るんだろう。


「乾杯が嫌だったのか??」


ルディも慌て始めた。


「乾杯が嫌とかあるのか??」


ラルフは相変わらず冷静だ。



「歓迎されたのが…初めてで……。」


嬉しかっただけだ。



気にしないでくれ、本当に本当に嬉しいだけなんだ。



「嬉し泣きかよ!もう!びっくりさせんなって!」


ルディは安心したように笑った。



「びっくりした~、歓迎するに決まってるでしょ!」


ダリアが俺の背をポンポンと叩く。


「そうだ、お前はもうチーム☆ゴーストなんだ。ちなみにこのチーム、一度入ったら抜けられないからな。」



ラルフはそう言ってワインを飲んだ。


「そうだよ、ルーカス。これからは何があっても私たちが纏わりつくから覚悟してね。」



リラが俺の頭を撫でた。



本当にこの空間は優しさで溢れている。



守りたいものができた瞬間だった。
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