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4巻
4-1
しおりを挟む有名な魔法薬師になりました
僕、山崎健斗はある日突然、気が付くと異世界にいた。
どうしたものかと途方に暮れたが、なぜか持っていたタブレットに入っていた、様々なアプリのおかげで快適に過ごせそうだということが判明する。
冒険者となった僕は、Bランクの冒険者パーティ『暁』に加入して、使役獣を手に入れたり、魔法薬師の資格をゲットしたりと、楽しく過ごしていた。
そんなある日、暁のメンバーであるラグラーさんが誘拐されるという大事件に巻き込まれてしまう。
しかも、同じく暁のメンバーであるクルゥ君の妹のクリスティアナさんがその事件に関わっていたり、頼りになる暁の一員のケルヴィンさんが敵に操られてしまったりとピンチの連続。
けれども、魔法薬師の協会のトップであり、僕の友人のデレル君の協力もあって何とか乗り切ることが出来た。
そして、そんなラグラーさんの救出劇からもう、一ヶ月が経過しようとしていた。
ここ最近の変化といえば――誘拐騒動の時に知り合った、ラグラーさんのお兄さんであるシェントルさん達が、ご飯を食べに来ることが増えて賑やかになったことかな。
あとは、デレル君が週二回の頻度で、ラグラーさんとケルヴィンさんに稽古をつけてもらうようになった。
デレル君は実は小心者で、魔獣を見ると気絶しちゃう残念な体質の持ち主だったんだけど……どうやらラグラーさん達による鬼の特訓によって、それが少しずつ和らいでいるみたい。
いつも僕の側にいる使役獣の風羽蛇のハーネと一角雷狐のライくらいなら、近くにいても逃げ出さないようになったし、目を合わせることも出来るようになっていた。
最初の頃と比べると、大きな進歩ではないだろうか?
先週からは、僕が最初に剣の扱い方を習った時に倒した、モルチューを斬る練習をしているようだった。
「訓練が厳しいとは聞いていたけど……本当に、あんなに厳しいとは思いもしなかった」
マジ泣きしそうな顔でそう言ったデレル君を、僕とクルゥ君の二人で必死に慰めたよ。
僕個人の変化や成長といえば、一人でダンジョンに行くのが多くなったことだろう。
ギルドからの依頼を受けて魔獣を討伐したり、食料の調達をしたりといった目的の時もあれば、魔法薬の材料を集めるために行くこともある。
今までは暁の中でも頼りになるフェリスさんやラグラーさん達と一緒に行動するか、一人では手強い魔獣が多いとされるダンジョンの深層部分には入らない約束をしていた。
でもここ最近は、初級ダンジョンなら一人で深層部まで行くことが許されるようになったのだ。
なぜかと言えば、ハーネとライに、サイズを大きくしたり成長を促したりする魔法薬を使うことで、初級レベルのダンジョンなら深層部にいる魔獣も簡単に倒せることが分かったからだった。
フェリスさんからも、一緒にダンジョンに行った時に、「初級程度ならケント君一人でも大丈夫でしょ。本当に危ない魔獣が出てきたら、ハーネちゃんとライちゃんに乗って逃げればいいし」と言ってもらえた。
ギルドの冒険者としての評価も上々らしいと、受付の職員さんも褒めてくれている。
しかも、ダンジョンの奥に潜れるようになったことで、魔法薬で使用する魔獣の素材や魔草も質が良いものが手に入り、低級レベルの魔法薬でも良質なものを作れるようになったんだ。
それに一緒に付いて来たミツバチに似た使役獣――毛長蜂のレーヌやエクエスが、仲間の蜂や他の虫達に命じて持ってきてくれる、貴重な木の実や種などを手に入れやすくなったのもありがたい。
まぁ、こちらの世界のお金をポイントに交換して自由に品物を買えるアプリ『ショッピング』で購入すれば、早くて品質の良いものが手に入れられるんだけど……
『自分の力で頑張って手に入れたもので調合する』のがいいと僕的には思っているから、ダンジョンに行くのはやめられないよね。
今日は、自分で採取した材料で作った魔法薬をリジーさんのところへ卸しに行く日だ。
「こんにちは、リジーさん。魔法薬を持ってきました」
「おぅ、ケント! 待ってたぜ」
チリンチリンッと可愛いドアベルの音を鳴らしながらお店に入ると、外見がほぼウサギの獣人、リジーさんが出迎えてくれた。
長い耳をピコピコ揺らしていて、かなり機嫌がよさそうだ。
「聞いてくれよ、ケント! つい最近、お前が作る魔法薬を大量に注文してくれた人がいたんだ!」
「えっ、本当ですか!」
「あぁ。そこそこランクの高い冒険者だと思うんだが……なんでも、最近一人でダンジョンに潜ることになったんだと。それに備えて質の良い魔法薬を探してたから、ケントの魔法薬を数種類、勧めてみたんだよ。そしたら数日後に、『あの値段でこれほどまでに良い魔法薬なんて、他になかなかないぞ!? おい、この店にあるだけ俺に売ってくれ!』って言いに来たんだぜ!?」
リジーさんは最初に会った頃よりも成長した僕を褒め称えつつも、大口契約者が出来てホクホクした顔になっていた。
自分のことのように嬉しそうに話すリジーさんを見て、思わず僕の頬も緩む。
実はリジーさんは、僕の魔法薬師としてのランクが上がるにつれて魔法薬の価格も上がっていくから、売れなくなるかな~と心配していたらしい。
だけど、そんな心配とは裏腹に、僕の魔法薬は『良心的な値段なのに高品質で効果が高い』と噂になり、飛ぶように売れている。
それだけ売れ行きが好調なら、リジーさんの機嫌がよくなるのも分かるな。
「そういえば、この瓶のデザインもケントが考えたんだってな」
リジーさんが言っているのは、瓶に描かれた紋章のこと。
高ランクの魔法薬師が作った魔法薬の瓶には、誰が作製したかを分かりやすくする紋章が必要だということで、先日魔法薬師協会に行ってデザインを考えたのだ。
どのような紋章にするか、だいたいのイメージでいいので紙に描いてくださいと協会の人に言われ、僕は悩みに悩んだよ……
考えた末、翼を広げて剣に絡みつくハーネと、その下に横たわるライを描いた。
それから二匹の周りを円で囲んで、円の外側にレーヌとエクエスも加えて、自分の名前も書いておいた。
そうして自分が考えた図案を紋章を描くプロの手に渡して、僕は出来上がりをワクワクしながら待つことになったんだけど……
出来上がった瓶を受け取った時、すごく興奮した記憶がある。
だってさ~、自分専用の瓶だよ? 気分も上がっちゃうよね!
まぁ、そんな僕を見ていたハーネとライはあまり関心がなかったようで、スンとした顔をしていたけど。
ちなみに、この僕専用の瓶は魔法薬師協会から支給される『専用瓶箱』の中に入っている。
この木箱は、魔法薬師協会の刻印が打ってあって、中に入っている新品の瓶を全て取り出した後、蓋を閉じて再び開ければ、また新品の瓶がびっしりと補充されているという仕組みだ。
これがあれば、いちいち魔法薬師協会に瓶を取りに行かなくてもいいと知った時は感動したな。
そんな風に思い出を振り返っている間も、リジーさんは何やら話し続けていた。
「――って話で、魔法薬の知識がある冒険者も探しているみたいなんだ」
しかも、いつの間にか全く別の話題に切り替わっていたみたいだ。
後半、何を話していたのか聞きそびれちゃったな……
すごく申し訳ないけど、ここは素直に謝ろう。
「あっ、すみません! ちょっと考え事をしていて、ちゃんと聞いていませんでした」
そう言うと、リジーさんはガハハハッと笑ってもう一回話してくれた。
どうやらリジーさんの知り合いが、魔法薬の材料となる魔獣の素材と魔草を調達出来る人物を探しているとのこと。戦闘専門でお願いする冒険者は一人見付けることが出来たけど、魔法薬の知識をある程度持っている人物――出来れば魔法薬師がいたら紹介してほしいと言われていたんだって。
ただ、冒険者で魔法薬の知識がある人物はかなり珍しく、数が少ない。
そこでリジーさんが、冒険者でもあり魔法薬師でもある僕やグレイシスさんのことを伝えたところ、その依頼主は「その方達にぜひともお願いしたい!」と言ってくれたんだとか。
「ん~……グレイシスさんが行けるかどうかは確認しなきゃ分かりませんけど、上級ダンジョンだったり、あまりにも危険な内容だったりしないない限り、僕は大丈夫です」
「本当か!? そりゃあ良かった!」
「ちなみに、向かうダンジョンの情報や日数、必要な魔法薬の素材になる魔獣や魔草の詳細など教えてもらえませんか?」
「おぅ、それなら紙に書き出しておいたよ」
リジーさんから紙を手渡され、その場で内容を確認する。
《依頼内容 魔法薬の材料の元となる素材の調達》
場所 ――中級ダンジョン【虫喰いの森】
期限 ――依頼を受けてから2週間以内
人数 ――冒険者
※2~3人。最低1人は魔法薬師であること
報酬 ――別紙に記載
※出来高報酬有
※依頼を早めに終わらせた場合にも報酬上乗せ
依頼者――黄昏の魔女
一通り目を通して、まず驚いたのはこの世界にも魔女がいるということだ。
「えっ、魔女ってあのとんがり帽子をかぶった老婆の――」
びっくりして声を漏らすが、リジーさんはそれを笑いながら否定してから、僕が思い描いているような魔女はいないと教えてくれた。
老舗の魔法薬店は『~の魔女』という店名になっていることが多く、かなり昔に、魔法薬を販売している人のことを総じて『魔女』と言っていた名残らしい。
「色々と教えてくれてありがとうございます。それじゃあ、一度持ち帰ってグレイシスさんに聞いてみますね」
「おぅ、よろしく頼むぜ!」
僕はリジーさんから渡された紙を折りたたむと、なくさないように収納機能付きの腕輪に仕舞ってからお店を出たのだった。
「あ~……ちょっとお得意様から大量の魔法薬の注文が入ってしまったところなのよ。だから、私は行けないわね」
リジーさんのところから帰って来てすぐにグレイシスさんに依頼のことを伝えてみたら、そう断られてしまった。
その言葉に肩を落としている僕を見つつ、グレイシスさんは話を続ける。
「私は行けないけど……ケントはこの依頼を受けた方がお得だと思うわよ?」
元々僕は受けるつもりだったけど、グレイシスさんがそう考える理由が気になった。
「え、それはどうしてですか?」
尋ねてみると、老舗店の中でも格式の高い『黄昏の魔女』に、自分が調合した魔法薬を置いてもらうのは、魔法薬師として一種のステイタスなんだと教えてくれた。
「まあ、ケントの知名度やレベルだと、まだお店には置いてはくれないだろうけど……それでもケント自身をあのお店の店主に覚えてもらうのは、将来的にもいいことだわ」
「……なるほど」
「それに、そのレベルのダンジョンならハーネちゃんやライちゃんがいるし、大丈夫でしょう。危なくなったらすぐに逃げなさいね」
そのアドバイスに素直に頷き、お礼を言ってから、グレイシスさんの部屋を後にした。
あとはフェリスさんに確認しなきゃな。
グレイシスさんの部屋を出た僕は、そのままフェリスさんの仕事部屋に向かう。
「フェリスさん、ケントです」
「は~い、どうぞー」
ドアをノックすると、すぐに返事があった。
部屋の中では、フェリスさんが一人用の椅子で骨魚のチップスをポリポリと食べつつ読書をしているところだった。
骨魚とは、以前クルゥ君と討伐した、魚の骨の見た目をした魔獣のこと。
その時おつまみとして作ったのがよほど気に入ったのか、たまにおやつに食べたいと言われて、このチップスを作ってあげているのだ。
「ケント君、どうしたの?」
「実は、リジーさんのお知り合いの方からの依頼を受けようと思っていまして……」
僕はそう前置きして、リジーさんから貰った紙を腕輪から取り出してフェリスさんに渡す。
紙を受け取ったフェリスさんは、ざっと中を確認し微笑んでくれた。
「うん、今のケント君ならこの依頼を受けても大丈夫だと思うよ」
「ありがとうございます! ……ただ、そうなると数日、暁を留守にすることになるんですよね」
「それは……緊急事態ね」
僕の言葉に、一転して深刻な顔で答えるフェリスさん。
いや、本来ならそんな顔して『緊急事態』って言うほどのことでもないんだけどね?
フェリスさんが心配しているのは、十中八九、食事のことだろう。
僕がある程度作り置きしておけば大丈夫なんだろうけど、その量がどれくらい必要になるかが分からない。依頼が何日くらいで終わるか、定まっていないからだ。
四、五日くらいの作り置きなら問題ないけど、それ以上になると作る僕もさすがにキツイ。
まぁ、そこはフェリスさんもちゃんと分かっているらしく、「大丈夫、ケント君がいない間は私がご飯を皆に作ってあげるから!」と言ってくれたのだった。
たぶん、全力で皆が阻止する未来が見えるが、そこは言わない方が賢明だろう。
代わりに、僕はこう答えておいた。
「フェリスさんに任せておけば安心ですね! それじゃあ、僕が留守の間はよろしくお願いします」
うん、フェリスさんもにこやかな表情だし、ここではこう答えたのが正解だっただろう。
カオツさんとの再会
《ね~、あるじぃー》
「ん~?」
《またどこかいくの?》
部屋で僕が一人慌ただしく依頼に備えて準備をしていると、ベッドの上に座っていたハーネとライが、そう声をかけてきた。
僕が魔法薬の在庫を調べたり着替えの服を腕輪に入れたりしている様子を見て、不思議に思ったのだろう。
ハーネ達は、お互い縄張りの偵察やらお遊びやらで忙しくてリジーさんの店には付いて来てなかったので、そもそも依頼のことをまだ知らないのだ。
フェリスさんに依頼のことを伝えた後、僕は再びリジーさんの所に行った。
そして、グレイシスさんは無理だけど僕だけなら……と伝えたところ、その場で依頼を受けることになったのだ。
「ケントも立派な魔法薬師様だからな! この依頼を受けてくれて助かるよ」
そうリジーさんが言ってくれたのは嬉しかった。
依頼用の紙には書かれていなかったけど、出来るだけ早めに動いてもらえるとありがたいとのことだったので、料理を作り置きするために一日だけ時間を貰った。
そして、二日後にリジーさんの知り合いのところへと行くことになったのだった。
ここまでの経緯を話しつつ、ハーネとライに説明してあげる。
「うん、今回は暁の皆とは別行動で、他の冒険者の人と一緒にお仕事をすることになったんだ」
《ちがうひと?》
《ごしゅじんのしりあい?》
ハーネとライが同時に、首をコテンと右に傾げる。
その仕草があまりに可愛らしかったので、即座にタブレットのカメラで撮ってから答える。
「いや、たぶん知らない人だと思うよ」
明日会うまで、どんな人と一緒に行動するのかは分からない。
暁に入って以来、メンバー以外の冒険者と依頼を受けるのは初めての経験なため、すごく緊張する――けど同時に、ワクワクもしていた。
一緒に仕事をするのって、どんな人なのかなぁ? 会うのが楽しみだ!
そんなことを思いながら支度をしているうちに、時間はあっという間に過ぎていったのであった。
そして、依頼当日。
ハーネとライを連れて依頼主の元へ行った僕だったが、昨日までのワクワク気分はガクンと急降下していた。
なぜなら……一緒に依頼を受ける冒険者は、元『龍の息吹』で副リーダーを務めていたカオツさんだったからだ!
龍の息吹は僕が暁に入る前、お世話になっていたパーティだ。途中で他の人のレベルに付いて行けないからと追い出されてしまったんだけど。
一ヶ月ほど前に、パーティ自体が解散したって噂を聞いたんだけど……何があったんだろう。
それはともかく、まさかこんなところでカオツさんと一緒になるとは思わなかったな。
今も僕の目の前で不機嫌な顔を隠そうともしないし、パーティで一緒にいた頃からあまり相性がよくないんだよな。
しかし苦手な相手であっても、短期間とはいえ仕事仲間になるなら最初の挨拶は肝心だ。
僕の今の見た目は十代半ばくらいだけど、中身は立派な大人だからね!
ここはにっこり笑ってこちらから話しかけよう。
「カオツさん、お久しぶりです。今回はよろしくお願いします」
「……チッ!」
うっわ……いきなり舌打ちされた!
相変わらずの対応に心の中でシクシクと泣いていると、僕達の依頼主である『黄昏の魔女』の店主さん達が声をかけてきた。
珍しいことに、ここを経営する店主さんは一人ではなく三人だった。
三人とも男性で、一人は幼い子供のような外見、もう一人は二十代の若者の姿をしており、最後の一人にいたってはヨボヨボのご老人だ。
最初は親戚とかだと思ったけど、外見を皆が変えているだけで、実は三つ子の兄弟らしい。
三人ともその日その日の気分で見た目を変えるので、彼らの本当の年齢や見た目を知る者はいないとか。
「今日は私達の依頼を受けてくださり、ありがとうございます」
二十代の見た目の男性が僕達の前に来ると、にっこり笑いながら自己紹介をしてくれた。
「私はこの『黄昏の魔女』の三店主の一人、ダルディーです。後ろの二人がルディラとデベット」
ダルディーさんの後ろにいた他の店主さん達が頭を下げたので、僕も頭を下げた。
カオツさんは腕を組んで店主さん達を観察しているようであった。
「今回はお二人に、中級ダンジョン【虫喰いの森】に生息する魔獣の素材と魔草を採ってきていただきます。これらは魔法薬の素材にもなりますので、出来る限り状態が良いままだと嬉しいです」
ダルディーさんはそう言ってから、必要な魔獣の素材と魔草が書かれたリストを僕達に手渡す。
確認すると、魔獣が十種類と魔草が二十種類ほど記載されていた。
それぞれの名称の横に必要な数が書かれていて、一つごとの報酬も載せられているし、素材の状態が良ければ報酬の上乗せも有りとあった。
リストを見た僕は、頑張るぞー! と心の中で拳を握る。
ただ、一番最後の行に『※お二人は常に一緒に行動すること』と書かれていたのには、思わずウヘーという顔になってしまった。
これは……たぶんだけど、グレイシスさんが一緒に行けないことを聞いたリジーさんが、子供である僕に何かあったら大変だと心配したのだろう。
で、この依頼を受ける他の冒険者と常に一緒にいれば危険は少ないだろうという結論に行き着き、店主さんに口添えしたのかもしれない。
いやいや、僕にはハーネやライといった心強い味方がいるので心配はいらないんだけどな……
それより、こんな風に書かれていたら、僕のことが嫌いなカオツさんがキレないか不安だ。
そう思っていたんだけど、カオツさんは不機嫌そうな顔はしつつもなぜか何も言ってこない。
いつものような嫌味も、舌打ちも聞こえない。
首を傾げながらカオツさんの様子をこっそり窺っているうちに、店主さんの説明はある程度終了していた。
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