チートなタブレットを持って快適異世界生活

ちびすけ

文字の大きさ
136 / 141
連載

ウェンボード家の事情 前編

しおりを挟む
 人間、動物、魔獣の精神、その他には物体などといったいろいろなものを操る力――そんな異能を持つ人間が多く輩出されるウェンボード家。

 その特異な能力を持っていることから、血統の管理は王族よりも徹底して行われていると言われている。
 ウェンボード家傍系一族である『アロテラ家』にディーセラが生まれた時も、生まれた子供に異能の能力が備わっているか確認をするために、両親は子供を連れて本家であるウェンボード家に向かった。
 そこで当主から「かなり微弱ではあるが、その子供は何らかの形で人を操る能力を持っているかもしれない」と伝えられた。

 本家の人間ほどの危険さは無いとはいえ、気を付けて育てるようにと注意をされていたが、ディーセラの両親は当主の言葉を直ぐに忘れ、人形のように可愛らしい外見で生まれたディーセラをただただ可愛がり続けた。

 両親から溺愛され、好きなものは何でも買い与えられて蝶よ花よと育てられた結果――天使のような見た目とは真逆な性格の令嬢にディーセラは成長してしまった。
 いつでも自分が最優先にならなければ機嫌が悪くなるし、人々の関心事が自分よりも他人に向かうのも許せ生来ない。

 生来持って生まれた性格もあるのかもしれないが、悪いことをするのに何の躊躇いもなく、人が傷つくのも悲しむのも何も感じないそんな令嬢に育った。

 そんなディーセラの人を操る能力は、自分の魔力を操りたい人物のによって発動する。
 ディーセラが食べ物や飲み物に手をかざして魔力を注いだものを誰かが飲んだり食べたりすると、ディーセラを少しずつ意識するようになったり好意的になったりする。
 一種の弱い媚薬を飲んだような状態になるのだ。
 魔力が溶け込んだものを長期間接種した人間はディーセラが言うことを信じるようになり、最終的には彼女の為なら何でもしようと動くようになる。
 ただ、ディーセラよりも能力の強い人間にはあまり効かず、それこそ年単位で毎日取り込ませ続けなければ操ることが出来ない。
 
 そんな力を自分の為だけに使い続ければ誰かにバレるようなものだが、『かなり微弱』と言われていた能力であったため、誰にも気付かれずに行うことが可能であった。
 そしてその能力を武器として、ディーセラはまず両親や邸に仕えている使用人、そして周りにいた友人の令嬢達やウェンボード家の傍系一族達など、時間をかけて自分に有利に動く人間となるように気付かれずに『洗脳』し――ついには、ウェンボード家当主の妻という立場にまで上り詰めたのだった。

 しかし、そんなディーセラが『妻』という立場に満足するなんてことはなかった。

 常に『一番』でいたい人間であったディーセラは、子供を身籠った時にその子供を自分の思い通りに操り、ウェンボード家そのものを……実権を手に入れようと考えた。
 当主である夫をどうにかしようにも、こちらは警戒心も強かったため何十年も時間をかけなければならず、まずは長男であるクインから手懐けることにしたのだ。
 クインは虚弱体質なこともあり、あまり自分の思いや考えを他人に言えないような子供であったため、直ぐに思い通りに操れると思っていた。

 だがその考えは直ぐに誤りだと気付く。

 自分の魔力とクインの魔力の相性がかなり悪かったのと、夫と同じく自分以外の魔力に敏感で簡単に操ることが出来なかったからだ。
 クインはそれなりに『使えそう』な子供ではあったので、様子を見ることにした。
 次に双子の子供が生まれた時、ディーセラは素晴らしい『手駒』が手に入ったと喜ぶことになる。
 クルゥと名付けられた男の子はかなり強力な能力を持って生まれたが、魔力の相性が夫やクインよりも更に悪く、絶対に操れないような子供であった。
 その反面、女の子であるクリスティアナは強い能力と魔力を持っていてもディーセラとの相性がとても良く、すんなりと魔力をその体内に吸収していく。
 頭の中で、クリスティアナを使って今後どう動いていくかを計算していく。

 乳母が子供達を世話している姿を見ながら、操ることの出来ない息子達はいつかウェンボード家を手に入れるには邪魔な存在になるかもしれないので、ある程度育てたら使い捨てることにした。

 ディーセラにとって『子供』とは守るべく愛すべき存在などではなく、いかに自分の都合のいいように動く人形のようなものであった。
 愛情というものが一切ないので、自分が産んだ子供を捨てることに一切の躊躇いもなかったのだ。

 しかし、長男クインは七歳の頃から魔力操作技術が歴代最高峰と言われるような能力者になってしまい、簡単に家から追い出すことも消すことも出来ない存在になってしまう。
 クルゥは巨大な魔力を持っていても使うことも出来ずに落ちこぼれの存在に成り下がっていたので、どう処理をしようかと思っていた時にフェリスというエルフの女がクルゥを連れて家を出て行ってしまった。
 たいして役に立たない子供であったので、その時は目の前からいなくなってくれてよかったと喜んでいたくらいであったのに……

 それなのになにをどう間違ったのか、落ちこぼれだと思って捨ておいていた息子達によって長年の企みを阻止され、ウェンボード家の実権を握るどころか能力を完全に封印された状態で、誰も来ないような山中にある塔に幽閉されていた。

 重犯罪者が入るような牢屋ではなく、それなりに裕福な家庭の室内と同等の家具などが置かれていた部屋ではあったが、幼少期から贅沢三昧な生活をしていたディーセラにとっては今の状況は耐え難いものであった。
 窓枠には鉄格子が嵌められており、部屋の物を壊したとしても直ぐに元通りになる魔法がかけられていたし、自死も出来ない魔法も、能力を封印されるときに同時に施されていた。
 今までの生活とは違い召使やメイドなど誰もおらず、地味な白地のワンピースを着てただただ無常に時間が過ぎるだけの生活に、誰かに文句を言おうにも一日三回食事を運んで来る武装した人間だけしか顔を合わせないし、彼らは食事や必要な物を運ぶ以外に一切ディーセラと口を利かず、絶対に目も合わせなかった。
 
「ありえないわ……こんなこと。
 私はウェンボード家の当主になるような人間なのよ? こんな場所にいていいはずなんてないわっ!」
「まだそのような考えを持っていたんですね」

 髪を手でぐしゃぐしゃにしながら床に座ってヒステリックに叫んでいると、今は一番聞きたくなかった声が聞こえてきてピタリと口を噤む。
 乱れた髪の隙間から声がした方へ視線を向けると、長男であるクインが痛ましいような者を見る目でディーセラを見下ろす。

「お前……よくもあんな真似をしておいて私の前に来れたわね!」
「母様……落ち着いてください」
「おだまり、裏切り者がっ! そこらへんにいる愚民共と一緒になってヘラヘラしているような人間に、『母』と呼ばれたくはないっ!」

 足元に転がっていたコップを掴み、「私の前から消え失せろ!」と叫びながらクインの顔めがけて投げつけた時――クインの後ろに隠れていた人物が前に出てきて、コップを叩き落とした。

「ふんっ。ボクよりも魔力の量が少なくて、クリスティアナよりも秀でた能力を持っているわけでも、兄様ほどの魔力操作技術もないような人がなにを言っているのやら……だね」
 
 コップがクインに当たる直前で叩き落したクルゥは、手を腰に当てながら首を傾げつつ「『裏切り者』って言うのは、あんたみたいな人のことを言うんだよ」とディーセラを見下しながら、軽蔑した目でそう言ったのだった。
しおりを挟む
感想 1,349

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

過労死して転生したら『万能農具』を授かったので、辺境でスローライフを始めたら、聖獣やエルフ、王女様まで集まってきて国ごと救うことになりました

黒崎隼人
ファンタジー
過労の果てに命を落とした青年が転生したのは、痩せた土地が広がる辺境の村。彼に与えられたのは『万能農具』という一見地味なチート能力だった。しかしその力は寂れた村を豊かな楽園へと変え、心優しきエルフや商才に長けた獣人、そして国の未来を憂う王女といった、かけがえのない仲間たちとの絆を育んでいく。 これは一本のクワから始まる、食と笑い、もふもふに満ちた心温まる異世界農業ファンタジー。やがて一人の男のささやかな願いが、国さえも救う大きな奇跡を呼び起こす物語。

追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。 絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」! 畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。 はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。 これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。