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プロローグ
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リーザは洗いたての白いシーツの皺を伸ばして物干しに掛けた。
心地よい風が、今しがた干したばかりの洗濯物達をはたはたとはためかせる。石鹸の香りに混じって薫るのは、辺りに青々と茂る草の香りだ。
魔法大国エストリアの外れ、ザローネの森の奥深くに、この家はこじんまりと存在している。
人が多くて賑やかな王都アーレリッツからはかなり離れており、ここはそういった意味では居住するには不便な立地ではある。しかし、住めば都とはよく言ったもので、鬱蒼と繁った森の中で拓けているのはこの家の周囲だけだが、そもそもあまり大きな家では無いし、食料の買い出しや移動には転移魔法を使えるので問題は無い。それに、この家の裏手には小さな薬草畑もある上、生活に必要な水も……地下水をくみ上げる井戸が備え付けられてあるので困らない。貴族のように派手な暮らしこそできないが、ある程度人が細々と暮らすのには全く不自由が無いようには整えられていた。
腕捲りをした若い娘は、朝早くから家の裏手にある井戸の側で、もう初夏に差し掛かったと言うのに凍るように冷たい井戸水と格闘し、漸く洗い終わった洗濯物を干し終えたところだ。
ひと仕事を終え、リーザは思わず空になった洗濯籠を置くと、額に薄っすらと浮いた汗をハンカチで拭いつつ、空を見上げた。
「真っ青だぁ~」
青色の絵の具をそのままキャンバスに塗りつけたような、純度の高い青の空には白い雲が殆ど無い。
こんな鮮やかな色の空を、リーザはアチラの世界では見たことがなかったように思う。
風に煽られて翻る白いシーツが青空に映える。
「今日も良く晴れてるから、洗濯物がよく乾きそう~! んん~♪ 気持ちいいー!!」
晴れやかな空は見ているだけで気持ちがよくて、リーザは両手を広げて大きく伸びをすると、ご機嫌なまま独り言つ。肺を満たす森の薫りがする新鮮な空気が心地良かった。
さやさやと心地好い風が頬を撫でていく。遠くで鳥が囀っているのが聴こえる。
決して早いとは言えない時間だが、まだ太陽は上りきれては居ない。これだけ晴れているなら昼食の準備をする前に家の中の掃除をして、あの何だかじめじめした部屋に風を通してしまいたい。そうしたら、きっと彼は気持ちよく過ごせるだろう。と、とある部屋の様子を思い描き、腕に抱えた空っぽの洗濯籠を持ち直してくるりと方向を変えた――その時。
「「わぶっ!!」!!」
「い、痛ぁ~……て、師匠ぉ?」
「……っ急に振り返るからですよ」
「ッたたた……だって、師匠がそこに立ってるっていう予知なんて、私には出来ませんし!」
ぶつけた鼻をさすりさすり私が振り返った先に居たのは、リーザの頭が当たったのかちょうど顎の下あたりを摩っているこの時間、この場には居ないはずの人物だった。
「鼻が赤くなってます。大丈夫ですか?」
「うぅっ……まぁ、痛かったですけど、師匠こそ顎大丈夫でした?」
ぶつかった瞬間、結構がっつりと彼の顎に当たっていた気がしたのだが……互いに痛い場所をさすりながら確認する。師匠はいつも表情があまり変わらないので、あまり痛そうに見えない。が、少し赤くなっているように見えた。
「まぁ、ちょっと痛いですけど、大丈夫ですよ……それより……」
「……うーん、大丈夫なら良かったです。何か御用ですか?」
まだ少し違和感のある鼻を気にしながら、私が尋ねると、師匠は一瞬何故か黙ったが、ぼそりと口を開いた。
「……リーザ、腹が減りました」
そう言われて、私は師匠が昨日から食事を摂っていないことを思い出し、眉間に軽く皺を寄せる。
「あー、師匠、お腹空いてることにやっと気付いたんです?」
「まぁ、そうですね」
「もー!! 仕事始めるといくら呼びかけても反応無いんですもん。お食事……昨夜の残りでも良いです?」
「あー、それで良いです。お願いします……」
師匠はそう言うと、滅多に使われることの無い表情筋を動かし、私に無邪気に笑いかけた。
「はい。それと師匠……お疲れ様、です」
「はい」
この人は、普段は何を考えているのかわからないくらい無表情だ。それなのに、ふとした瞬間にこういう無防備な表情を見せることがある。
僅かだけれども目を細め、ふわりと口元を緩めて穏やかに笑うその姿は――到底リーザよりもひと回りも年上とは思えない程、毒気が無いと言うか……。
(いつもそんな風に笑えばいいのに)
と、レアな笑顔を見る度にリーザは密かに思うのだ。
リーザはキッチンへ繋がる扉に手を掛けながら、まじまじと彼を見つめた。
――この、ふらりと現れたどこかのんびりとしたマイペースな調子の男性は、私の師匠だ。
名を、エリアス・エアハイムと言う。
ひょろりと高い背に、少し癖のあるふわふわとした白銀の、一般的な男性よりも少しだけ長めの髪。その長身に纏うのは黒に見紛うような濃紺色の上質なローブ。そのまま視線を上げた先に載っかっているその顔はと言えば、所謂美形に分類されるだろう。
ややもすると不健康にも感じる白い肌に、少しクマが浮き出てしまっている気がするが、それよりもまず目を奪われるのは長い睫毛に縁取られるサファイアの様に透き通った青色の瞳。彫りの深さを際立たせる高い鼻梁。まるで作り物のような造形だ。そんな彼に唯一、人間味を感じさせるのは、今少しカサついて色がやや紫がかっている薄い唇と目の下のクマ……それらは仕事の為に続いていた連日の徹夜のせいだろう。
顔色の悪さと、いつもよりもぼんやりした歯切れの悪い口調以外、不思議に髪一本乱れぬ程に身なりが整えられているのは、彼の几帳面すぎる生来の性格故だ。
「あ。……リーザ。出来ればチーズオムレツもつけてくれます?」
自分を見つめる私の視線に気づき、師匠は首を傾げつつも食事にリクエストを加えた。
「はーい! 心得ておりますー」
「……ありがとうございます」
チーズオムレツは師匠の好物だ。
と、言うか若干偏食のきらいがある師匠は、チーズにだけは目がないのだ。チーズ自体も好きだが、チーズ味の菓子やチーズを使った食事も、チーズと名のつくものは大体好きかもしれない。中でもトロトロ卵から蕩け出るチーズをふんわりと包んだオムレツは、朝食の定番メニューと言っても過言では無い。勿論、リーザ本人もチーズオムレツは大好きだが、女性であるリーザにはカロリー過多な気がして毎日は食べられない。
(うーん、あの悪魔の食べ物は、師匠だから毎日食べても大丈夫なのかもしれない)
自分の腰のあたりの肉付きを気にしながら、リーザは目の前の人物の全身をしげしげと見つめる。すらりとした長身には、余分な肉はついていない。
(……羨ましい)
そんな私の視線を知ってか知らずか、師匠はと言えば眠いのか口調も目元もぼんやりとした様子だ。しかし、そんな中でもしっかりと食事に自分の好物の注文を付けてくる辺りは抜かりない。チーズと言う高カロリーな食べ物を好んで食べてるのに、師匠は全く太らない。きっと仕事をしている間に消費されているのだろう。
小さな音をたて、キッチンへの扉を開いた所でリーザはふと思い出したことがあり、中へ入りかけた所で再び扉を開けてひょっこりと顔を出すとエリアスににっこりと笑顔を向ける。
「食事にする前に、顔洗ってきてくださいね。酷い顔ですよー」
それを聞いたエリアスは少し目を見開いたが、小さく頷いた。リーザはそれを確認すると、今度こそキッチンへと向かった。
(……さっきはああ言ったけど、食事、他にもちゃんと栄養摂れるものを用意してあげようかな……どうせ、また忙しくなるんだろうし)
また不摂生になってしまうのだろうから。
リーザは一人で納得すると、ひっそりと笑みをこぼした。
心地よい風が、今しがた干したばかりの洗濯物達をはたはたとはためかせる。石鹸の香りに混じって薫るのは、辺りに青々と茂る草の香りだ。
魔法大国エストリアの外れ、ザローネの森の奥深くに、この家はこじんまりと存在している。
人が多くて賑やかな王都アーレリッツからはかなり離れており、ここはそういった意味では居住するには不便な立地ではある。しかし、住めば都とはよく言ったもので、鬱蒼と繁った森の中で拓けているのはこの家の周囲だけだが、そもそもあまり大きな家では無いし、食料の買い出しや移動には転移魔法を使えるので問題は無い。それに、この家の裏手には小さな薬草畑もある上、生活に必要な水も……地下水をくみ上げる井戸が備え付けられてあるので困らない。貴族のように派手な暮らしこそできないが、ある程度人が細々と暮らすのには全く不自由が無いようには整えられていた。
腕捲りをした若い娘は、朝早くから家の裏手にある井戸の側で、もう初夏に差し掛かったと言うのに凍るように冷たい井戸水と格闘し、漸く洗い終わった洗濯物を干し終えたところだ。
ひと仕事を終え、リーザは思わず空になった洗濯籠を置くと、額に薄っすらと浮いた汗をハンカチで拭いつつ、空を見上げた。
「真っ青だぁ~」
青色の絵の具をそのままキャンバスに塗りつけたような、純度の高い青の空には白い雲が殆ど無い。
こんな鮮やかな色の空を、リーザはアチラの世界では見たことがなかったように思う。
風に煽られて翻る白いシーツが青空に映える。
「今日も良く晴れてるから、洗濯物がよく乾きそう~! んん~♪ 気持ちいいー!!」
晴れやかな空は見ているだけで気持ちがよくて、リーザは両手を広げて大きく伸びをすると、ご機嫌なまま独り言つ。肺を満たす森の薫りがする新鮮な空気が心地良かった。
さやさやと心地好い風が頬を撫でていく。遠くで鳥が囀っているのが聴こえる。
決して早いとは言えない時間だが、まだ太陽は上りきれては居ない。これだけ晴れているなら昼食の準備をする前に家の中の掃除をして、あの何だかじめじめした部屋に風を通してしまいたい。そうしたら、きっと彼は気持ちよく過ごせるだろう。と、とある部屋の様子を思い描き、腕に抱えた空っぽの洗濯籠を持ち直してくるりと方向を変えた――その時。
「「わぶっ!!」!!」
「い、痛ぁ~……て、師匠ぉ?」
「……っ急に振り返るからですよ」
「ッたたた……だって、師匠がそこに立ってるっていう予知なんて、私には出来ませんし!」
ぶつけた鼻をさすりさすり私が振り返った先に居たのは、リーザの頭が当たったのかちょうど顎の下あたりを摩っているこの時間、この場には居ないはずの人物だった。
「鼻が赤くなってます。大丈夫ですか?」
「うぅっ……まぁ、痛かったですけど、師匠こそ顎大丈夫でした?」
ぶつかった瞬間、結構がっつりと彼の顎に当たっていた気がしたのだが……互いに痛い場所をさすりながら確認する。師匠はいつも表情があまり変わらないので、あまり痛そうに見えない。が、少し赤くなっているように見えた。
「まぁ、ちょっと痛いですけど、大丈夫ですよ……それより……」
「……うーん、大丈夫なら良かったです。何か御用ですか?」
まだ少し違和感のある鼻を気にしながら、私が尋ねると、師匠は一瞬何故か黙ったが、ぼそりと口を開いた。
「……リーザ、腹が減りました」
そう言われて、私は師匠が昨日から食事を摂っていないことを思い出し、眉間に軽く皺を寄せる。
「あー、師匠、お腹空いてることにやっと気付いたんです?」
「まぁ、そうですね」
「もー!! 仕事始めるといくら呼びかけても反応無いんですもん。お食事……昨夜の残りでも良いです?」
「あー、それで良いです。お願いします……」
師匠はそう言うと、滅多に使われることの無い表情筋を動かし、私に無邪気に笑いかけた。
「はい。それと師匠……お疲れ様、です」
「はい」
この人は、普段は何を考えているのかわからないくらい無表情だ。それなのに、ふとした瞬間にこういう無防備な表情を見せることがある。
僅かだけれども目を細め、ふわりと口元を緩めて穏やかに笑うその姿は――到底リーザよりもひと回りも年上とは思えない程、毒気が無いと言うか……。
(いつもそんな風に笑えばいいのに)
と、レアな笑顔を見る度にリーザは密かに思うのだ。
リーザはキッチンへ繋がる扉に手を掛けながら、まじまじと彼を見つめた。
――この、ふらりと現れたどこかのんびりとしたマイペースな調子の男性は、私の師匠だ。
名を、エリアス・エアハイムと言う。
ひょろりと高い背に、少し癖のあるふわふわとした白銀の、一般的な男性よりも少しだけ長めの髪。その長身に纏うのは黒に見紛うような濃紺色の上質なローブ。そのまま視線を上げた先に載っかっているその顔はと言えば、所謂美形に分類されるだろう。
ややもすると不健康にも感じる白い肌に、少しクマが浮き出てしまっている気がするが、それよりもまず目を奪われるのは長い睫毛に縁取られるサファイアの様に透き通った青色の瞳。彫りの深さを際立たせる高い鼻梁。まるで作り物のような造形だ。そんな彼に唯一、人間味を感じさせるのは、今少しカサついて色がやや紫がかっている薄い唇と目の下のクマ……それらは仕事の為に続いていた連日の徹夜のせいだろう。
顔色の悪さと、いつもよりもぼんやりした歯切れの悪い口調以外、不思議に髪一本乱れぬ程に身なりが整えられているのは、彼の几帳面すぎる生来の性格故だ。
「あ。……リーザ。出来ればチーズオムレツもつけてくれます?」
自分を見つめる私の視線に気づき、師匠は首を傾げつつも食事にリクエストを加えた。
「はーい! 心得ておりますー」
「……ありがとうございます」
チーズオムレツは師匠の好物だ。
と、言うか若干偏食のきらいがある師匠は、チーズにだけは目がないのだ。チーズ自体も好きだが、チーズ味の菓子やチーズを使った食事も、チーズと名のつくものは大体好きかもしれない。中でもトロトロ卵から蕩け出るチーズをふんわりと包んだオムレツは、朝食の定番メニューと言っても過言では無い。勿論、リーザ本人もチーズオムレツは大好きだが、女性であるリーザにはカロリー過多な気がして毎日は食べられない。
(うーん、あの悪魔の食べ物は、師匠だから毎日食べても大丈夫なのかもしれない)
自分の腰のあたりの肉付きを気にしながら、リーザは目の前の人物の全身をしげしげと見つめる。すらりとした長身には、余分な肉はついていない。
(……羨ましい)
そんな私の視線を知ってか知らずか、師匠はと言えば眠いのか口調も目元もぼんやりとした様子だ。しかし、そんな中でもしっかりと食事に自分の好物の注文を付けてくる辺りは抜かりない。チーズと言う高カロリーな食べ物を好んで食べてるのに、師匠は全く太らない。きっと仕事をしている間に消費されているのだろう。
小さな音をたて、キッチンへの扉を開いた所でリーザはふと思い出したことがあり、中へ入りかけた所で再び扉を開けてひょっこりと顔を出すとエリアスににっこりと笑顔を向ける。
「食事にする前に、顔洗ってきてくださいね。酷い顔ですよー」
それを聞いたエリアスは少し目を見開いたが、小さく頷いた。リーザはそれを確認すると、今度こそキッチンへと向かった。
(……さっきはああ言ったけど、食事、他にもちゃんと栄養摂れるものを用意してあげようかな……どうせ、また忙しくなるんだろうし)
また不摂生になってしまうのだろうから。
リーザは一人で納得すると、ひっそりと笑みをこぼした。
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