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ヒーロー
四
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不意に音は止み、瞑った目蓋の裏が青黒くなった。目蓋をこじ開けさせ、青黒さは剥がれていって視界の外へ飛び出し、膜を貼った直後、破裂した音と共に俺は床へ落ちてしまった。
「よう、意気地無し」
声が聞こえたが動けなかった。目の前の景色は廃工場ではない。赤い絨毯が敷かれ、風船を並べた棚がある場所。……魂選塔だ。
呆然としていると横切った人に目を丸くした。
肉体を持った人間だった。気付けばみんな人間の形をしていた。
「……なんだ……? ここは……」
俺はまだ他の思い出でも見ているのだろうか。しかし覚えている記憶は、紛れもなく雪成との思い出を見る前の景色だった。
「ああ、一度思い出を見ると魂は自分の姿を思い出すんだ。お前ももう今は人間の形をしている」
店員が説明してくれる中、手を広げて見てみれば確かに少し焼けた小麦色の肌が視界に入る。頭に触れてみると髪があった。それに学ランを着ている。
思い浮かべなくてもわかる。細長の目、薄い唇をした顔。信じられない思いのまま、転がった巾着袋を手に取り、個数を確かめる。あと六つ。首を傾げた。
「四つ取ったのか?」
「そうだ。思い出によって通貨の数も変わる」
他に聞きたいことはないか。そう言いたげに店員はジッと俺を見てきた。しかしとりあえず思ったことを聞き出すとあとは雪成のことしか頭になかった。
「よう、意気地無し」
声が聞こえたが動けなかった。目の前の景色は廃工場ではない。赤い絨毯が敷かれ、風船を並べた棚がある場所。……魂選塔だ。
呆然としていると横切った人に目を丸くした。
肉体を持った人間だった。気付けばみんな人間の形をしていた。
「……なんだ……? ここは……」
俺はまだ他の思い出でも見ているのだろうか。しかし覚えている記憶は、紛れもなく雪成との思い出を見る前の景色だった。
「ああ、一度思い出を見ると魂は自分の姿を思い出すんだ。お前ももう今は人間の形をしている」
店員が説明してくれる中、手を広げて見てみれば確かに少し焼けた小麦色の肌が視界に入る。頭に触れてみると髪があった。それに学ランを着ている。
思い浮かべなくてもわかる。細長の目、薄い唇をした顔。信じられない思いのまま、転がった巾着袋を手に取り、個数を確かめる。あと六つ。首を傾げた。
「四つ取ったのか?」
「そうだ。思い出によって通貨の数も変わる」
他に聞きたいことはないか。そう言いたげに店員はジッと俺を見てきた。しかしとりあえず思ったことを聞き出すとあとは雪成のことしか頭になかった。
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