魂選塔

ヒーロー

七

俺たちはずっと母子家庭だった。それを壊しに来たのは、雪成だ。


あの日、雪成の殺人現場を否応なしに見せられた日。雪成はホームレスだけではなく、いじめた男たちも殺した。


その夜に雪成は俺の家へ来たのだ、父という男を連れて。


彼の家も父子家庭だと聞かされていた。雪成には優しい父で、いじめを知った日には喧嘩のやり方を教えたそうだ。


その息子がやり返し、しかも人まで殺した。


警察が来るのは時間の問題だった。だから雪成は自分の家を燃やし、俺の元へ来たのだ。


「ぼくたち友達だろ。匿ってくれよ」


俺は彼の誘いを断った。頭を振り、自首するように勧めたがそれを抑えたのが彼の父で、俺の両肩を掴むと凄んだ。


「聞いたところによると、君は優秀なんだそうだね。いいのかい？　君がどれほど否定したって世の中は信じない、君は殺人鬼として扱われるだろう。……お母さんに、楽をさせてやりたいんだろう？」


「……おじさんは、雪成に自首をさせないつもりですか？」