魂選塔

見たもの

五

私は場の空気を明るくするために言ってみた。ソヨカも安堵したのか、はい、と小さく微笑む。


例えば、母にこんなふうに笑いかけることが出来たなら、父に安心の言葉を投げかけられたなら、私たちの未来は違っていただろう。


だからこそ生き返らなきゃならない。したいことが思いつかないほど、私は浅く生きてしまっていたから。


順番もついに最後の一人になる。その一人がミキサーに入っていくのを見届けてから、私はようやくこの時間が終わることを嬉しく思った。


しかし、走り出した金色に目を奪われてしまう。ミルビーだった。


「ちょ、ミルビー！」


思わず声を上げてしまう。それでもミルビーはお構い無しに走って、チルギの前で立ち止まった。一気に魂たちの雰囲気が、先程の緩い疲労感とは違った張り詰めたものになる。