金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

だんだん

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リリスとしての仕事 ティーザー侯爵の場合1

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ヨウラドウの街を出たのは、それから二日程後のことであった。



第二王子と持っている情報のすり合わせは完了した。



戦が始まる期間は子細には分からないが、それでも出来るだけの準備をしておく必要はあった。



そしてアドラー公爵の最期を第一王子が知っていたことに関しても、話した。



『つまり、兄上がかなり怪しいと。』



公爵家を故意に潰したとなれば、王族として貴族からの信頼を損なうであろう。



『今後はこうしてリリスと客として会うのは辞めよう。兄上にこちらが怪しまれてはいけない。』



兄上はリリスにご執心だからな。そう言って彼は何かを考える仕草をしていた。

第一王子の娼婦狂いは宮廷でも有名だ。それはそうだ。一回国の財政を傾きかけたのだから。





『今後はお前のことをリルと呼ぼう。私のことはエイデンと呼びなさい。』





もうリリスの客として会うことは無くなる。

私としてはどちらでも良いが、リリスとしては少し困るだろうか。





『借金のことは気にするな。元々はお前のものじゃないだろう。私が王位に就いた曉には、全て帳消しにしてやるから。』





そんなことを言われたら期待してしまう。正直なところ、第二王子が王座に座れる確率はかなり低いと思っているのだが。



しかし、他派閥を上手く瓦解させればあるいは。



第二王子は第二王子で貴族の味方を作ってもらわなければならない。

今でも第二王子を支えようとしている元々の派閥の残った者達だけでは心許ない。



私達の問題は山積みだった。











一先ず、待たせている客に連絡を取る。バルド伯爵は暫く顔も見たくないので省いておいた。



一番最初に会いに行く人物は第二王子より指定されていた。



ティーザー侯爵。



ラクシャのある地の領主で、4代前に王族の血を引いている。

宮廷での立場は中立で、今のところどこの派閥にも所属していないという。

六十歳の壮年の男性で、堅物だが、現王がまだ即位する前から仕えている重鎮のうちの一人で、この人が派閥に加わってくれれば心強い。





男尊女卑思想の強めな人で、私は余り好きな客ではなかった。

客としては数回会ったきりであったが、確か久しぶりに会わないかと連絡が来ていた筈だ。たまたま休息期間だったので、一月後に行きますと返信していた筈だ。

取り敢えずもう冬なので殆んどの貴族が領地に戻ってきている。

チューザー侯爵もきっと領地にいるだろう。

いなかったら王都に行けば良いだけだ。



余り行ったことのない土地なので、転移魔法を使うのにかなり緊張する。しっかりと転移先をイメージ出来なければ失敗してしまうこの魔法は、上手く使えば便利だが、意外と使い勝手が悪い。



瞳を閉じて集中する。魔力を丁寧に練って、ティーザー侯爵領 領都 タナポトに転移した。





















タナポトはかなり乾燥した地域で、虫や爬虫類型の魔物が多い。



転移した先にたまたまいた蛇型の魔物に襲われるも、すぐに倒して解体を始める。皮がまあまあの値段で売れるので少し嬉しかった。



ルンルンで魔物を解体した後にタナポトに向かう。



街の中はそれなりに賑わっていた。近くにラクシャがあるのと一応この街にもギルドがあるらしく、冒険者風の人達も多い。



ただ、見掛けるのは男性ばかりで、女性が一人歩いてる姿は殆んど見なかった。



私が独り歩いているのを、通りすがりに男性の後ろを付いて歩く女達が心配そうに見ていた。



取り敢えず宿に入り、タナポトに来たので会いたいという内容の手紙を書いた。魔力探知で侯爵がタナポトにいるのは確認済みだ。



送って暫く待つと、今日夜に会いたいと返信が来た。



手紙を読んでいると服装や使いたい道具の指定が続く。



黒の丈の短いスカートに、同じく黒のコルセットと書かれていて、さてはてと思う。



丈の短いスカートはあるにはあるが、黒は持っていない。アイテムボックスの中にロング丈のスカートがあったので、まだ時間はあるし、と裁縫を始めた。



花嫁修業のうちの一つとして、裁縫は幼いうちから必須で覚えさせられるものだ。



貴族の夫人となれば、繕い物は少ないが、刺繍を入れたりはするので、大抵の貴族令嬢は出来る。



私も仕事上、衣装の指定があったりして、服屋の注文が間に合わないときには取り敢えず自分で作ることも多かった。



ハサミで布を裁つ感覚が嫌いではない。



スカートはすぐに完成し、コルセットに取りかかる。



コルセットはあくまで下着なので上の服に響かない薄い色の物が多い。



流石に中に入っている金属製のボーンを取り外して新しく型をとって縫い付けるには時間が足りないので、スカートを切った余りを上から縫い付けていくことにした。



完成した物を見て、また首を傾げた。着てみて、もう一度首を傾げる。



道具的には傷めのプレイなのだろうが、果たして何を望まれているのかは分からない。



そうこうしているうちに辺りが暗くなってきて、そくさくと準備を始めた。



さっと風呂に入り、良い香りの香油を身体塗りたくる。



軽食や飲み物を宿の主人に言って用意させた。

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