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王都へ
しおりを挟む「リル先生?」
ギルドを出たところで、探していたランダ達を見つけることが出来た。
4人とも冒険者を始めて暫く経っている。段々と姿も様になってきていた。
4人とはアルムブルクで再会したときに、『金色の踊り子』として冒険者をしていることを言っていた。
ルイ以外は『だから強かったのですね!』と納得していたが、ルイからは
『何危ないことしてるんですか。』
と凄まれた。
その場は適当に謝罪して終ったが、『まだ何か秘密にしてることあるんじゃないですか。』と疑われている。
まあその話は置いておいて。
「探してたよ。」
そう言って4人を連れていつも私の泊まっている宿に行く。
「リル様、どうしたのですか?」
サヨが聞いてくる事に対しては取り敢えず答えず、座るように促した。
4人が着席したのを確認し、話を切り出す。
「帝国に宣戦布告されたみたいなの。」
重たい空気が流れる。
四人とも元は先の戦争によって困窮していた子ども達だ。
戦争というものにはそれぞれ思うところがあるのだろう。
「村は、大丈夫なのでしょうか。」
母親を村に残してきたサヨが顔色を変えて心配そうに言う。
国境沿いにある村だ。
何かあれば略奪の対象となる可能性もあるし、学校が見付かれば面倒なことになる可能性もある。
「はっきりと大丈夫とは言えない。でもネストラ婆様には前もって伝えてあるから何かしてくれてるとは思う。もし異変があれば私に連絡をするように伝えてるから安心してちょうだい。」
今のところは何の連絡もない。
まだ開戦間もなく、国境付近の前線での小競り合いが続いているのみだと言う話を第二王子から聞いていた。
彼も明日には出立する。先ほど転送魔法にて第二王子には少し遅れて追いかけると事情を説明している。
返信はまだ来ていないが、彼もきっと色々対応に追われているのだろう。
村に影響が出るのはもう少し先だろうか。
幸い冬が終っている。戦争が始まれば山を降りて近くの町に避難すると言っていた。
それでも国境付近であることに変わりはないが、幾分かはマシだろう。
「あなた達は何も心配せず、この街にいなさい。間違っても村に戻ろうとはしないこと。今貴方達が村に戻れば皆の迷惑にもなりかねない。それは分かるよね?」
言い聞かせると、納得していないような顔をしている者や、村が心配なのかそわそわとしている者、不機嫌そうに顔を歪める者、顔色を全く変えないで私を見ている者など反応は様々だった。
しかし全員今村に戻る危険性の理解はしているようで、
「リル様。」
顔色を変えないで私を見詰めていたルイが口を開く。
「貴女はどうするのですか。」
まだSランク冒険者が戦争に参加する話は公表されていない。だからルイが知る筈もないのだが、何故か彼は私が行くことを知っているような気がする。
「まさか前線に行くとか言わないですよね。」
ギクリ、と伺い見るとやっぱり私のことをじっと見詰めていた。
そんな私を全員が
「行くんだ。」
「行くんですね。」
「そっちの方が危ないのでは?」
「リル様.....」
とそれぞれ言い始める。
「いや、あのね。.......ちゃんと説明するわ。」
4人に王命が下り、Sランク冒険者は全員参戦することが決まっている、と伝える。第二王子との繋がりは匂わせないようにして、王命によりというところを強調する。
「何だそれ?結構やばいんじゃねーの?」
ディーンが言う。
結構やばい、というのは確かにそうで、本来軍属の者や新たに徴兵された者で軍を組むものを、国内の治安維持を担う冒険者の、しかも最高戦力を戦争に投入するというのはやっぱりちょっと状況的におかしい。
しかもこんな開戦当初に、というのが怪しいところだ。
「多分、向こうの戦力が思った以上に多かったとかだと。流石に私も王命には逆らえないし行くしかないかな。」
心配をかけないよう、何でもないことのように言ってみたけど、一人納得してないのもいる。
ルイは何を言っても納得なんてしないだろうな。
「明日、王都に行くから暫くは此処にも顔を出せないと思う。あなた達なら大丈夫だとは思うけど気を付けて。」
言えば、皆不安そうな顔をしながらも頷いてくれた。
準備をするからと4人を帰して、私は王城に上がるための支度をする。
流石にいつもの服装では不敬に当たるだろう。
少し良いものを着ていくことにする。
ーーーーーー
次の日、ギルドでマスターとロア君と落合い、
共に王都へと転移した。
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