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光る粉とか落ちてくんの?
しおりを挟むのろのろと起き上がるランダとルイ、ミキ様が周囲を見回して暫く目をパチパチとさせていた。
「なんか、ちっさい人がいる。」
ミキ様が呟いて、ランダが呆然としている。
「此処は??」
「花しぐれの最深部です。」
ひらひらといつもの薄桃色の花びらが舞う。
「桜って異世界にもあるんだー。」
ポツリ、と呟いたミキ様はどこか寂しそうな顔をしていた。この花はミキ様の世界の花だったのだと、それを聞いて初めて知る。
この世界では見たことのないものだったので、今までは花しぐれにしか無いものだと思っていたが。
かつての勇者の記憶を覗いた花しぐれが作ったものなのかもしれない。
「それで、リル様。この人は?」
パンパンと土埃を払ったルイが、戸惑ったように聞いてくる。
「花しぐれ、という…精霊のような方です。」
精霊、と呟いたのは誰だったか。
精霊とは普通、姿の見えないものだ。人が魔法を使うときに力を貸してくれる存在とされている。
ランダはそんな精霊に興味津津といった具合で花しぐれをじっと見ていた。
「なにそれ。振ったら光る粉とか落ちてくんの?空飛べるようになるやつ。」
ミキ様が花しぐれを摘んで持ち上げようとして、逃げられていた。
「お主、今我を摘んで振ろうとしたじゃろ!!」
何をするのだとミキ様を睨む花しぐれだが、当のミキ様はこてんと首を傾げた。
「着せ替え人形みたいなのに喋るんだ。変なの。」
「くぅ、こやつが勇者で無ければ一緒に行動したくないタイプの人間じゃの。」
困ったことに確かにミキ様はそういうタイプの人間だ。本人としては悪気は無いのだろうが、何となく人とズレているというか。
悪い人では無いのだが。
「まあ、いいや!花しぐれだっけ?よろしくー。」
こうして花しぐれが一行に加わることとなった。
ダンジョンはどうするのかと聞けば、
「我の魔力で出来たダンジョンだが、少なくともあと数百年は我がいなくても大丈夫だろう。」
とのことで、暫く空けることとなった。
「落ち着いたらさ、皆でお花見とかしたいな。」
ポツリ、ミキ様が言った言葉に花しぐれがうむ、と頷いた。
「初代の勇者は花見が好きだったな。矢張り、ニホンジンというのは好きなものなのか。」
「んー?んー、そうだね。好きな人は多いんじゃん?」
懐かしむような顔をした花しぐれ。
数千年経っても記憶が薄れないものなのだろうか。
だとしたら、それはそれで辛いことも多いのかもしれない。
「落ち着いたら、ですか。」
ルイが重たい息を吐き出しながら言った。
果たして、この国が落ち着くのは何年後だろうか。
考えるだけで心が重たかった。
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