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リリスとしての仕事 勇者結城の場合
夜になるまで待機室として用意された天幕の中で待機させられた。外では戦場から引き上げてきた兵達の愚痴を漏らしているのが聞こえてくる。
どうやら回復魔法を使える者の数が不足しているらしい。
治療が進まず苛立っているようだ。
グロイスター公爵は初手とは打って変わって積極的に敵軍を攻めるようになっているようで、それに対する不満もあるのだろう。
こんなことなら第2王子軍の陣営に行くのであった、とちらほらと聞こえてくる。
第二王子は上手く戦を進める事が出来ているらしい。
「第2王子って凄い人なのね。皆が彼を称えているわ。」
「…………普通の青年ですよ。」
そう言えばルーナは笑って、
「良い女の前では男なんて凡夫以外になり得ないものなのよ。」
と言った。
「リリスは綺麗なんだから、もっと自信を持ちなさいよ。謙虚すぎるわ。」
そんな小言が落ちてきたので、首を振る。
「私はこのくらいで良いんです。」
高飛車過ぎて客に呼ばれなくなったら困るし、お金は大事だし、客から何かお父様達の情報を引き出せる可能性もある。
私にとって客に嫌われるのは死活問題だった。
「ふーん。まあ、貴女が良いのなら良いんだけど。」
そろそろかしら、誰か呼びに来ないかとキョロキョロしながらルーナが呟いた。勇者達が就寝の準備するタイミングで従者が私達を呼びにくるとのことで、公爵に挨拶してからかなりの時間を待たされている。そろそろ暇な時間を潰すのが苦痛になってきていた。
この待ち時間にもマスター達は戦っているのだ。
早く戻りたい。焦りのような気持ちが湧いてくる。
ーーーーー
「案内します。」
呼ばれたのはすっかり夜も更けてからだった。
ルーナはうたた寝をしていたが、呼ばれてすぐに起きだした。
従者に連れられて、勇者のいるという天幕へと向かう。
「勇者様。公娼を連れてまいりました。」
従者が声を掛け、天幕の中へと入るように促される。ここから先は彼は来ない様子だ。
ペコリと軽い会釈をして中に入る。
「えっ。」
「誰?」
入ると2人の少年がこちらを見て固まっていた。
ルーナと一瞬視線を合わせる。
これは二人共初物臭いなと。
「リリスと申します。」
「ルーナよ。」
ルーナは勇者を特別扱いするようなことも無いようで、いつも通りの態度であった。
「グロイスター公爵様より、勇者様を癒やすようにと仰せつかっております。」
片方が、
「癒すって?」
と首を傾げる。
純情そうなその様子に少しだけ罪悪感を覚えた。
ルーナはそんな男の様子が新鮮な様子で、ケラケラと声を上げて笑った。
「私、あの子が良いわ。」
そう耳打ちされて頷く。
相手が決まって腹が据わる思いがした。
ミキ様の同級生と…なんて、少しだけモヤモヤするものの、これは仕事だ。そう気持ちを切り替えた。
貴族の子供を相手したことは沢山ある。
女を覚えさせる為に年頃の子どもの元へと娼婦を呼ぶ貴族は珍しくなかった。
私もそれで呼ばれることはあった。
そういう相手は暫く呼ばれた後、切れてしまう事が多かった。今回もきっとそうだろう。若い男というのは沢山の出会いを求める。
「出ていってもらえませんか?」
ルーナの選ばなかった方が、こちらを見て淡々と告げた。
これは少し苦戦するかもしれないな、私はそう思いながらどこか楽しいような気持ちがするのだった。
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