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マックスマッハ号
しおりを挟む第二王子・帝国の連合軍は快進撃を遂げていた。元々、帝国が苦戦していたのは経験豊富なティーザー侯爵などの第二王子軍に加え、単体での戦闘能力が高いマスター達を始めとする第二王子派だったことが大きい。
それらが抜けた王国軍はすっかり負けが続くようになっていた。
しかし、炎翼の導き手やマックスマッハ号などの冒険者都市、ラクシャから冒険者が集められていると聞く。そちらに当たると少し苦戦する様だった。その対策について、話し合っていた。
炎翼の導き手はかつて、私達とも戦場を共にした。彼と対峙するのは心苦しい。
「マックスマッハ号…ですか…。」
かつて所属していたチームの名前を聞いたロア君が、地図を見ながら苦い顔をした。
「そんな雑魚、わたくし達の敵ではありませんわ!」
勢いが良いのはラダだ。
彼女はラフィとしてエルフ達と交流し魔法を教えて貰うことが増え、元々のポテンシャルの高さもあって、着実に力を付けていた。
「各々、思うところはあるだろうが、堪えてくれ。明日は炎翼の導き手率いるこの軍を落とす。アドラー公爵、貴方が指揮を取れ。」
第二王子が淡々と告げるその命令に、私は頷いた。
「必ず勝利を貴方の手に。」
ーーーーーーーーーーーーー
太陽がまだ登りきっていない時分に私達は出発した。
いつものメンバーとしては、マスター、ロア君、ラダ、ミキ様、そしてランダとルイがいた。
ディーンとサヨは別部隊での支援に回る。
「炎翼の導き手かー…。」
マスターがやりにくいね、と呟いたのにロア君が頷いた。彼と共に戦ってから、そう日にちも経っていない。短期間で変わってしまった自分達の立場に、何とも言えない気持ちになる。
「マックスマッハ号ってさそういえば何だっけ。」
「冒険者のチームですよ。ラクシャの街で有名な。」
「へー。強いの?」
冒険者と聞いてマスターの目が輝いた。
「どうでしょう。私も会ったことが無いので何とも…ロア君はどう思います?」
「踊り子さんとマスターなら単騎で落とせると思います。…魔法使いの妹君が治癒術師なのですが…呪術も使えるので僕とは相性は悪いですね。ランダ君、ルイ君、勇者様、ラダと組めば何とかなると思います。」
「呪術使いかあ。私も苦手だなー。」
呪術とは、魔法を展開する際に負の効果を付加するものだ。使い手は少ないが…。
「マスター、人間の呪術は上位竜の呪術よりは効果は低いですよ…。」
マスターはかつて、上位竜の討伐に苦戦した。それは相手が呪術使いだったからだと聞いている。
私は同席していないので詳細は分からないが…苦戦しつつも単騎で突破したと聞いている。
「あっそー?それなら何とかなるかなー?」
「マスターは地力が違いすぎますからね…。」
ロア君が苦笑いを浮かべた。
「ロア君も出来ると思うよー。グワって感じで振りほどくの。あとはまあ…人間だったら動きも遅いし、呪術展開する前に倒しちゃえば良いんじゃない?」
マスターの無茶振りは聞かなかったことにして、ミキ様とランダにマジックボックスから出した魔導書を投げ渡し、馬を止めるように合図する。
「先生?」
「呪術に対抗する魔法です。今覚えなさい。」
「にゃるほどー。んじゃ、ミキちゃんは私の後ろにおいでー。」
「無茶すぎー。」
ケラケラと笑ったミキ様がマスターの後ろに跨った。
「お姉様!わたくしは?!」
「ラダは治癒魔法の適性が全く無いので使えないと思います。」
呪術を解くのは一種の治癒だ。
適性が無いものを覚えても意味はない。
「そんなあ…。」
その後は肩を落としたラダをロア君が僕は魔法はさっぱりだからラフィが羨ましい、と慰めるのを生暖かく見つめていた。
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