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いっしょにいるために
しおりを挟むうるうると大きな瞳に涙をためるエミリーちゃん。可愛いね。食べてしまいたい。
「俺は君と(色々な意味で)仲良くしたいよ。君だけと仲良くしたい。けど、そうだな。こうして会うたびエミリーちゃんが俺に人間の良いところを教えてくれたなら、もしかしたら気が変わるかもしれないね」
「本当ですか!?」
「ふふ」
「良かったぁ」
泣き顔に満面の笑みをうかべるエミリーちゃんを、俺は無性に抱きしめたくなった。
『魔王さんはどうしてわたしに優しくしてくださるのですか?』
そうたずねてきた彼女は、出会い頭に俺が口走った言葉をおそらく覚えてはいない。
『俺と結婚してください!!!』
あのときどうしてそう言ってしまったのか、俺は自分でもわからなかった。困惑した。
しかしいま、この胸に宿る想いが何なのか。
はっきりとわかる。
俺は君が好きだよ、エミリーちゃん。
君がたとえ、敵だとしても。
だけど君は聖女で、俺は魔王。
普通ならば、共になれぬ運命。
だから俺は決めたよ。
君とずっといっしょにいるために。
君をこちら側に引き入れる。
俺に依存させて、聖女の肩書を捨てでも魔王と共に生きたいと思わせればいい。
大事に大事にしてあげる。
だから早く俺を好きになって。
聖女の君は俺が殺してあげる。
そうして君は悪魔に生まれ変わり、俺の妻になるんだよ。ふふ。
逃さないよ、エミリーちゃん。
「ところでエミリーちゃん、初めて会ったときから思ってたんだけど、その聖女の服って誰がデザインしたのかな? とっても可愛いけど、あまり防御には向いていない気がするね」
大事なところが辛うじて隠れるくらいの、ヒラヒラのついた水着を思わせる白い薄布。素晴らしけしからん。
「あ、これは教会の神父様が作ってくださっていて。わたしもちょっと心許ないのですが、これが聖女の正装だとおっしゃるので。あっ、おチチのところがちょっとやぶけてる! ごめんなさい、お目汚しですよね。でも大丈夫です。神父さまが色々なデザインの聖女服を作ってくださっているので着替えはたくさんあるのですよ! いまお着替えを──魔王さん?」
エミリーちゃんの肩をつかみ、俺はにーっこりと問いかけた。
「その神父の名前はなんというのかな?」
「東の正教会所属の、ジェイ・ジェフリーさまです」
指をパチンと鳴らす。
影がうごめく。
刺客は放たれた。
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