笑い替わりの十字架

みどりいろ

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掟とペット

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「あなた様も苦労してたのですね。」

心血鬼はニコッと、淀んだ笑顔を見せた。
明らかに作り込まれた彫刻に一周回って感心するほどだ。

「俺の事も殺すのか?」 

「いえいえ、貴方には生きて貰わないと困りますね。貴方は私の賭け候補ですから。」

「…賭け候補?」

「はい、我々吸血鬼は貴方様たちを賭けてます。貴方様達が人を殺せば、それは貴方様達を推薦した鬼のポイントとなります。
そして、"推薦権"と言って、貴方様達、"被推薦者”が殺した人間のみ私達は食べる権利が与えられます。
さらに、ポイントを貯めれば様々な使い道が増え、今回みたいに自ら人を殺す事も出来ます。故に貴方様が人を殺せている間は私は貴方様を狙いません、安心して下さい。」


俺とコイツは奴隷契約のようなもので結ばれてるって事か。 

「分かった、俺はお前に従う。」

「ハハッ、分かってもらえて光栄です。」

「ただし、条件を1つ!」

「…条件を言える立場ですか?」

空気が変わった、コイツを纏うオーラが冷たくなるような感覚に陥るが俺は屈せず言い返した。

「あぁ、言えるさ。俺が仕事をしなければお前はポイントが入らないし、飯も食えない。つまり俺次第でお前の立場は変わる。」

「ハハッ、我々を脅すとは何たる精神。でも、その考えには大きな穴があります。それは…。」

「それは、"俺を食えばいい”。か?」

「…模範回答です。」

そりゃそうだ。俺を殺してアホそうなの捕まえれば、そいつが人を殺してポイントが入る構成が復活しちまうからな。

「でも、それだとルールに矛盾が出来る。違うか?」

これは小さい根拠を信じた賭けだ。成功するかは五分五分だが、どう繋がるか…。

「ハハハッ!貴方様には驚かされてばかりで楽しい反面、少しイライラして来ますね。」

よし!ビンゴ!!

俺を喰うって事は、自分の駒を本人が喰うだけの食事になっちまう。それはゲームじゃなくなっちまうからやっぱりコイツは俺を喰えない。

仮に、ポイントを貯めて"被推薦者を殺す権利”という特典があり、それを得たとしても俺が働かなければコイツはポイントを得れない!

「しかし、貴方様はまだまだ爪が甘いですね。」

…なんだと。

俺は焦った。条件によっては俺を殺せる手段がまだあるということか?

「いつ私がペット(被推薦者)は貴方様1人だけだと言いましたか?」

なっ!?その可能性か…。

「貴方様と他にあと数十人私のペットがいますが、あの方達は今3rdステージに居ますので会うのはまだ先になります。」

ん?

「ちょっと待て、3rdテージって言ったか?」

俺は突っ掛かるものがあり、それを尋ねた。

「はい、3rdステージ。御察ししたようなので話します。ここには4段階のステージがあり、今貴方様がいるのは"才能の間”、才能のテストです。そして次に行くのが"頭脳の間”、そして3rdステージ、"血戦”。と、まぁざっくりとこんな感じですね。」

ざっくりすぎだろ…。でも、これでここのシステムも少しは知れた。

「それで味方は詳しく言うと何人ぐらいなんだ?」

「50人です。」

他に後50人か…。思考が止まった。たったの50人という数字は俺の中で意外なものだった。

被推薦者は多ければ多いほど有利に立てるだろうにたったの50人…。

「他の吸血鬼はだいたい何人ぐらいの駒(被推薦者)がいるんだ?」

俺は敵の強さを知る為に尋ねると、心血鬼は腕を組み考え始めた。

「えーっと、吸血鬼によりますが、他は大体80人前後、多い所では100人ほどの規模の者たちもいます。」

「ひゃっ!?100人規模にどうやって俺ら50人で勝てって言うんだよ!?」

「はい、まぁピンチですよね。」

「なんでそんな落ち着いてんだよ。」

「でも大丈夫です。今ファイナルステージは冷戦で止まっています。貴方様が加われば51人でなんとかやっていけます。」

かさ増しにもなってねーよ。

「先の心配より、今の心配をした方が良さそうですよ。」

「どう言うことだ?」

「アチラの方で妻を殺した殺人親父と、生徒を虐殺した化学教師の殺し合いが今終わったらしいですから。」

心血鬼は嬉しそうにそう言った。

「俺は勝った方と戦わなきゃいけないのか?」

「はい。」

何を今更という顔で俺に言ってきた。

殺し合いか…。

心臓が更に唸り、緊張と恐怖心で頭が一杯になる。

「ふふっ、何があっても貴方は人を殺さないといけなくなるんです」

「…どういうことだ?」

心血鬼はとっておきの宝物を自慢するように誇らしげな顔でこう言った。

「あなたの師匠はお腰が悪いんでしたっけ?」

「…なぜそれを知っている」

嫌な予感と持ちきれない憎悪が溢れる。

「そんな怖い目で見ないで下さいよ。ちょっとした脅しです」

「…てめえ」

腹の底から怒りが湧いてくるのが分かった。俺の殺意を増やす為にコイツは師匠を人質に取りやがった。この糞野郎が。

「では、アチラの準備が整ったそうなので、戦場に連れて行きます。」

俺の心を読んで、長居は無用と感じたのか、ことの運びを早めた。

「あ、それと、言い忘れてましたが…」

"あなたの父を殺した犯人を私は知っています"

…は?親父は事故で…

俺の心の声を聞き流し、心血鬼は俺を別の場所に移動させた。

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