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第一章 感情をなくした少年冒険者が笑顔を取り戻すまでのお話
第6話
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「もう一度だけ、聞かせて下さい。私に治癒魔法を使っちゃって大丈夫だったんですか?」
デリアの質問に僕は答えた。
「大丈夫」
治癒魔法の残りは3回。もう1回戦闘があってもこれだけ残っていれば、大丈夫だろう。
デリアは笑顔で言った。
「また、笑顔で言ってくれましたね。ありがとうございます」
今の僕は笑顔だったのか。自分ではよく分からなかった。
◇◇◇
陽は沈んでしまった。
だけど、僕たちの目の前には城内でいくつもの篝火を焚くノルデイッヒの町があった。
間にあった……のだろう。
僕はロスハイムのギルドの所属証があるし、デリアはもともとノルデイッヒの市民だから、やはり所属証明を持っている。
城門さえくぐればクエスト達成だ。そして、その城門はすぐそこに見えている。
やっと終わった。そう思った。その時……
◇◇◇
「キャーッ」
デリアの悲鳴が上がった。
何事かと振り向いた僕のの右肩にもその一撃は襲った。
ぐっ、これは「矢!」
城門が見えて気が緩む瞬間を狙って待ち伏せしてやがったのか。なんて性質の悪い。だが、今はそんなことを言っている場合じゃない。
「デリア。矢が狙っている。伏せてっ!」
デリアが伏せたのを確認してから、僕は周囲を確認した。僕たちを初撃で倒せなかったことを知った敵は更に射撃を加えてくる。
だが、敵ほど夜目の利かない僕にとって、相手の位置の手掛かりにもなる。
僕は槍を振り回し、矢を撥ね返しながら、矢の飛んで来る方向に突進した。
僕は超人じゃない。槍の回転で、全ての矢を叩き落とすことなど出来なかった。
いくつもの矢が僕の体のあちこちに刺さった。僕は心臓や喉の急所にだけは当たらないように気を付けて、突進を続けた。
最後の最後で気を緩めたのは、明らかに僕のミスだ。だけど、引き受けたクエストは何としても達成しなければならない。
それは僕が誇り高いロスハイムのギルドの一員だからだ。僕が『無謀死にぞこないのグスタフ』の弟子だからだ。そして、僕の大事な依頼主デリアを守りたいからだ。
僕の突進にもかかわらず、敵は射撃を続け、僕の体はハリネズミのようになった。
それでも突進を止めない僕に、ついに敵は逃走を開始した。その時にはもう僕は敵が視認できるところまで近づいていた。
「ここまで好き放題やってくれて、逃げられてたまるかよっ!」
僕が投げた槍は敵の胴体を貫き、敵はドウッと音を立てて倒れた。
僕は敵に刺さった槍を引き抜き、背中から心臓の位置に正確に刺し直した。
心臓から噴水のように血液が噴き出した。
◇◇◇
僕は槍を杖代わりにして、やっとデリアの所へたどり着いた。
「デリア。起きて。もう、敵は倒したよ」
むっくりと起き上がったデリアは僕の姿を見て、驚愕した。
「クルト君。そのたくさんの刺さっている矢は?」
「僕は大丈夫。さあ、デリアに刺さっている矢を抜くよ。ちょっと痛いけど我慢して」
僕はデリアに刺さっていた矢を一気に抜いた。デリアの悲鳴が上がる。
そして、僕はデリアに残っていた治癒魔法3回を全部かけた。
「もうこれで大丈夫。痛くもないし、傷跡も残らない」
「そんなことより、クルト君っ、クルト君は大丈夫なんですか?」
「僕は大丈夫。でも、ちょっと疲れた。少しだけ休ませて」
僕はそのまま気を失った。
◇◇◇
目を覚ました僕が見たのは、魔法の火が灯るシャンデリアの下がった豪華な天井だった。
ここはロスハイムにあった僕の家? いや、そんな筈はない。あの家は「売掛金のカタ」として取り上げられた筈だ。
僕はむっくりと起き上がった。凄く綺麗な寝台。だが、ロスハイムの屋敷にあったものとは種類が違う。傷跡が痛む。でも、15個もっている治癒魔法は全て使えるようになっていた。いい休養がとれたらしい。
僕は自らに3回治癒魔法をかけた。痛みは完全にひき、傷跡も消え失せた。
だけど、それにしてもここはどこなのだ? 宿屋だとするとまずい。多分、宿泊費で今回の報酬は全て消し飛ぶ。いや、下手すると不足分が出る。困った。ノルデイッヒのギルドで金を借りるか。嫌だな。自分が所属する所以外のギルドで金を借りると利息が高いんだ。
僕がそんなことを考えながら佇んでいると、僕に気が付いた使用人らしき人が、奥に向かって声をかけた。
「お嬢様。お客様がお目覚めになりましたよ」
◇◇◇
その「お嬢様」は全速力で僕のいる部屋に駆け込んで来た。
「クルト君。良かった。気が付いたんですね」
デリア。ここはデリアの家? ということは、僕はデリアに助けられた? となると・・・・・・
「うわああ。今回のクエストの報酬はパーか」
僕は頭を搔きむしった。
「どうしてそうなるんですか? クルト君は私をノルデイッヒまで護衛してくれたじゃないですか? そのクエストの報酬は支払いますよ。私も商人の娘です。契約は遵守します」
「違うよ。そういうことじゃないんだ」
僕はデリアに説明した。
第一に僕がデリアを護衛したのはノルデイッヒの城門前までであって、ノルデイッヒそのものではない。
第二に僕はデリアの家まで運んでもらった上、休養場所の提供を受けた。また、刺さっていた矢を抜いてもらうという治療行為を受けた。これには対価を支払わねばならない。
「ふぅー」
デリアは大きな溜息を吐いた。
「クルト君は本当に真面目ですねえ」
デリアの質問に僕は答えた。
「大丈夫」
治癒魔法の残りは3回。もう1回戦闘があってもこれだけ残っていれば、大丈夫だろう。
デリアは笑顔で言った。
「また、笑顔で言ってくれましたね。ありがとうございます」
今の僕は笑顔だったのか。自分ではよく分からなかった。
◇◇◇
陽は沈んでしまった。
だけど、僕たちの目の前には城内でいくつもの篝火を焚くノルデイッヒの町があった。
間にあった……のだろう。
僕はロスハイムのギルドの所属証があるし、デリアはもともとノルデイッヒの市民だから、やはり所属証明を持っている。
城門さえくぐればクエスト達成だ。そして、その城門はすぐそこに見えている。
やっと終わった。そう思った。その時……
◇◇◇
「キャーッ」
デリアの悲鳴が上がった。
何事かと振り向いた僕のの右肩にもその一撃は襲った。
ぐっ、これは「矢!」
城門が見えて気が緩む瞬間を狙って待ち伏せしてやがったのか。なんて性質の悪い。だが、今はそんなことを言っている場合じゃない。
「デリア。矢が狙っている。伏せてっ!」
デリアが伏せたのを確認してから、僕は周囲を確認した。僕たちを初撃で倒せなかったことを知った敵は更に射撃を加えてくる。
だが、敵ほど夜目の利かない僕にとって、相手の位置の手掛かりにもなる。
僕は槍を振り回し、矢を撥ね返しながら、矢の飛んで来る方向に突進した。
僕は超人じゃない。槍の回転で、全ての矢を叩き落とすことなど出来なかった。
いくつもの矢が僕の体のあちこちに刺さった。僕は心臓や喉の急所にだけは当たらないように気を付けて、突進を続けた。
最後の最後で気を緩めたのは、明らかに僕のミスだ。だけど、引き受けたクエストは何としても達成しなければならない。
それは僕が誇り高いロスハイムのギルドの一員だからだ。僕が『無謀死にぞこないのグスタフ』の弟子だからだ。そして、僕の大事な依頼主デリアを守りたいからだ。
僕の突進にもかかわらず、敵は射撃を続け、僕の体はハリネズミのようになった。
それでも突進を止めない僕に、ついに敵は逃走を開始した。その時にはもう僕は敵が視認できるところまで近づいていた。
「ここまで好き放題やってくれて、逃げられてたまるかよっ!」
僕が投げた槍は敵の胴体を貫き、敵はドウッと音を立てて倒れた。
僕は敵に刺さった槍を引き抜き、背中から心臓の位置に正確に刺し直した。
心臓から噴水のように血液が噴き出した。
◇◇◇
僕は槍を杖代わりにして、やっとデリアの所へたどり着いた。
「デリア。起きて。もう、敵は倒したよ」
むっくりと起き上がったデリアは僕の姿を見て、驚愕した。
「クルト君。そのたくさんの刺さっている矢は?」
「僕は大丈夫。さあ、デリアに刺さっている矢を抜くよ。ちょっと痛いけど我慢して」
僕はデリアに刺さっていた矢を一気に抜いた。デリアの悲鳴が上がる。
そして、僕はデリアに残っていた治癒魔法3回を全部かけた。
「もうこれで大丈夫。痛くもないし、傷跡も残らない」
「そんなことより、クルト君っ、クルト君は大丈夫なんですか?」
「僕は大丈夫。でも、ちょっと疲れた。少しだけ休ませて」
僕はそのまま気を失った。
◇◇◇
目を覚ました僕が見たのは、魔法の火が灯るシャンデリアの下がった豪華な天井だった。
ここはロスハイムにあった僕の家? いや、そんな筈はない。あの家は「売掛金のカタ」として取り上げられた筈だ。
僕はむっくりと起き上がった。凄く綺麗な寝台。だが、ロスハイムの屋敷にあったものとは種類が違う。傷跡が痛む。でも、15個もっている治癒魔法は全て使えるようになっていた。いい休養がとれたらしい。
僕は自らに3回治癒魔法をかけた。痛みは完全にひき、傷跡も消え失せた。
だけど、それにしてもここはどこなのだ? 宿屋だとするとまずい。多分、宿泊費で今回の報酬は全て消し飛ぶ。いや、下手すると不足分が出る。困った。ノルデイッヒのギルドで金を借りるか。嫌だな。自分が所属する所以外のギルドで金を借りると利息が高いんだ。
僕がそんなことを考えながら佇んでいると、僕に気が付いた使用人らしき人が、奥に向かって声をかけた。
「お嬢様。お客様がお目覚めになりましたよ」
◇◇◇
その「お嬢様」は全速力で僕のいる部屋に駆け込んで来た。
「クルト君。良かった。気が付いたんですね」
デリア。ここはデリアの家? ということは、僕はデリアに助けられた? となると・・・・・・
「うわああ。今回のクエストの報酬はパーか」
僕は頭を搔きむしった。
「どうしてそうなるんですか? クルト君は私をノルデイッヒまで護衛してくれたじゃないですか? そのクエストの報酬は支払いますよ。私も商人の娘です。契約は遵守します」
「違うよ。そういうことじゃないんだ」
僕はデリアに説明した。
第一に僕がデリアを護衛したのはノルデイッヒの城門前までであって、ノルデイッヒそのものではない。
第二に僕はデリアの家まで運んでもらった上、休養場所の提供を受けた。また、刺さっていた矢を抜いてもらうという治療行為を受けた。これには対価を支払わねばならない。
「ふぅー」
デリアは大きな溜息を吐いた。
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