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第四章 少女冒険者 嵐の前の恋と戦いと
第28話
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私たちは十分な休養が取れ、次の日にはロスハイムに向かって出発した。
一番、驚いたのは野盗の数の多さだ。
この日1日だけで4組の野盗の襲撃を受けた。幸い、昨日現れたような、強力な者はいなくて、うち2組は初手で「雷光」を放ったら、恐れをなして逃げて行った。
もう一つ、問題なのは、明らかにこちらの様子を窺っていたが、こちらがそこそこ強いと見抜いて、襲撃してこなかったのが少なくとも2組ほどいたことだ。
この数は異常だ。クルト君とも話して、このことはロスハイムのギルドに戻ったら、ゼップさんやハンスさんとも相談しようということになった。
◇◇◇
「最大の理由はこれだろうね」
ナターリエさんはギルド内部を指して言った。
若い人が多い。その6割くらいが女の子だ。
「ロスハイムのギルドは風通しが良く、年が若いとか、女だからとかで一切不利な扱いはしない。だから、こんなに若い女の子が集まってきた。だけどね......」
「!」
「それを汲みしやすい相手だと考える野盗が結構いるってことだよ」
私は愕然とした。
「そっ、そんな。ギルドが活性化したことで、そんな悪影響が出るなんて」
「ふっ」
ナターリエさんは静かに笑った。
「悪影響とは言い切れないよな。カトリナ」
「そうだよね。叔母さん」
その陰にはやはりにたりと笑うカトリナちゃん。
えっ? えっ? お二人とも何か怖いんですけど……
◇◇◇
「大体、ロスハイムのギルドに若い女の子が多くなったということで、汲みしやすいなんて思って、のこのこやって来る野盗は大した奴らじゃないよ」
淡々と話すナターリエさん。
「そうそう。油断は禁物だけど、こちら側がきちんと訓練した上で戦闘に臨めば、そう怖い相手ではありません。むしろ……」
続けて話すカトリナちゃん。
「格好の経験値と金稼ぎのための獲物になる」
最後は二人でハモる。何か凄いよ。この叔母と姪。
だけど感心ばかりもしていられない。このことは伝えておかないと……
「確かにロスハイム周辺の野盗に強い者はいませんでしたが、ノルデイッヒからそう離れていないところで戦闘した5人組の野盗は強くて、クルト君と私のパーティーも相当苦戦しました。1人には逃げられましたし……」
「ほう……」
ナターリエさんの目が光った。
「それは聞き捨てならないね。そういうのがいるとなると、不慣れなパーティーを送り出すのは危険だ。よしっ!」
ナターリエさんはカトリナちゃんに向かって、振り向いた。
「カトリナ。ノルデイッヒの近くであるクエストを幾つか見繕ってくれるかい? こなしがてら、あの辺の様子を探って来る。それとしばらく、不慣れなパーティーはノルデイッヒ方面のクエストは請け負わせないように。デリアちゃんも頼むよ」
「はっ、はい」
私もギルド受付嬢を辞めた訳じゃない。これは心に留め置かなければならないことだ。
◇◇◇
かくて、ロスハイムのギルド最強、いや、周辺の町を含めても最強であろう、ハンスさんとナターリエさんを主軸とするパーティーはノルデイッヒ方面の探索に出発した。
そして、ロスハイムのギルドでは、カトリナちゃんが講師の「武術」講習が強化されることになった。早い話がより一層スパルタになったのである。
「ようしっ! じゃあ、今日はまずは私とデリアちゃんの模範試合から始めようか」
わあっ 周囲から歓声が上がる。杖を構えるカトリナちゃんの目は爛々と輝いている。うーん。やる気満々だね。
と思ってたら、早くも杖を大上段に構え、突進してきた。勢い強そうだな。あまり、真正面から受け止めたくない。
さて、右に回避するか、左に回避するか、などと考えていると、む、カトリナちゃん、何も考えずに突進しているように見せかけてるけど、実は私の目の動きで回避する方向を探っているな。
ならば...... 私はあえて真正面に杖を構え、カトリナちゃんの攻撃をあえて受け止めるポーズをしてみせた。
周囲の視線も熱い。ふふふ。ここはやったるよ。
いよいよ、カトリナちゃんが近づき、杖を振り下ろしてくる。よし、ギリギリまで耐えて、右へ回避っ!
更に隙の出来たカトリナちゃんの左わき腹から背中を私の杖で狙って......
◇◇◇
「ぐほお」
左わき腹を痛打されたのは私の方だった。
まともに息が出来ないくらい苦しいが、ここでその場で倒れこむと情け容赦なく二撃三撃が背中に来る。
辛うじて右手で杖を拾い、距離を取る。
私が距離を取ったことを確認したカトリナちゃんは、見ている子たちに問いかける。
「はい。デリアちゃんは、私の突進を真正面で受け止めるポーズをしましたが、実際は自分の右側に回避しました。この動きを予測できた人はいますか?」
殆どの子は顔を見合わせ、分からなかったと言い合っているが、何と4人の子が手を挙げた。えっ? そんなにばれてた?
カトリナちゃんは笑顔で手を挙げたうちの1人の子に問いかける。
「そこのあなた。どうして分かったのですか?」
指名された子は、少しはにかみながら答える。
「デリアさんは真正面からカトリナさんを見据えてましたが、右足が少しだけ右の方を向いていました。それで気が付きました」
「正解です。みなさん、彼女に拍手を」
カトリナちゃんの呼びかけに大きな拍手がわく。くっそー。足にまで気が回らなかった。
それにしても初心者4人に気づかれるとは。私もまだまだだ。鍛錬せねば。
一番、驚いたのは野盗の数の多さだ。
この日1日だけで4組の野盗の襲撃を受けた。幸い、昨日現れたような、強力な者はいなくて、うち2組は初手で「雷光」を放ったら、恐れをなして逃げて行った。
もう一つ、問題なのは、明らかにこちらの様子を窺っていたが、こちらがそこそこ強いと見抜いて、襲撃してこなかったのが少なくとも2組ほどいたことだ。
この数は異常だ。クルト君とも話して、このことはロスハイムのギルドに戻ったら、ゼップさんやハンスさんとも相談しようということになった。
◇◇◇
「最大の理由はこれだろうね」
ナターリエさんはギルド内部を指して言った。
若い人が多い。その6割くらいが女の子だ。
「ロスハイムのギルドは風通しが良く、年が若いとか、女だからとかで一切不利な扱いはしない。だから、こんなに若い女の子が集まってきた。だけどね......」
「!」
「それを汲みしやすい相手だと考える野盗が結構いるってことだよ」
私は愕然とした。
「そっ、そんな。ギルドが活性化したことで、そんな悪影響が出るなんて」
「ふっ」
ナターリエさんは静かに笑った。
「悪影響とは言い切れないよな。カトリナ」
「そうだよね。叔母さん」
その陰にはやはりにたりと笑うカトリナちゃん。
えっ? えっ? お二人とも何か怖いんですけど……
◇◇◇
「大体、ロスハイムのギルドに若い女の子が多くなったということで、汲みしやすいなんて思って、のこのこやって来る野盗は大した奴らじゃないよ」
淡々と話すナターリエさん。
「そうそう。油断は禁物だけど、こちら側がきちんと訓練した上で戦闘に臨めば、そう怖い相手ではありません。むしろ……」
続けて話すカトリナちゃん。
「格好の経験値と金稼ぎのための獲物になる」
最後は二人でハモる。何か凄いよ。この叔母と姪。
だけど感心ばかりもしていられない。このことは伝えておかないと……
「確かにロスハイム周辺の野盗に強い者はいませんでしたが、ノルデイッヒからそう離れていないところで戦闘した5人組の野盗は強くて、クルト君と私のパーティーも相当苦戦しました。1人には逃げられましたし……」
「ほう……」
ナターリエさんの目が光った。
「それは聞き捨てならないね。そういうのがいるとなると、不慣れなパーティーを送り出すのは危険だ。よしっ!」
ナターリエさんはカトリナちゃんに向かって、振り向いた。
「カトリナ。ノルデイッヒの近くであるクエストを幾つか見繕ってくれるかい? こなしがてら、あの辺の様子を探って来る。それとしばらく、不慣れなパーティーはノルデイッヒ方面のクエストは請け負わせないように。デリアちゃんも頼むよ」
「はっ、はい」
私もギルド受付嬢を辞めた訳じゃない。これは心に留め置かなければならないことだ。
◇◇◇
かくて、ロスハイムのギルド最強、いや、周辺の町を含めても最強であろう、ハンスさんとナターリエさんを主軸とするパーティーはノルデイッヒ方面の探索に出発した。
そして、ロスハイムのギルドでは、カトリナちゃんが講師の「武術」講習が強化されることになった。早い話がより一層スパルタになったのである。
「ようしっ! じゃあ、今日はまずは私とデリアちゃんの模範試合から始めようか」
わあっ 周囲から歓声が上がる。杖を構えるカトリナちゃんの目は爛々と輝いている。うーん。やる気満々だね。
と思ってたら、早くも杖を大上段に構え、突進してきた。勢い強そうだな。あまり、真正面から受け止めたくない。
さて、右に回避するか、左に回避するか、などと考えていると、む、カトリナちゃん、何も考えずに突進しているように見せかけてるけど、実は私の目の動きで回避する方向を探っているな。
ならば...... 私はあえて真正面に杖を構え、カトリナちゃんの攻撃をあえて受け止めるポーズをしてみせた。
周囲の視線も熱い。ふふふ。ここはやったるよ。
いよいよ、カトリナちゃんが近づき、杖を振り下ろしてくる。よし、ギリギリまで耐えて、右へ回避っ!
更に隙の出来たカトリナちゃんの左わき腹から背中を私の杖で狙って......
◇◇◇
「ぐほお」
左わき腹を痛打されたのは私の方だった。
まともに息が出来ないくらい苦しいが、ここでその場で倒れこむと情け容赦なく二撃三撃が背中に来る。
辛うじて右手で杖を拾い、距離を取る。
私が距離を取ったことを確認したカトリナちゃんは、見ている子たちに問いかける。
「はい。デリアちゃんは、私の突進を真正面で受け止めるポーズをしましたが、実際は自分の右側に回避しました。この動きを予測できた人はいますか?」
殆どの子は顔を見合わせ、分からなかったと言い合っているが、何と4人の子が手を挙げた。えっ? そんなにばれてた?
カトリナちゃんは笑顔で手を挙げたうちの1人の子に問いかける。
「そこのあなた。どうして分かったのですか?」
指名された子は、少しはにかみながら答える。
「デリアさんは真正面からカトリナさんを見据えてましたが、右足が少しだけ右の方を向いていました。それで気が付きました」
「正解です。みなさん、彼女に拍手を」
カトリナちゃんの呼びかけに大きな拍手がわく。くっそー。足にまで気が回らなかった。
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