ロスハイムストーリー(異世界で少年少女が出逢い、周りを巻き込んで成長していくお話)

水渕成分

文字の大きさ
28 / 36
第四章 少女冒険者 嵐の前の恋と戦いと

第28話

しおりを挟む
 私たちは十分な休養が取れ、次の日にはロスハイムに向かって出発した。

 一番、驚いたのは野盗の数の多さだ。

 この日1日だけで4組の野盗の襲撃を受けた。幸い、昨日現れたような、強力な者はいなくて、うち2組は初手で「雷光サンダー」を放ったら、恐れをなして逃げて行った。

 もう一つ、問題なのは、明らかにこちらの様子を窺っていたが、こちらがそこそこ強いと見抜いて、襲撃してこなかったのが少なくとも2組ほどいたことだ。

 この数は異常だ。クルト君とも話して、このことはロスハイムのギルドに戻ったら、ゼップさんギルドマスターハンスさん取りまとめ役とも相談しようということになった。

 ◇◇◇

 「最大の理由はこれだろうね」
 ナターリエさんはギルド内部を指して言った。

 若い人が多い。その6割くらいが女の子だ。

 「ロスハイムここのギルドは風通しが良く、年が若いとか、女だからとかで一切不利な扱いはしない。だから、こんなに若い女の子が集まってきた。だけどね......」

 「!」

 「それを汲みしやすい相手だと考える野盗が結構いるってことだよ」

 私は愕然とした。
「そっ、そんな。ギルドが活性化したことで、そんな悪影響が出るなんて」

 「ふっ」
 ナターリエさんは静かに笑った。
 「影響とは言い切れないよな。カトリナ」

 「そうだよね。叔母さん」
 その陰にはやはりにたりと笑うカトリナちゃん。

 えっ? えっ? お二人とも何か怖いんですけど……

 ◇◇◇

 「大体、ロスハイムここのギルドに若い女の子が多くなったということで、汲みしやすいなんて思って、のこのこやって来る野盗は大した奴らじゃないよ」
 淡々と話すナターリエさん。

 「そうそう。油断は禁物だけど、こちら側がきちんと訓練した上で戦闘に臨めば、そう怖い相手ではありません。むしろ……」
 続けて話すカトリナちゃん。

 「格好の経験値と金稼ぎのための獲物になる」
 最後は二人でハモる。何か凄いよ。この叔母と姪。 

 だけど感心ばかりもしていられない。このことは伝えておかないと……
 「確かにロスハイム周辺の野盗に強い者はいませんでしたが、ノルデイッヒからそう離れていないところで戦闘した5人組の野盗は強くて、クルト君と私のパーティーも相当苦戦しました。1人には逃げられましたし……」

 「ほう……」
 ナターリエさんの目が光った。
 「それは聞き捨てならないね。そういうのがいるとなると、不慣れなパーティーを送り出すのは危険だ。よしっ!」

 ナターリエさんはカトリナちゃんに向かって、振り向いた。
 「カトリナ。ノルデイッヒの近くであるクエストを幾つか見繕ってくれるかい? こなしがてら、あの辺の様子を探って来る。それとしばらく、不慣れなパーティーはノルデイッヒ方面のクエストは請け負わせないように。デリアちゃんも頼むよ」

 「はっ、はい」
 私もギルド受付嬢を辞めた訳じゃない。これは心に留め置かなければならないことだ。

 ◇◇◇

 かくて、ロスハイムここのギルド最強、いや、周辺の町を含めても最強であろう、ハンスさんとナターリエさんを主軸とするパーティーはノルデイッヒ方面の探索に出発した。

 そして、ロスハイムここのギルドでは、カトリナちゃんが講師の「武術」講習が強化されることになった。早い話がより一層スパルタになったのである。

 「ようしっ! じゃあ、今日はまずは私とデリアちゃんの模範試合から始めようか」

 わあっ 周囲から歓声が上がる。杖を構えるカトリナちゃんの目は爛々と輝いている。うーん。やる気満々だね。

 と思ってたら、早くも杖を大上段に構え、突進してきた。勢い強そうだな。あまり、真正面から受け止めたくない。

 さて、右に回避するか、左に回避するか、などと考えていると、む、カトリナちゃん、何も考えずに突進しているように見せかけてるけど、実は私の目の動きで回避する方向を探っているな。

 ならば...... 私はあえて真正面に杖を構え、カトリナちゃんの攻撃をあえて受け止めるポーズをしてみせた。

 周囲の視線も熱い。ふふふ。ここはやったるよ。

 いよいよ、カトリナちゃんが近づき、杖を振り下ろしてくる。よし、ギリギリまで耐えて、右へ回避っ!
更に隙の出来たカトリナちゃんの左わき腹から背中を私の杖で狙って......

 ◇◇◇
 
 「ぐほお」
 左わき腹を痛打されたのは私の方だった。

 まともに息が出来ないくらい苦しいが、ここでその場で倒れこむと情け容赦なく二撃三撃が背中に来る。
辛うじて右手で杖を拾い、距離を取る。

 私が距離を取ったことを確認したカトリナちゃんは、見ている子たちに問いかける。
 「はい。デリアちゃんは、私の突進を真正面で受け止めるポーズをしましたが、実際は自分の右側に回避しました。この動きを予測できた人はいますか?」

 殆どの子は顔を見合わせ、分からなかったと言い合っているが、何と4人の子が手を挙げた。えっ? そんなにばれてた?

 カトリナちゃんは笑顔で手を挙げたうちの1人の子に問いかける。
 「そこのあなた。どうして分かったのですか?」

 指名された子は、少しはにかみながら答える。
 「デリアさんは真正面からカトリナさんを見据えてましたが、右足が少しだけ右の方を向いていました。それで気が付きました」

 「正解です。みなさん、彼女に拍手を」
 カトリナちゃんの呼びかけに大きな拍手がわく。くっそー。足にまで気が回らなかった。

 それにしても初心者4人に気づかれるとは。私もまだまだだ。鍛錬せねば。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...