27 / 80
第27話 はい、あーん
しおりを挟む
いつものようにカレンと登校し、学校に着いたがどうも男子生徒に覇気がない。
「どうしたんだ、なんか男連中元気がないな。女連中は逆にギラギラしてるけど…」
「わかんない、私もボーリング疲れたから、眠い…」
カレンは珍しく寝坊をしたのだが、ゆすって起こすと「おはようのチューで目覚めたかった」とお姫様みたいな発言をしてきたので俺は朝からドギマギしていた。
ほんとこいつただのキス魔なのか?それとも…
少しカレンを意識しているところに純也が通りかかった。明らかにやつれていた。
「おはよう、なぁ純也みんなどうしちゃったんだ?」
「なんだ快斗か…お前こそあの画像を見てよく平気でいられるな…」
あの画像?なんかあったっけ?
「純也、俺なんも送られてきてないぞ?」
「はぁ?見てみろよ、これだよ」
純也が見せてくれた画面は、メラニーさんのあの画像だった。
しかも解像度アップしてる…
「これのせいで土日ずっと一人でしてたよ…昨日なんか意識失って病院運ばれたし」
「いやいやいや、もう人間の自制心もぶち壊しちゃうのあの人?もう人殺せそうだよねこの写真!」
あの人の手にかかれば世界征服も楽勝なんじゃないか…?
ていうかなんで俺の携帯だけきてないんだよ!くそ命先輩め、あとで文句言ってやる。
「ママ、おかず」
「すんごいパワーワードだねそれ!でもよそでは絶対に言わないでね頼むから!」
いやほんとメラニーさんは目隠しして幽閉でもしとかないとこの国が沈むんじゃないか?
男どもの大半が土日ずっと引きこもっていたせいで、女子たちは鬱憤が溜まっていた。
ギラギラ、いやムラムラした視線がなぜか俺に浴びせられる。
「チェリーは元気そうね。」
「今日はあいつで我慢しとく?」
「そうねぇ…でもカビ生えてないかしら?」
ひそひそと話す声が聞こえてくる。
いや、ほんとカビは生えないんだって!その噂の情報元はどこなんだよ!
今日の様子だとカレンは安心そうだな。
むしろ心配なのは俺の方だ…
蓮水さんの時も奇跡的に?助かっただけで、次に襲われたらどうなるか…
教室にいくと、いつもなら絶対にあり得ないことが起こっていた。
「チェリーをよこしなさいよ!」
「だめよ、あたしが先に目を付けたのよ!」
「あいつ童貞だから何回ももたないわよ!私が先!」
なんとまぁ、チェリー争奪戦になっていた…
クラスの男子が使い物にならないとわかった途端、唯一元気な俺を求めて女たちの闘いが…いや開幕すんなよそんなもん!
「快斗、今日はモテモテだな…さしずめチェリーから中段チェリーに昇格ってとこか」
「いやだからなんでスロットの小役なんだよ!なにか確定しないから!!」
確定しているとすれば、俺はこの一年間自ら童貞を捨てれないという事実だけだ…
女子たちの俺を切り刻まんと殺気立つ視線をかわしながらなんとか昼休みになった。
「そうだ、屋上行かないと」
俺は昨日のメールで呼び出された通り屋上へ向かった。
屋上は、扉に立ち入り禁止とは書いてあるものの、誰も監視してないし鍵も開いている。
何回か一人になりたいと思って屋上に来たことがあるのだが、まぁ誰とも会ったことはない。一体誰が俺を?
屋上に着くと、広い屋上の真ん中に誰かが立っていた。
「げ、蓮水さん…」
「あれ、チェリーじゃん。」
「なんの用ですか?僕は童貞捨てる気はありませんよ。」
「用?なんのことさ?私もここに呼ばれてんだけど?」
あれ?どうやらメールの主は蓮水さんじゃないようだ。
じゃあ誰が?
「それよりさ、チェリーってなんでそんなに童貞捨てたくないの?」
「え?いや、それはですね…」
なんて説明したらいいんだ?
校長の指示でカレンの処女を守っててそれは俺が童貞だからで、童貞じゃなくなると守れなくなって、そんでもって…
いや我ながら意味わからんわ!
本当なら蓮水さんたちに襲われて、気持ちよく童貞捨てて、ラブ高生活をエンジョイしてたかもなのに…
でも、それはもうできないよ…だって俺…
「もしかして好きな子、いるとか?」
ドキッ!
「え、いや、そんな…」
え、俺いまドキッとした!?
好きな子…
真っ先に、というかカレンの顔ばかりが浮かんでくる。
これってもしかして…
ってもしかしてもくそもあるかい!
え、この気持ちって…とか、胸が痛い…とかねぇわ!
好きだわ!大好きだわ!あんなかわいい子と毎日一緒にいて毎日キスされて懐かれて好きにならんわけないだろ!
あーもう、そうだな…カレンが好きだから他の人とはしたくないんだよなぁ…
「もしかしてあの一年の子?校長の娘なんだってね、でもやめときなよあの子は。」
「え、なんでですか?」
「だって処女なんでしょ?」
「いやその方が良くないですか!?あんたらの基準どうなってんの!?」
「え、処女だよ?処女なんてほんとに存在するの?怖くない?」
「みんな最初はそうでしょうが!あんただって生まれた時はそうだったの!」
怖いのはあんたらの価値観だよ…
貞操観念というものが卒業するまでに崩壊していくカリキュラムでも組まれてんのかこの学校は!?
「別に俺が誰を好きでも蓮水さんには関係ないでしょ?」
「そうね、でも正直男誘って断られたの、あんたが初めてなんだ。だからさ、ちょっとあんたに興味が…って私なに話してんだろね…」
ん?
なんか急にエモかったぞ…
「いや、興味というかただの好奇心でしょあんたらのは…」
「最初はそうだったんだけどね、私もなんか自分の気持ちわかんなくなってきちゃった…」
んん?んんん?
待て、待て待て待て、これは…ラブコメしちゃってないか?
「いやいやいや、他の人と一緒で溜まっちゃってるだけでしょ?だって…」
「そうかもね、でも、ちょっとだけこうしていい?」
俺は何を言おうとしたのかもう覚えてもいないのだが、確かなことは蓮水さんが今、俺の胸に額を当てて寄りかかっているという事実が目の前にある…
え、う、嘘だ!嘘だと言ってくれ!
なんだこのラブコメ!?え、ちょっと淫乱気味なめちゃかわギャルの先輩が童貞拗らせてるやつにうっかり恋しかけてるだと!?
この話校長に書いてほしいわ!!
なんかいい香りが…
それに蓮水さんって改めてみると華奢だよな…
「あ、あの…離れてもらえませんか…」
「なんで?誰もいないんだからいいじゃん…」
ぐおー!なんだよこれ!なんだよこれー!
屋上だけ時が止まったみたいに静かだ…
多分だけど誰も来ない…
長い髪から覗く蓮水さんの首なんて折れそうなほど細い…
「やめてください蓮水さん、そういうことされても俺は…」
「いいよ?都合良い女でも…」
だー!!!
これは…据え膳食わねば…たしかにカビが生えそうだ…
そうだ…カビ、カビががが…
バンっ!
おれの理性が宇宙にさようならしかけた瞬間に屋上の扉が開いた音がして、俺は思いっきり後ろにすっ飛んだ。
まさに童貞、危機一髪だった…
振り返ると、不機嫌そうなカレンが立っていた。
「お前、どうしたの?」
「お弁当持ってきた、ここにいるって言われたから。」
え、今日のいつ作る時間があったんだ?
もしかして早く起きて作ってくれて、二度寝してたから寝坊したのか…
「誰、それ」
え、なんかしらんけどカレンがめっちゃ怖い…
「あんたが校長の娘ね、あんたこそ何しにきたのよ?」
いやいや何この状況…
なんで勝手に修羅場になってるの!?
ていうか俺を呼んだやつはどこ行ったんだよ!
「快斗のお弁当、持ってきたの。一緒に食べるの。」
「ふーん、でもお取込み中だからお子ちゃまは帰ってくれる?」
いやこれ何と何が喧嘩してんだよ!
彼女でもないし浮気相手でもないし…
「快斗は私と毎日チューしてる。」
「それがなに?私なんかホテル行ったわよ?」
うわ、それ言っちゃダメだろ!
ていうか何の張り合いだよ!
「ホテル…ホテル!?」
カレンがすごい形相で俺を睨んできた…
「違うって!この人が勝手に俺を誘拐したの!何もしてないから、なんならアンに聞いてくれ!」
「でも黙ってた。やましいことあった。」
「ないないない!」
あの俳優さんやあのスポーツ選手も、みんなこんな修羅場経験したの!?
こんなになってまで浮気したくないよ…いや俺は浮気どころか本命ともまだだけど!童貞だけど!
「でもチェリーのパンツは赤だったわね」
「いらんこと言うなって!」
なぜか俺をめぐっての女の闘いが…ってなんで今日はこんなのばっかなんだよ!
「はぁ…まぁいいわ、なんかしらけた。それに私を呼んだやつも来ないみたいだし今日は帰るわ。」
なんか知らんがおさまった?
「帰れ、しっしっ」
「挑発すんなよカレンさん!」
案外カレンって気が強いのか…?
「そうそう、あんたのこと狙ってる連中が多いから気をつけな。特に童貞キラーの海神虹子《わだつみこうこ》が動き出したって噂だし。」
海神虹子《わだつみこうこ》
彼女もまた世間で注目を集めるスーパーガールである。
やり投げの選手として活躍する彼女は、昨年日本女子初の70メートルの投擲を見せたことで一気に日本中の注目を集めた。
さらに彼女、やり投げの選手とは思えないほど細く、少しキツめの顔をしているが、相当な美人だ。
珍しい名前とそのルックスも相まって今スポーツ界で彼女のことを知らない人はいないとかなんとか。
別名トライデントと呼ばれる彼女とも、俺は面識がある。
彼女へのテレビの取材で一般人がやり投げをするとどれくらいひどいものなのかという比較VTRに出演させられた際に投擲指導をしてもらったのだ。
俺はもちろん投げることなどできず振りかぶった時に頭にぶつけて倒れたが…
その時に会ったきりなのだが…海神さんって童貞キラーとか呼ばれてたの!?
この学校での標的って自動的に俺になるよね!?
「あんたの初めては私がもらうから、せいぜいその子とおままごとしてなさい。じゃね、チェリー」
帰り際にされた蓮水さんのウインクがゲロ可愛かったのだが、見惚れていては死ぬと俺の本能が告げていたので平然を装った…
「あのー…カレンさん…そうだお弁当たべよ、お腹すいたなー」
俺はなんとか機嫌をとろうと誤魔化したが、今日のカレンは一段と機嫌が悪い。
「快斗、デレデレしてた。あれ誰?」
「い、いや、蓮水さんはただの先輩だよ…今日だって偶然会っただけで…」
一体なんの言い訳してんだよ…
「偶然会った人とも仲良くするんだ」
「いやいや、仲良くしてないから!あれはだな…」
いやあれは何だったんだ?あんなかわいい人が俺に惚れるなんて、ほんと最近何が起きてるんだよ…
「ねえ快斗」
「うん?」
「私とあの人どっちが好き?」
な、これは…!?
究極の二択
私と仕事どっちが大事?とか浮気相手を指してあの人のこと本気じゃないよね?とか、どうなっても私を選ばないといけなくなる選択肢を時々女性は要求してくる。
しかしこれは質問させる側の男にも問題があるとされ、愛に飢えた女性の求愛とも言えるとかなんとか…
いや、俺悪いことしたかな!?
それにそんなこと聞くなよな…
「もちろんカレンだよ。」
ぐあー、恥ずかしい…
わかっててもこんなイケメン風な台詞を俺に言わせないでくれー
「ほんと?」
「うんうん、ほんとだって!」
「えへへ、よかった」
なー!!!
可愛いよー、可愛すぎるよー!
俺は屋上で叫び倒したかった…
「じゃあ、お弁当たべよ?」
「あ、ああ。いただくよ。」
なんとかカレンの機嫌を戻したところで弁当を広げた。
「はい、あーん」
「あー…ん?」
これは…真のリア充しか経験することのないと言われる「はい、あーん」なのか?
そうなのか?童貞喪失より先にこっちを経験するやつなんて世の中に存在するのか!?(いや結構いるだろうけど)
「あーん!」
「あ、はい、あー、ん!うまい!」
美味い…わが生涯に一片の悔いなし!!
「快斗、ごはん粒ついてる」
「え、ああ…って、え!?」
俺は久しぶりにカレンからキスされた。
「え、そっちからしてもいいの?」
「ムードがある時はいいの!」
もう俺屋上から降りたくないです…ずっとここがいいです!
昼休みに散々イチャコラした後、屋上を使ったことを先生に死ぬほど怒られた。
カレンは校長の娘ということもありお咎めなし、蓮水さんは先生のお気に入りということでお咎めなしだった…まじでここは教師もクズばっかだな!
しかしあのメールの主は誰だったんだ?
結局わからずじまいというわけか…
そして放課後は校長に呼ばれていた。
借金の件だそうだが、俺もタダでやられるわけにはいかない。
命先輩を連れて行って校長を説得してもらおうと、最近よく行くスタジオに向かったのだが…
次回 童貞キラー、トライデント襲来!さらにあの人が登場し学校は大パニック!?
しかも蓮水さんとの意味不明な三角関係も混沌としてきます…
「どうしたんだ、なんか男連中元気がないな。女連中は逆にギラギラしてるけど…」
「わかんない、私もボーリング疲れたから、眠い…」
カレンは珍しく寝坊をしたのだが、ゆすって起こすと「おはようのチューで目覚めたかった」とお姫様みたいな発言をしてきたので俺は朝からドギマギしていた。
ほんとこいつただのキス魔なのか?それとも…
少しカレンを意識しているところに純也が通りかかった。明らかにやつれていた。
「おはよう、なぁ純也みんなどうしちゃったんだ?」
「なんだ快斗か…お前こそあの画像を見てよく平気でいられるな…」
あの画像?なんかあったっけ?
「純也、俺なんも送られてきてないぞ?」
「はぁ?見てみろよ、これだよ」
純也が見せてくれた画面は、メラニーさんのあの画像だった。
しかも解像度アップしてる…
「これのせいで土日ずっと一人でしてたよ…昨日なんか意識失って病院運ばれたし」
「いやいやいや、もう人間の自制心もぶち壊しちゃうのあの人?もう人殺せそうだよねこの写真!」
あの人の手にかかれば世界征服も楽勝なんじゃないか…?
ていうかなんで俺の携帯だけきてないんだよ!くそ命先輩め、あとで文句言ってやる。
「ママ、おかず」
「すんごいパワーワードだねそれ!でもよそでは絶対に言わないでね頼むから!」
いやほんとメラニーさんは目隠しして幽閉でもしとかないとこの国が沈むんじゃないか?
男どもの大半が土日ずっと引きこもっていたせいで、女子たちは鬱憤が溜まっていた。
ギラギラ、いやムラムラした視線がなぜか俺に浴びせられる。
「チェリーは元気そうね。」
「今日はあいつで我慢しとく?」
「そうねぇ…でもカビ生えてないかしら?」
ひそひそと話す声が聞こえてくる。
いや、ほんとカビは生えないんだって!その噂の情報元はどこなんだよ!
今日の様子だとカレンは安心そうだな。
むしろ心配なのは俺の方だ…
蓮水さんの時も奇跡的に?助かっただけで、次に襲われたらどうなるか…
教室にいくと、いつもなら絶対にあり得ないことが起こっていた。
「チェリーをよこしなさいよ!」
「だめよ、あたしが先に目を付けたのよ!」
「あいつ童貞だから何回ももたないわよ!私が先!」
なんとまぁ、チェリー争奪戦になっていた…
クラスの男子が使い物にならないとわかった途端、唯一元気な俺を求めて女たちの闘いが…いや開幕すんなよそんなもん!
「快斗、今日はモテモテだな…さしずめチェリーから中段チェリーに昇格ってとこか」
「いやだからなんでスロットの小役なんだよ!なにか確定しないから!!」
確定しているとすれば、俺はこの一年間自ら童貞を捨てれないという事実だけだ…
女子たちの俺を切り刻まんと殺気立つ視線をかわしながらなんとか昼休みになった。
「そうだ、屋上行かないと」
俺は昨日のメールで呼び出された通り屋上へ向かった。
屋上は、扉に立ち入り禁止とは書いてあるものの、誰も監視してないし鍵も開いている。
何回か一人になりたいと思って屋上に来たことがあるのだが、まぁ誰とも会ったことはない。一体誰が俺を?
屋上に着くと、広い屋上の真ん中に誰かが立っていた。
「げ、蓮水さん…」
「あれ、チェリーじゃん。」
「なんの用ですか?僕は童貞捨てる気はありませんよ。」
「用?なんのことさ?私もここに呼ばれてんだけど?」
あれ?どうやらメールの主は蓮水さんじゃないようだ。
じゃあ誰が?
「それよりさ、チェリーってなんでそんなに童貞捨てたくないの?」
「え?いや、それはですね…」
なんて説明したらいいんだ?
校長の指示でカレンの処女を守っててそれは俺が童貞だからで、童貞じゃなくなると守れなくなって、そんでもって…
いや我ながら意味わからんわ!
本当なら蓮水さんたちに襲われて、気持ちよく童貞捨てて、ラブ高生活をエンジョイしてたかもなのに…
でも、それはもうできないよ…だって俺…
「もしかして好きな子、いるとか?」
ドキッ!
「え、いや、そんな…」
え、俺いまドキッとした!?
好きな子…
真っ先に、というかカレンの顔ばかりが浮かんでくる。
これってもしかして…
ってもしかしてもくそもあるかい!
え、この気持ちって…とか、胸が痛い…とかねぇわ!
好きだわ!大好きだわ!あんなかわいい子と毎日一緒にいて毎日キスされて懐かれて好きにならんわけないだろ!
あーもう、そうだな…カレンが好きだから他の人とはしたくないんだよなぁ…
「もしかしてあの一年の子?校長の娘なんだってね、でもやめときなよあの子は。」
「え、なんでですか?」
「だって処女なんでしょ?」
「いやその方が良くないですか!?あんたらの基準どうなってんの!?」
「え、処女だよ?処女なんてほんとに存在するの?怖くない?」
「みんな最初はそうでしょうが!あんただって生まれた時はそうだったの!」
怖いのはあんたらの価値観だよ…
貞操観念というものが卒業するまでに崩壊していくカリキュラムでも組まれてんのかこの学校は!?
「別に俺が誰を好きでも蓮水さんには関係ないでしょ?」
「そうね、でも正直男誘って断られたの、あんたが初めてなんだ。だからさ、ちょっとあんたに興味が…って私なに話してんだろね…」
ん?
なんか急にエモかったぞ…
「いや、興味というかただの好奇心でしょあんたらのは…」
「最初はそうだったんだけどね、私もなんか自分の気持ちわかんなくなってきちゃった…」
んん?んんん?
待て、待て待て待て、これは…ラブコメしちゃってないか?
「いやいやいや、他の人と一緒で溜まっちゃってるだけでしょ?だって…」
「そうかもね、でも、ちょっとだけこうしていい?」
俺は何を言おうとしたのかもう覚えてもいないのだが、確かなことは蓮水さんが今、俺の胸に額を当てて寄りかかっているという事実が目の前にある…
え、う、嘘だ!嘘だと言ってくれ!
なんだこのラブコメ!?え、ちょっと淫乱気味なめちゃかわギャルの先輩が童貞拗らせてるやつにうっかり恋しかけてるだと!?
この話校長に書いてほしいわ!!
なんかいい香りが…
それに蓮水さんって改めてみると華奢だよな…
「あ、あの…離れてもらえませんか…」
「なんで?誰もいないんだからいいじゃん…」
ぐおー!なんだよこれ!なんだよこれー!
屋上だけ時が止まったみたいに静かだ…
多分だけど誰も来ない…
長い髪から覗く蓮水さんの首なんて折れそうなほど細い…
「やめてください蓮水さん、そういうことされても俺は…」
「いいよ?都合良い女でも…」
だー!!!
これは…据え膳食わねば…たしかにカビが生えそうだ…
そうだ…カビ、カビががが…
バンっ!
おれの理性が宇宙にさようならしかけた瞬間に屋上の扉が開いた音がして、俺は思いっきり後ろにすっ飛んだ。
まさに童貞、危機一髪だった…
振り返ると、不機嫌そうなカレンが立っていた。
「お前、どうしたの?」
「お弁当持ってきた、ここにいるって言われたから。」
え、今日のいつ作る時間があったんだ?
もしかして早く起きて作ってくれて、二度寝してたから寝坊したのか…
「誰、それ」
え、なんかしらんけどカレンがめっちゃ怖い…
「あんたが校長の娘ね、あんたこそ何しにきたのよ?」
いやいや何この状況…
なんで勝手に修羅場になってるの!?
ていうか俺を呼んだやつはどこ行ったんだよ!
「快斗のお弁当、持ってきたの。一緒に食べるの。」
「ふーん、でもお取込み中だからお子ちゃまは帰ってくれる?」
いやこれ何と何が喧嘩してんだよ!
彼女でもないし浮気相手でもないし…
「快斗は私と毎日チューしてる。」
「それがなに?私なんかホテル行ったわよ?」
うわ、それ言っちゃダメだろ!
ていうか何の張り合いだよ!
「ホテル…ホテル!?」
カレンがすごい形相で俺を睨んできた…
「違うって!この人が勝手に俺を誘拐したの!何もしてないから、なんならアンに聞いてくれ!」
「でも黙ってた。やましいことあった。」
「ないないない!」
あの俳優さんやあのスポーツ選手も、みんなこんな修羅場経験したの!?
こんなになってまで浮気したくないよ…いや俺は浮気どころか本命ともまだだけど!童貞だけど!
「でもチェリーのパンツは赤だったわね」
「いらんこと言うなって!」
なぜか俺をめぐっての女の闘いが…ってなんで今日はこんなのばっかなんだよ!
「はぁ…まぁいいわ、なんかしらけた。それに私を呼んだやつも来ないみたいだし今日は帰るわ。」
なんか知らんがおさまった?
「帰れ、しっしっ」
「挑発すんなよカレンさん!」
案外カレンって気が強いのか…?
「そうそう、あんたのこと狙ってる連中が多いから気をつけな。特に童貞キラーの海神虹子《わだつみこうこ》が動き出したって噂だし。」
海神虹子《わだつみこうこ》
彼女もまた世間で注目を集めるスーパーガールである。
やり投げの選手として活躍する彼女は、昨年日本女子初の70メートルの投擲を見せたことで一気に日本中の注目を集めた。
さらに彼女、やり投げの選手とは思えないほど細く、少しキツめの顔をしているが、相当な美人だ。
珍しい名前とそのルックスも相まって今スポーツ界で彼女のことを知らない人はいないとかなんとか。
別名トライデントと呼ばれる彼女とも、俺は面識がある。
彼女へのテレビの取材で一般人がやり投げをするとどれくらいひどいものなのかという比較VTRに出演させられた際に投擲指導をしてもらったのだ。
俺はもちろん投げることなどできず振りかぶった時に頭にぶつけて倒れたが…
その時に会ったきりなのだが…海神さんって童貞キラーとか呼ばれてたの!?
この学校での標的って自動的に俺になるよね!?
「あんたの初めては私がもらうから、せいぜいその子とおままごとしてなさい。じゃね、チェリー」
帰り際にされた蓮水さんのウインクがゲロ可愛かったのだが、見惚れていては死ぬと俺の本能が告げていたので平然を装った…
「あのー…カレンさん…そうだお弁当たべよ、お腹すいたなー」
俺はなんとか機嫌をとろうと誤魔化したが、今日のカレンは一段と機嫌が悪い。
「快斗、デレデレしてた。あれ誰?」
「い、いや、蓮水さんはただの先輩だよ…今日だって偶然会っただけで…」
一体なんの言い訳してんだよ…
「偶然会った人とも仲良くするんだ」
「いやいや、仲良くしてないから!あれはだな…」
いやあれは何だったんだ?あんなかわいい人が俺に惚れるなんて、ほんと最近何が起きてるんだよ…
「ねえ快斗」
「うん?」
「私とあの人どっちが好き?」
な、これは…!?
究極の二択
私と仕事どっちが大事?とか浮気相手を指してあの人のこと本気じゃないよね?とか、どうなっても私を選ばないといけなくなる選択肢を時々女性は要求してくる。
しかしこれは質問させる側の男にも問題があるとされ、愛に飢えた女性の求愛とも言えるとかなんとか…
いや、俺悪いことしたかな!?
それにそんなこと聞くなよな…
「もちろんカレンだよ。」
ぐあー、恥ずかしい…
わかっててもこんなイケメン風な台詞を俺に言わせないでくれー
「ほんと?」
「うんうん、ほんとだって!」
「えへへ、よかった」
なー!!!
可愛いよー、可愛すぎるよー!
俺は屋上で叫び倒したかった…
「じゃあ、お弁当たべよ?」
「あ、ああ。いただくよ。」
なんとかカレンの機嫌を戻したところで弁当を広げた。
「はい、あーん」
「あー…ん?」
これは…真のリア充しか経験することのないと言われる「はい、あーん」なのか?
そうなのか?童貞喪失より先にこっちを経験するやつなんて世の中に存在するのか!?(いや結構いるだろうけど)
「あーん!」
「あ、はい、あー、ん!うまい!」
美味い…わが生涯に一片の悔いなし!!
「快斗、ごはん粒ついてる」
「え、ああ…って、え!?」
俺は久しぶりにカレンからキスされた。
「え、そっちからしてもいいの?」
「ムードがある時はいいの!」
もう俺屋上から降りたくないです…ずっとここがいいです!
昼休みに散々イチャコラした後、屋上を使ったことを先生に死ぬほど怒られた。
カレンは校長の娘ということもありお咎めなし、蓮水さんは先生のお気に入りということでお咎めなしだった…まじでここは教師もクズばっかだな!
しかしあのメールの主は誰だったんだ?
結局わからずじまいというわけか…
そして放課後は校長に呼ばれていた。
借金の件だそうだが、俺もタダでやられるわけにはいかない。
命先輩を連れて行って校長を説得してもらおうと、最近よく行くスタジオに向かったのだが…
次回 童貞キラー、トライデント襲来!さらにあの人が登場し学校は大パニック!?
しかも蓮水さんとの意味不明な三角関係も混沌としてきます…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
高校生なのに娘ができちゃった!?
まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!?
そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる