校長からの課題が娘の処女を守れ…だと!?

明石龍之介

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第30話 もやし、たらし

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俺たちがグランドに来ると、なぜかすでに大勢のギャラリーが待ち構えていた。

「トライデントー!今日もすごいの見せてくれ!」
「海神《わだつみ》さーん!世界記録期待してまーす!」

すごい人気だな…

そして何故か新聞記者のような連中も多数いて、カメラを構えている…
え、情報回るの早すぎない!?

「勝負は三回投げて、より良い記録を残した方の勝ち。」

「海神《わだつみ》さん、この人が代わりに投げるんだけど、やり投げ始めてらしいから教えてあげて欲しいんだけど…」

アンは静かに頷いた。

「ええ、わかりました。それではアンさん?でしたっけ、こちらへどうぞ。」

アンはやり投げについての指導を受け出した。

「まぁ仮にも世界チャンピオンなんだからすぐに覚えるかもな」

「アン…もやしなら大丈夫」

「今わざわざ言い直したよね!?無理にもやしって呼ばなくてもよくない!?」

「もやしの方がかわいい」

「あ、そうですか…」

かわいいか?

アンはしばらく黙々と指導を受けていた。

どんな感じで教えてるんだろ?
俺の時なんか筋が悪すぎてとりあえず投げろとか言われたもんな…

「アンさん、すごく筋がいいですね!このまま続ければ日本ランカーもすぐですよ。とりあえずしばらくは基礎を続けて本格的な投擲は来週からにしましょうか。」

アンは静かに頷いた。

「いやいや、今日は何するの!?勝負はどこいったんだよ!?今日本格的に投げろよ!」

アンってそんなに素質あるのか…?

「そ、そうでした、つい…。それでは30分後に試合開始としましょう。」

ふぅ…やっぱり海神《わだつみ》さんもアホなのか…ま、人に向けてやり文《ぶみ》を投げつけてくる人がまともなわけないけど…

「なぁ、もしアンが負けたらどうしよう?走ってにげる?」

「じいを呼ぶ」

「いや、殺しにきてるよね!?」

人斬りVS槍使いか…もうなんの話かわからんわ!

アンが指導を受けてる間俺とカレンは特にすることがなくボーッとしていた。

「そろそろ時間かな?海神《わだつみ》さん、アンはどうですか…っておい!」

アンと海神《わだつみ》さんは見つめあっていた…

「ああ、アン…どうしてもっと早く貴方に出会えなかったの?こんな素晴らしい投擲をする人初めて…よかったら今晩、どう?」

アンは静かに頷いた。

「だから勝負はどうしたんだよ!?それにアン!平然と高校生を抱こうとするな!」

「あら、まだいたのチェリー?」

「え、帰っていいの!?だったらそいつ置いて帰るわ!」

アンは静かに頷いた。

「お前絶対俺のこと邪魔だと思ってるだろ!?」

アンは静かに頷いた。

「もう勝手にしろよ!」

え、勝負は?これどうなるの?

俺がよくわからない心配をしていると、ギャラリーも痺れを切らしてヤジを飛ばしてきた。

「おーい、まだかよー?はやくしろー」
「投げないんなら帰るぞー」

いやほんとごもっともだわ…投げないんなら俺達も帰っていいかな…

するとアンが急にやりを握った。

「アン!?もう少しだけ待って!貴方が遠い人になっちゃいそうで、私怖い…」

「虹子、愛してる」

「アン…」

「いやこれなに見せられてるの!?アンも急に高校生を愛するなよ!」

アンは静かに舌を出した。

「いやお前ほんとはお茶目だろ!?」

「お、なんか男の方が投げるぞ?」
「なんだあいつ、もやしみたいだな」

ギャラリーがざわつく中、アンはやりを担ぎ助走に入った。

「フン」

綺麗なフォームで放たれたやりはこれまた綺麗な放物線を描いて、グランドの端の方まで飛んでいった…

「おおー!これやばいぞ、85mは超えてるんじゃないか!?」
「おい、記事を差し替えろ!あの男を一面だ、早く!」

誰かが長いメジャーを持ってきて測ると、86m52cmだったそうです…

「今季世界最高記録だ!すげー、サインくれー」

ギャラリーが一斉にアンの元に走り出したのを見て、俺はカレンを連れて寮に帰った…

いやまじでこの時間返せよ!

「アンのやつ、あんなくせにモテるんだな…やっぱり運動できる男子ってそれだけで人気でるもんなー」

「もやし、たらし」

「なんかすんごくゴロがいいなそれ!?」

たらしなの?無口なたらしって何!?

結局トライデントの脅威はもやしの愛に包まれて消えた…
え、童貞キラーは!?準童貞は!?校長への愛は!?
全部どこいったんだよ!?

疲れた…何もしてないのに疲れたよ…

寮につくと、また知った顔の人が立っていた。

「遅かったな、チェリー」

「薬師寺さん!?なんの用ですか…変な気疲れしてるんで今日は勘弁してください…」

俺達は無視して寮に入ろうとした。

「待て!お前にメールを送ったり、刺客をよこしたりしたやつの正体、知りたくはないか?」

「え、別にいいです…」

疲れてるから明日にしてくれ…

「いやいやいや、待て待て!なぜそいつがお前の童貞を執拗に狙うのか、気にならないか?」

「え、どうせ大した理由じゃないでしょ。じゃあ」

「待て待て待て、いやお願い待ってって!俺がそいつの正体を知っている、そう言ったらどうだ?」

「あとでラインください…」
俺はカレンを連れて寮に入った。

なにか外でワーワー言っているが、今日はもうこれ以上アホの相手をしたくなかった…

だいたい察しがついていたのだが、俺の童貞をつけ狙う黒幕は薬師寺さんだった、と自らラインを送ってきた…

でも目的はまだわからないが、今度本人に聞こうと思って既読スルーした。

「カレン、疲れたよー。なんか元気出ることしてよー」

俺は甘えてみた。

「うん、わかった。」

そういうとカレンは部屋に戻っていった。

いや、そこはお疲れ様のキスがほしかったのに…

ま、借金もなくなったしこれでしばらく平和かもな…
ソファーでウトウトしていると、カレンが部屋から出てくる音がした。

「長かったな、なにしてたの…のー!?」

そこにはなぜかメイドの恰好をしたカレンがいた。
しかも所々カスタムされていて、へそは出てるわスカートは短いわで、完全にそっちのお店用のやつだ…

「え、その恰好どしたの?」

「ママがくれた。これで男はイチコロ」

「なにを教えてるんだあの母親は!」

いや、でもこれは…もう俺は撃ち抜かれていた…

「ねえ快斗」

「うん?」

「エッチしたい」

「久しぶりにきたねそれ!ちょっと言い方可愛くなったけど!」

ツッコんではみたものの、メイド姿のカレンに迫られて俺の理性様がお空のお星様になりそうだった。

「待て待て待て!そ、そうだ、こういうことはだな、段階ってのがあるんだよ。」

「段階?」

「そうそう、二人で遊園地とかいったり、デートを重ねて仲良くなって、ムードが出てきたところでするもんなんだ。だから今はダメ!」

散々チュッチュしまくっておいて今更それ言うなよとはツッコまないでくれ…

「遊園地…遊園地行きたい!」

「そ、そうか。じゃ次の週末あたり行ってみるか?」

「うん!えへへ、楽しみ」

ぬわー!その恰好で微笑むなー!

俺はカレンが着替えている間にその残像で一人慰めた…

翌日からは平和?だった。

海神《わだつみ》さんは完全にアンに鞍替えしたようで、俺にやりを投げつけてきては、『アンに彼女はいるの?』と手紙で聞いてきた。
いやもうこの時点で平和ではないぞ!

アンにメールをしてみると、『ああ、そんなやつもいたな』と帰ってきた。
いややっぱりあいつたらしなのか!?

そして校長は謎の出張で学校を空けていた。
お前万が一の時のために一人で逃げようとしてただろ!

薬師寺さんは俺に何か言いたそうに近づいてくるが、俺が無視し続けるととても寂しそうだった。
もしかしてだけど、あの人友達いないんじゃないか…

そんな中でも最近一番厄介なのは蓮水さんだ…

もう毎時間俺の教室にきて「週末なにしてるー?」とか
「お昼一緒に食べよー」とかとにかくアピールがすごい…
そんでもって人気はすごいから来るたびにクラスの男子から俺は睨まれている。
更に蓮水さんファンクラブと名乗る連中から脅迫状まで届く始末だ…

でも放課後は特になにもなく過ぎていき、いつものようにカレンとまったりと過ごしていたのだが…

「カレン、明日は休みだから約束通り遊園地行こうか。」

「うん、行く!快斗はどんな服が好き?」

「明日の服装?そうだなー、でも絶叫系とか乗るんならスカートよりパンツスタイルの方がいいんじゃないか?」

「うん、わかった。」

「おまえ、パンツの意味勘違いしてないだろうな…?」

「知ってるもん、着てくる。」

なんだ、さすがにそこまでバカじゃないか…
ああ、明日はデートかー。
なんかここまで長かったなー、俺も女の子と遊園地に行ける日がくるなんて…感無量だ!

カレンが部屋から出てきた。

「どれどれ、どんな感じかな…ならら!?」

「パンツスタイル、どお?」

カレンの言っていることはあっている。
別にパンツ一丁で出てきたわけではない。
しかしこれは…ホットパンツ!?
しかもなにそれ、無茶苦茶短くない?もう付け根まで見えそうだよね!?

「いや、カレンそれは…それはダメだろ!」

「なんで?ママいつも履いてるよ」

「じゃあもっとダメだろ!あの人の真似はしていいこと一個もないの!」

メラニーさんのホットパンツ…だと!?
命先輩のパソコンにないか今度聞いてみよう…

「とにかく着替えてこい!普通のジーパンにして!」

「はーい」

カレンは部屋に戻っていった。

しかしあいつ、案外足長かったな…それに真っ白なあの足を…いや、他のやつに見せてたまるか!
そう、俺は独占欲が強いのだ…

明日のためのお弁当を作るとカレンが言い出したので二人でサンドイッチを作ることにした。

「なあ、カレンは玉子サンドとハムどっちが好き?」

「玉子、あとイチゴジャム。あ、快斗ほっぺに玉子ついてる」

「え、どこ…ってえ?」

ほっぺにチューをしてカレンが食べてくれた…

「えへへ、やっぱり玉子おいしい」

うおー、幸せだ、これはそう、幸せだー!
なにこれ?二人で遊園地に行く前日に二人でランチを作る?
ほっぺにチューで玉子とってくれる?もうこんなの童貞の俺には無理ー!
普通のチューよりいいすらあるわこれ!

しばし幸せに浸っていたが、そうそうこんな時間が長く続かないのはお約束だった…
誰かが玄関をノックした。

「はーい?い?」

「やほー、ごめんね週末なのに」

蓮水さんがきた…
いや、頼むから来る前に連絡を…じゃなくて来るなよ!

「ど、どうしたんですか今日は…」

「あのさ、その…日曜日ライブのチケット取れたんだけど、一緒にどうかなって…?」

なんかクソ可愛いギャルが顔を赤くしてモジモジしている…なにこれめっちゃ可愛いんですけど!?

「快斗誰が来たの…出た女豹」

「あら、今日はおままごとでもしてたのおチビちゃん」

あんたが来ると修羅場になるんだって!
だから来る前に連絡を…じゃなくてほんと来るなよ!

「なにか用?」

「あなたに用はないわ。チェリーに日曜日ライブに行こうって誘ってただけよ。文句ある?」

「ライブ…行くの?」

もつカレンの目が殺気だった時の高村さんより怖かった…

「い、いや行かない行かない!蓮水さん、ごめんけど…」

「なによ…そんなに頑なに断られたら私だって…ちょっとは傷つくんだぞ?」

辞めろその上目遣い!ヤバすぎるわ!
だぞ?だぞってなんだよそれ!?顔を赤くするな、もう見てられないくらい可愛いわあんた!

「い、いやあのですね…」

「じゃとりあえず渡すだけ。日曜の17時駅前ね!気が向いたらきてくれると…嬉しいかな?」

いちいち可愛すぎるんだって!

「は、はぁ…」

蓮水さんは颯爽と帰っていった。

「快斗、ヘラヘラしてる」

「してないしてない!それにライブって言ってもなぁ…」

チケットを見ると、そこには『ヘブンスター』と書いていた。

こ、これは…

ヘブンスター

今一番人気のあるロックバンドで、昨年出したシングル『ベイビーインザカーは間違いである』が現代社会を痛烈に皮肉った内容ということもあり、色々と物議を醸したのだが、若者の心を掴み高校生の間では絶大な指示を誇るのである。そして俺も大大大ファンだ…

い、行きたい…行きたいけど…

「行きたいの?」

「いえ、行きたく…ないです…」

「えへへ、よかった」

今日のカレンの笑顔はちょっと怖かった…

そして翌日になり、遊園地に向かうのだが、どうして外出先でもトラブルしか起きないんだと心底自分の運のなさを恨むこととなる…

次回 遊園地デートでイチャイチャしまくる!?

でも休日に刺客がまたやってきて…

さらに日曜日のライブの誘いはどうなる!?

ライブ…行きたいよう…
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