校長からの課題が娘の処女を守れ…だと!?

明石龍之介

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第44話 古き良き時代

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俺は今球場のアルプススタンドで野球部の試合を観ている。
隣にはツレのように校長が座っている…

カレンは蓮水さんたちとチアリーダーの恰好をして、一夜漬けのダンスを踊っている。
結局一回しか練習出来なかったみたいだが、蓮水さんはとても華麗に舞っている。
カレンの踊りは…ちょっと変だな…

カレンのぎこちない仕草も可愛くて、蓮水さんの生足と共に見惚れている俺だが、肝心の試合を見る気がさっぱりおきない…

三回を終わったところで47対0

ラブ高は…負けている。

弱いだけなら、俺も一生懸命応援もする。
頑張ってくれと最後まで声を枯らす。

しかし、しかしだ。
見る気が起こらない原因はそこではない。

この野球部、何もしないのである…


「いやピッチャー以外なんでボール取りにいかないの!?」

まずピッチャーは控えの万浪が先発。
そして万浪以外は歩いて守備位置につく…

万浪が投げる。
一応キャッチャーは取る。

しかし返球しない…

万浪が走ってボールをもらいにいって戻ってまた投げる…

打球が飛ぶ。
外野に飛んだのに万浪がなぜか取りにいっている…
外野手はフェンスにもたれて寝ている…
なんとかボールに追いついて投げようにも誰もとらないからまた外野から万浪が走って戻ってくる…

打つ方は万浪以外誰もバットを持たずに打席に入りもちろん全員三振…

「いや何見せられてんだこれ!?万浪の公開処刑だよねこれ?なんで何もしないの!?可哀想だから動いてあげなよ!」

「ほほ、リンチじゃな。」

「いや言い方変えたらもっとエグいわ!え、これいいの!?健全な部活動は!?」

「いいも何もワシの指示じゃ」

「はぁ!?」

「万浪のやつめ、体育祭でカレンに手を出そうとした罰じゃ。」

「いや公式戦でやるなよ!?いや、そもそもこんなの高校野球でやっちゃダメでしょ!?」

何を考えてるんだ…
でも校長は普段ふざけてるけどこういうこと平気でするんだもんな…怖いやつだ

「でも負けちゃいますよ!?いいんですか?」

「うむ、問題ない。コールドで勝つわい」

なんの強がりなんだと思ったが、四回表に投手が変わった。

「ピッチャー、万浪君に変わりまして、大神《おおがみ》君」

大神刹那《おおがみせつな》
中学で155キロをマークしたことで一躍ニュースが広まり、今では誰もが知る存在だ。
そんな全国から注目される逸材だったが、なぜか急に消息を断って表舞台から姿を消した元スーパー中学生だったのだが…
特徴は腰まで伸びた髪、あれはいいのか?

「え、大神くんってうちにいたの!?あれ?でも右肘なんか固定してない?」

「うむ、トミージョン手術を去年受けたからの」

「いやダメじゃん!」

中学生でもそんなのするもんなの!?
それにどうやって投げるんだ…

しかし凡人の心配など天才には無用だと言わんばかりに、利き腕でない左手で153キロとか出して全員三振に取っていた…

「いやすげえな!最初からだせよ!」

「しんどいから先発は嫌いなんじゃと」

「高校球児にあるまじき発言だな!」

そしてここからはまたリンチを見せられることになる。

全員がバットを持ち出してひたすらピッチャー返しのエゲツない打球を投手に浴びせて向こうの投手は全滅…

そのあとはホームラン競争のようにスタンドに打ちまくり二時間以上ラブ高の攻撃を見せられることになった…

「快斗、疲れた…」

応援団がもうクタクタになっていて、カレンも暑さでへばっていた…

「もう応援しなくていいぞこんなの…なんか飲む?」

「うん、牛乳飲みたい」
「いやここはスポーツドリンクじゃない?喉乾くよ!?」

とりあえず水を飲ませて隣に座らせた。

「快斗暑い、チュー」

「いや、暑いのと全然関係ないし…それに…」

それに隣に校長がいるから気まずい…

「ん、なんじゃ?ワシに気にせずチュッチュせいよ」

「いやほんとにあんたのボーダーラインがわからんわ!」

汗をかいたカレンはちょっと色っぽい…
それになんで女の子って汗かいててもいい匂いするんだろう…

「快斗…」

「カレン?」

「好き…」

なんで今!?
なんか知らんけど死ぬほどドキドキさせられた…

野球の試合はグダグダになっていて、応援団も引き上げていた…
しかし蓮水さんのチアリーダー姿への出待ちが凄いことになっていて球場前には大勢の男が群がっていた…

押し寄せるファンの中には、会長さんや…アンもいた…
いやお前、今は働けよ…
  
カレンファンクラブは相変わらず見たことはないのだが、それがまた不気味である…
多分いつか急に迷惑なことをされるのだろうと覚悟はしているが…


一応俺たちは最後まで試合を見ていたが、こっちが130点くらい取ったところで向こうが降参した…

試合終了の挨拶はなぜか万浪だけがしていた…
そしてグランド整備も万浪と監督らしき人が二人でやっている…

いや出てたメンバー全員どこ行ったんだ!?
お前らが率先してやれよ!

「校長、あんな野球部大丈夫なんですか!?不健全の極みでしょ!?万浪とか先輩なのに上下関係とかどうなってんの!?」

「ほほ、彼らは高い金を積んで連れてきたからの。クセは強いが一流じゃ」

「高校球児に金積むなよ!それにそんなのバレるだろ?」

「いやなに、例えばショートの白鳥《しらとり》くんに支払った5千万円、実家の定食屋でカツ丼10万杯発注したことにしといたら辻褄あうじゃろ?」

「あわねぇよ!1日三千杯出るカツ丼ってなんだよそれ!?急に日本一並ぶお店になっちゃうよね!?」

それに高校生にそんな大金払ってんの!?

いやだからアンにも払ってやれって!

高校野球をなんだと思ってるんだこいつ…

校長は試合終了を見届けてすぐに帰っていった。

俺たちも蓮水さんに注目が集まるうちにコソッと帰った…

帰る途中に稲早田高校の野球部の一人を偶然見かけたが、うわ言のように「野球怖い…」と呟いていた…
ラブ高野球部は人の心まで破壊してしまったようだ…


家でゆっくりしていると、なんかカレンがゴソゴソしている。

「カレン、なにしてるんだ?」

「暑いから泳ぎたい。水着探してる」

まぁまだ昼過ぎだけど、元気だなこいつ…

「どこに泳ぎにいくつもりだ?」

「学校のプール、夏休み使える」

あぁ、確かそうだったな…
まぁ俺は何もしてないしちょっと行ってみるか。

「快斗、準備できた」

「早いな…ってそ、それは!?」

スクール水着

通称スク水。この響きだけで既にエロを感じさせてしまうほど、エロのジャンルに定着しているこの水着だが、そもそもは学校の授業で使用するための体操服のようなものなのだからびっくりだ。

ブルマといいスク水といい、こんなのが当たり前だった古き良き時代、一度味わってみたいものである。


「カレン、なんでもう水着なんだよ!な、なんか上に着てこい!」

俺は目を逸らしながらカレンに呼びかける…
い、いかん勃ってきた…

「快斗、これも好きなの?ふふ、じゃこうする」

カレンが俺の腕に抱きついてきた。
む、胸が…

それにカレンにこういうのを着させると、子供っぽいところもあってかすごく悪いことをしている気になる…

「とにかくそれで外にはでれないからちゃんと何か着なさい!」

最初のころは天然だったけど、最近は絶対わかってやってるよな…

カレンを着替えさせてから二人で学校のプールに行くと、今日に限って水泳部が練習していた。

「カレン、今日は水泳部が練習だって…」

「やだ!泳ぐ!」

俺たちの声を聞いて、一人の水泳部員が近寄ってきた。

「やぁ、君たちを待っていたんだ。」

そう声をかけていたきたのは水泳部キャプテンの登勢大空《とせがらい》だ。
大空と書いてガライ、…全然関係ないじゃん!

彼はちょっと問題を起こして世間から大バッシングを受けたこともあり、昨年のインターハイこそ欠場したが、超一流スイマーとして、その後も自由形で世界記録を更新するなど、復活劇も相まって今再び人気と注目を集める存在だ。


「なんか用ですか?」

「ああ、カレンちゃんを賭けて勝負しろ!僕が勝てばカレンちゃんは一日水泳部のものだ!」

こいつもカレンファンか…
いやそれで水泳部さんで"ピー"するつもりなんですか?

もう犯罪だろそれは…

「ていうか用事があるんならなんでそっちからいいに来ないんですか?俺たちがプール来たのだって偶然ですし」

「なに、世間が怖くてこのプール場から出れないのだ!」

「ずっとここいるの!?いやだからみんな学校からちゃんと帰ろうよ!?」

まだトラウマなんだ…
それに冬はどうするつもりだこいつ?

まぁ最近は犯罪とかじゃなくてもワイドショーとか大騒ぎする時代だからな…

「で、勝負はまさか水泳とかいいませんよね?それなら無理なんでお断りします」

「はは、そんな不公平なことは言わん!勝負は飛び込みで行う!」

よくみると、なぜかこの学校のプールには飛び込み台があった。

しかも…高くないかこれ!?

「いやいや普通10mくらいだよね!?それでも怖いのに何これ!?30mくらいない!?」

「はは、これはハイダイビングと言ってね、27mの高さから飛び込むれっきとした競技だよ!」

そんなのあるんだ…

こ、怖い…

「ねぇこれって、どれくらいスピードでるんですか?」

「そうだね、飛び込む時には100キロくらいスピードがでるかな?あ、足から入水しないと大惨事になるから注意してな」

「いや、絶対素人がやったらダメな競技ナンバーワンだろ!?お前俺を殺しにきてるよね!?」



俺はカレンと泳ぎにきたはずなのに…

なぜか今おれは地上30メートルのところにいる…

「いやこれほんと無理!怖い怖い怖い!」

「はは、情けないな。それじゃ僕から行くよ!」

登勢さんは先に飛び込んで…
いや飛び込まない。

「どうしたんですか?早くしてくださいよ…」

「ま、まてまて。少し心の準備が…」

なんか登勢さんの顔色が真っ青だ…
え、もしかして怖いの?

「いやでも登勢さんが飛ばないと…」

「わ、わかってる。わかってるんだが、俺、高所恐怖症なんだ…」

「いやなんで飛び込み選んだの!?それになんだっけハイダイビング?とか余計に高いやつにする必要あったの!?」

もう登勢さんは飛び込む前に気を失いかけていた。

蹴り落としてやりたい気分を堪えて俺は下に降りた…

「快斗、何してたの?」

「いや、俺にもわかりません…」

もう時間の無駄も甚だしい水泳部との対決だった…

帰った後、夕食には久しぶりにラーメンを頼むことにした。

すると何故かラーメンの出前を届けにアンがきた…


「ラーメン屋でもバイトしてるの!?」

「かけもち」

「でもピザ屋の方は?」

「それも今バイト中」

「え、バイトおんなじ時間に2つやるとかありなの!?」

よくみるとピザも持っていた…

「あとこれ」

「ん?何これ?」

「水素水」

「また変な商売に引っかかってないか?」

「これ飲んだら二日酔いとか一切ならないから」

「やっぱり影響されてるじゃねえか!それに俺は高校生だから酒飲めないよ!」

必死に借金を返したくて迷走しているアンであった…

ラーメンを食べていると、電話が鳴った。

「快斗、夏休みなんだから一回くらい帰ってきなさい!」

母親からだった…

「快斗のママ?」

「ああ…帰ってこいって。どうしようかな…」

「快斗のママ、ビッチ?」

「んなわけないわ!お宅が特殊すぎるだけだよ!」

「快斗、私も行く!」

「は?どこに?」

「快斗の実家」

「え、それはさすがに…」

でもここにカレン一人置いておくわけにもいかんしな…
でも親になんて言おうかな…

「行くの!私は快斗の彼女!」

「はいはい…」

何故か急遽実家にカレンを連れて帰ることになったが、しばらく学校の連中と会わずに済むからそれはいいことだなどと思ったのはやはり大間違いだった…


次回 地元でもカレンがピンチ!?

快斗の両親との初対面でカレンの意外な一面が?

不束者ですがどうぞ宜しくお願いします…



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