校長からの課題が娘の処女を守れ…だと!?

明石龍之介

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第53話 太るぞ

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「失礼します!」

放課後に校長室くるのも久しぶりだな…

「おお、我が心の友よ!待っておったぞ!」

こうやって喋る時はろくなことがないんだよな…
いや、まともだった時なんてないけどさ…

「修学旅行ではよくも逃げてくれましたね。それで?なにか問題でもあったんですか?」

「ほほ、愛嬌愛嬌。さすがよくわかっとるの。ほれ、こんなものが届いたのじゃ」

『校長の座をかけて勝負を申し出る。』

こう書かれた紙を見せながら校長は困った顔をしていた。

「これ…また選挙をするとかですか?それに誰から?」

「いや、勝負の内容は決闘を申し込む側が自由に決めていいことになっておるんじゃ。それに誰からのものかもわからんのじゃが…」

「…ちなみに断るって選択肢はないんですよね?」

「うむ、校則に『男子たるもの決闘を断るべからず』と書いてあるからの…校長直々に校則を無視するなど示しがつかんくなるわい…」

「いやほんとに校則一回作り直せよ!?全部自分の首絞めてないか?」

創立時にどうやって作ったのか見てみたいよ…

「とにかく、この手紙の主を探し出してくれい!」

「はぁ…まぁなんとかやってみます。その代わりと言ってはなんですが一つ教えてくれませんか?」

「取引かの?やるようになったわい君も。してカレンのことじゃろ?」

「話が早くて助かります…。なんで一年なんですか?もしかしてですがこの本のように16歳まではダメとかそんな曖昧な理由じゃないですよね?」

俺は校長の著書『世界の片隅で愛を囁く』を机に出した。

「お、読んだのか?感動したじゃろ?しかし残念ながら半分正解とだけ答えておこうかの。16歳になるまでカレンが綺麗な身体であってほしいとは思うとるよ。」

「え、じゃあもう半分はなんなんですか?」

なにか特別な理由があると言うのか…

「聞きたい?」

「聞かせてくれないと協力しません!」

「ふむ、この話を読んだことはないかえ?」

そう言って校長が一冊の本を出してきた。

これは…

『童貞乱舞』
これは校長の著書の中でも珍しくバトルものになっていて、とある理由から一年間童貞であることを余儀なくされた若者が、据え膳を食えない状況下でどこまで潜在能力を引き出されるかという、まだ雑誌掲載段階の小説で連載途中で休載になっている不世出の作品である。

そしてまだ発売されていない単行本のサンプルを出してきた。

「これがなにか?」

「ほれ、主人公の男、君とそっくりじゃろ?」

「はぁ」

「そう、むしろ目的は君だったのじゃ」

「はぁー!?」

「娘の処女は守りたいと思っていたが、それ以上になんの能力も持たない童貞の君がムラムラを抑えながらこの学園の強者たちとどう闘っていくのかを見たくて指名したのじゃ。予想以上の成果をあげてくれておるおかげでようやく続きが書けそうじゃわい」

「そ、それでわざわざカレンと同棲までさせたんですか…」

「うむ、カレンは可愛い上に無防備じゃからの。君がムラムラ発狂しそうになっているのがリアリティに富んで実によかったわい。引き続きムラムラしながらカレンと自分の貞操を守るのじゃぞ。」

「ふ、ふざけんな!人で実験してたってのか!?娘まで使ってそんな手の込んだことよく思いついたな!?」

「でもほれ、私の脚本通りになっとろう?」

「ぐっ…」

どおりでキスしたり付き合ったりは認めるわけだ…

この本をチラッと読んでみたが、まんま俺だ…
こいつ、俺を本のネタにしてやがったのか!

「以前から君に目をつけていたのも事実じゃ。君なら見事童貞を拗らせまくって面白いことをしてくれると見込んでおったからの」

「…わかりました!もういいですよ。でも約束したのは俺ですから一年間はしっかり課題を遂行します。でもそれで本当に終わりですからね!約束のお金もきっちりもらいますから!」

「ほほ、かまわんよ」

俺は怒りのあまり扉を思い切り閉めて出て行った。

(ほほ、怖い怖い。まぁでも、君を選んだ理由はうちの学校で唯一まともな快斗くんなら娘を預けてもよいかもなどと思ったからとは死んでも言えんの。罰金を課してみたり色々いじめたのによーやっとるわい。あと半年しっかり頼むぞい)



「クソ、なんだあのボケナス!絶対一億円もらってカレンとどっかに逃げてやる!」

俺は怒りが収まらないままカレンを迎えにいった。

「快斗、怒ってる?」

「はい、怒ってます!」

でもカレンに八つ当たりしてもな…

「カレン、春になったら校長から金もらってどっか遠くに行こうか」

「パパお金くれるの?いくいく!ハネムーン!」

ああ、もう本当に結婚してもいいよ。
こんなにカレンは可愛いんだから。

「パパの用事ってそれ?」

「あ、いやそれがだな…また校長が勝負を挑まれたらしいんだけど、それが誰かわからないって言うから探してほしいんだって…」

「パパピンチ、カレンも働く!」

「そうだな…一応あの人が校長であってもらわないと寮のこともあるし…」

しかし誰なんだ?

薬師寺さんは多分違うと思う…
あんな正面切って負けたことだし、何より今は校長と和解している。

命先輩は?
まぁ嫁を共有しているというおぞましい関係だけど、校長はいいお客さんだ。

あとは…アランさん?
でも義理の兄である校長にたてつく意味がわからんよな…
それにゆくゆくは校長になってくれって本人から言われてるのに…

あーわからん!

多分俺の知らない誰かなのかもしれないな。

明日純也に事情を説明して情報集めてもらおう…

二人でラーメン屋に入ると、奥の席に薬師寺さんと蓮水さんがいた。

向こうは気付いていないようだ。
二人の会話が聞こえてくる…

「どうしてあんなにムードたっぷりだったのに沖縄でなにもしてくれなかったのよ!?」

「い、いや俺だってなんでもいいって訳じゃ…」

「あの時はいいっていったじゃない!私のことが嫌いならはっきり言えば!?」

「ち、違うんだハスミン…これ」

「なによ?これ…指輪?」

「俺の記念すべき5300人目になってくれ。それで俺の女遊びは終わりだ」

「善…」

いやいやまてまて、ツッコミたいところだらけだぞ!?

まず沖縄でなんもなかったの?
あと学校前のラーメン屋でプロポーズするなよ!
それに記念すべき5300人目?
また増えてるし全然嬉しくないだろ!

これにまともにキュンとくる蓮水さんも相当バグってるわ!

「快斗、ロマンチック」

「一個もないわそんな要素!」

なんかラーメン屋で急にイチャイチャしだしたアホな先輩たちに感化されて、カレンもロマンチックモードになってしまった…

「快斗、優しくチューして」

「いや多分とんこつラーメンの味がするって!ロマンチックなのをここでやったらダメなの!」

まぁあの二人がこんなことになるとは想像もつかなかったけど…

でも薬師寺さんってイケメンじゃなかったら絶対俺より彼女いないと思う…

つくづく思うが世の中は…顔だな!

家に帰ると、アンが新しく出店したちんすこう専門店のビラが入っていた…

儲かるのかこれ?

「快斗、今日はピザは?」

「いやさっきラーメン食べたじゃん…」

ピザ屋には電話しなかった。

二人でテレビを見ていると誰かが玄関をノックしている。

「はーい…は?」

アンが立っていた…

「今日注文してないんだけど…」

「押し売り」

「図々しくなったな!」

「買って」

「いや、お腹いっぱいだから…」

「じゃあDVD」

「まだ売ってんのか!?諦めろよ…」

なぜかピザを買わされた…

「明日もよろしく」

「明日はパスタ頼んでやろうか?」

「殺す」

「いやまじでパスタをなんだと思ってるんだ!」

アンに押し売られたピザをカレンは嬉しそうに食べていた。

「カレン、太るぞ…?」

「大丈夫だもん」

「なんでそんなに自信満々なんだよ?」

「ママ太ってない」

「いや根拠それ!?親父ハゲてないから俺も大丈夫的な?メラニーさんは結構食べるのか?」

「ハンバーガー10個は食べる」

「死ぬぞそれ!?」

あの身体はどうやって形成されてるんだ…

テレビを見ていると、先日のアンの放送が流れていた。
しかしカレンにチャンネルを替えられた…


夜になって校長の依頼に備えようと、カレンから高村さんに電話してもらったが、珍しく不在だった。

本格的に色ボケしたんじゃないだろうな…

「じい、お盛ん」

「それ聞いたらアランさん発狂しそうだな…」

この日は結局何も出来ずに寝ることにした。

翌朝

誰かが朝から玄関を激しく叩く音がした。

「なんですか朝から…え!?」

校長が息を切らして立っていた?

「どうしたんですか!?」

「た、大変じゃ!学校が…」

「なんか火事でもあったんですか?」

「いや…乗っ取られた…」

「は?」

「学校が乗っ取られたのじゃ!現在占拠されておって学校に入れんのじゃ…」

「そんな学生運動みたいなこと…誰にですか?」

「それが現在は向こうに付いた先生らが学校を封鎖しておるんじゃが黒幕がわからんのじゃ…」

「と、とにかく話だけじゃなんとも…俺たちも学校に行ってみます!」

「き、気をつけての」

校長が気をつけてだと?
相当参ってるな…

そして学校についたのだがまさにとんでもないことになっていた…


次回 学校を取り戻せ!

誰が味方で誰が敵なのか!?

史上最大の闘いが幕を開ける。

ほんと事件の絶えない学校だな…

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