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第3章 変わるもの 変わらないもの
70.護衛依頼の真実 ※虫の話題有
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※後半、少しですが虫の話題あります、苦手な方はご注意ください。
***
護衛対象7組の内訳は、1組がローザルゴーザに住んでいる家族4人で、4組がオセアン大陸に、そして2組がマーヘ大陸に帰る団体だ。
今回の護衛依頼はいろいろと複雑な事情が絡み合っている。
まず、街の中で犯罪行為に手を染めれば出発の際の証紋確認で判明するため、悪い連中が犯罪行為に走るなら街の外になる。
街の外であっても、犯罪行為を行えば次の街や村に入る際の証紋確認で判明する。
今回の問題は、この犯罪行為を行うと危惧されているのがマーヘ大陸――海の向こう、異国の連中であるという点だ。
市町村の目の届かない場所に密輸船を隠していたりすれば、バレる事無く自分の国に帰れてしまう。
マーヘ大陸では人族を誘拐して連れ帰れば英雄と讃えられ、それ以外の種族を連れ帰っても奴隷が増えるから歓迎される。
つまり見目の良い者や子どもは格好の餌食と言っていい。
トゥルヌソルから港町ローザルゴーザまでは歩いても半日、6時間程度という近距離で、地球の道路みたいにアスファルトで加工されているわけではないけど、歩き易いよう整地された道がずっと続いている他、見渡しの良い平原がどこまでも広がっている。
この道なら護衛は要らないのが常識だと言われるくらいには安全な街道。
レイナルド達が心配しているのは、護衛も無しに帰路についた人々が街道上で襲われてそのまま連れ去られてしまうことなのだ。
(チロルさんのところにも来てたけど、トゥルヌソルの全部の宿に緊急の知らせを飛ばして宿泊客の帰る予定日を確認、帰路にトゥルヌソルの冒険者を護衛につけるためあらゆる人達の日程を調整したんだからシューさんやララさんは大変だっただろうな……)
観光目的のお忍びって体だったのも良くない。五日前に俺が声を掛けられて一騒動を起こしていなかったら未だに気付いていなかったかもしれないのだ。
もしも何も知らずに皆が帰路についていたらどうなっていたか。
護衛の件で、マーヘ大陸の貴族がいる、って理由を明かしたらほとんどの旅客が「判りました」って即答だったらしいからな。
(どんだけ危険視されてるんだろ……)
レイナルド曰く「マーヘ大陸の貴族が王都でなくトゥルヌソルに居るって事は「やるぞ」っていう宣戦布告と同じだ」って。
港町に近いってことは街道を外れれば海に出るってことだから。
(犯罪者なら入国拒否なり強制退去なりさせられるけど、まだ何もしてない人を拒否は出来ないから厄介なんだよ)
だからこそ今回の護衛依頼で、マーヘ大陸の貴族がプラーントゥ大陸を出るまでレイナルドパーティが目を光らせる事になった。
そう、護衛なんて表向きの理由。
要は監視だ。
(危険なのが外じゃ、いつ攫われるかも判んないから旅人全員に護衛を付けなきゃいけないのは変わらないし、他人と旅するのが窮屈、自分は大丈夫だからって護衛を断った人もいるって言ってた……貴族と一緒にレイナルドパーティがいれば、最悪でも海に出る前に確保出来る)
旅客がトゥルヌソルを出るのは昨日からで、貴族が今日というのにも違和感があるし。
この時期の旅客はプラーントゥ大陸の民に限らないし。
あらゆる懸念事項を想定し作戦を立てているけれど完璧なんてどこにもないから、取れる手段は全部取る。
(オセアン大陸の人たちもすごく協力的だって言ってたもんな)
マーヘ大陸を危険視しているのはどこの大陸も一緒だが、オセアン大陸は、プラーントゥ大陸と共にマーヘ大陸を挟んでいる西の大陸。
被害はうちと同様なのだ。
広場で最初に合流したのはローザルゴーザに住んでいる4人家族で、雄体のご主人と奥さん、9歳と5歳の男の子たちだ。
厳つい冒険者が勢揃いしている中に俺がいたことで近付き易く見えたのか、気付いたら懐かれていて、クルトと二人で全員が揃うまで遊び相手をすることになってしまった。
その後で続々と集まったのがオセアン大陸の人々で、四組のうち二組が観光に来た一般庶民。
もう二組は祭りで自国の商品を売り、ついでに仕入れを済ませた商人。それぞれに自国から護衛の冒険者を連れて来ていた。
その冒険者達にも予め事情を説明済みだ。
(守らなくちゃ)
決意を新たに拳を握る。
初対面の彼らのことも応援出来るよう順番に挨拶をしていった。
と、ゲンジャルから「来たぞ」と耳打ちされて顔を上げると、二台の豪華な馬車と、付き従う12人の護衛は……冒険者なのかな。
俺がこちらの世界で初めて見ると言ってもいいくらい異様だった。
全員が頭にターバンを巻いているだけなら「異文化」の興味深い光景に目を奪われただろうけど、いまは違う。祖先の姿にとても近いと予め聞いていたものの実際に目の前に二足歩行のカエルが10人以上いるのは、ちょっと怖い。
(カエル、日本じゃ手に乗せたり小学生の頃はオタマジャクシから育てて教室で飼ってたりしたけど……あの目が可愛いなって思っていた頃もあったけど……)
怖い。
ゾワッとした。差別、迫害、そういうことはダメだという意見を変えるつもりはないが、友好的に接するには為人を知るための時間が必要だと言わざるを得ない。
(普通と違うものを恐れる、か……ホントだな)
彼らが通ると、そこにいたトゥルヌソルの人々がぎょっとして距離を取るなど、人の弱い部分を目の当たりにして気持ちが沈んだ。
あんな態度を取られれば恨みも募って当然かもしれない。
(……だからって誘拐や拉致は絶対に許せない)
そう思ったのが顔に出たのか、不意に肩を叩かれた。
驚いて目線を上げると心配そうな顔をしたクルトさんと視線が重なる。
「大丈夫?」
「……大丈夫です。マーヘ大陸の人に初めて……初めてはあの執事みたいな人か。だから、カエル科の、祖先に近い姿の人を初めて見て驚いただけです」
「そっか。うん、慣れていないとびっくりするよね」
「クルトさんは以前にもお会いしたことがあるんですか?」
「うん。それに俺の故郷にはカメ科やトカゲ科の祖先に近い人達が多かったし」
「インセクツ大陸には人間を恨んでいないカエル科も多いんでしたっけ」
「そうそう。ただ、まぁ……暑いのと、虫を食べる習慣がなければ、もうちょっと誘いやすいんだけど」
「うっ……」
虫か。そうか、爬虫類系だもんね。
……なるほど。
気軽に旅行したいと言える大陸ではなかった。
(オセアン大陸には水人族が多いって言ってたけど、あの人たちはみんな獣人族人っぽいな)
気分を変えたくてオセアン大陸の人たちに視線を転じる。
水人族は水辺に暮らすというからトゥルヌソルには来られないのかな。水の都と名高いオセアン大陸にはいつか行ってみたいが、あちらの主食は何だろう。
プラーントゥ大陸と変わらないと良いな……そんなことを考えていた脳内に、不意に響いた甲高いアラーム。
「!」
驚いて周囲を見渡せば、いつの間にか合流地点に到着していたマーヘ大陸の団体に……。
「うっ……わ」
思わず漏らした声にクルトが「どうしたの?」と声を掛けて来る。
「い、いえ、何も……」
どう説明すべきか判らなくて誤魔化したけど、これ、どうしようかな。
12人の護衛全員。
馬車の中の、4人。
(そっか、これが天啓か……)
唐突に視界に表示された、液晶画面みたいな薄い板が真っ赤に染まっている。
『危険』
たった二文字の表示だったけど、ゾッとするには充分な効果だった。
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護衛対象7組の内訳は、1組がローザルゴーザに住んでいる家族4人で、4組がオセアン大陸に、そして2組がマーヘ大陸に帰る団体だ。
今回の護衛依頼はいろいろと複雑な事情が絡み合っている。
まず、街の中で犯罪行為に手を染めれば出発の際の証紋確認で判明するため、悪い連中が犯罪行為に走るなら街の外になる。
街の外であっても、犯罪行為を行えば次の街や村に入る際の証紋確認で判明する。
今回の問題は、この犯罪行為を行うと危惧されているのがマーヘ大陸――海の向こう、異国の連中であるという点だ。
市町村の目の届かない場所に密輸船を隠していたりすれば、バレる事無く自分の国に帰れてしまう。
マーヘ大陸では人族を誘拐して連れ帰れば英雄と讃えられ、それ以外の種族を連れ帰っても奴隷が増えるから歓迎される。
つまり見目の良い者や子どもは格好の餌食と言っていい。
トゥルヌソルから港町ローザルゴーザまでは歩いても半日、6時間程度という近距離で、地球の道路みたいにアスファルトで加工されているわけではないけど、歩き易いよう整地された道がずっと続いている他、見渡しの良い平原がどこまでも広がっている。
この道なら護衛は要らないのが常識だと言われるくらいには安全な街道。
レイナルド達が心配しているのは、護衛も無しに帰路についた人々が街道上で襲われてそのまま連れ去られてしまうことなのだ。
(チロルさんのところにも来てたけど、トゥルヌソルの全部の宿に緊急の知らせを飛ばして宿泊客の帰る予定日を確認、帰路にトゥルヌソルの冒険者を護衛につけるためあらゆる人達の日程を調整したんだからシューさんやララさんは大変だっただろうな……)
観光目的のお忍びって体だったのも良くない。五日前に俺が声を掛けられて一騒動を起こしていなかったら未だに気付いていなかったかもしれないのだ。
もしも何も知らずに皆が帰路についていたらどうなっていたか。
護衛の件で、マーヘ大陸の貴族がいる、って理由を明かしたらほとんどの旅客が「判りました」って即答だったらしいからな。
(どんだけ危険視されてるんだろ……)
レイナルド曰く「マーヘ大陸の貴族が王都でなくトゥルヌソルに居るって事は「やるぞ」っていう宣戦布告と同じだ」って。
港町に近いってことは街道を外れれば海に出るってことだから。
(犯罪者なら入国拒否なり強制退去なりさせられるけど、まだ何もしてない人を拒否は出来ないから厄介なんだよ)
だからこそ今回の護衛依頼で、マーヘ大陸の貴族がプラーントゥ大陸を出るまでレイナルドパーティが目を光らせる事になった。
そう、護衛なんて表向きの理由。
要は監視だ。
(危険なのが外じゃ、いつ攫われるかも判んないから旅人全員に護衛を付けなきゃいけないのは変わらないし、他人と旅するのが窮屈、自分は大丈夫だからって護衛を断った人もいるって言ってた……貴族と一緒にレイナルドパーティがいれば、最悪でも海に出る前に確保出来る)
旅客がトゥルヌソルを出るのは昨日からで、貴族が今日というのにも違和感があるし。
この時期の旅客はプラーントゥ大陸の民に限らないし。
あらゆる懸念事項を想定し作戦を立てているけれど完璧なんてどこにもないから、取れる手段は全部取る。
(オセアン大陸の人たちもすごく協力的だって言ってたもんな)
マーヘ大陸を危険視しているのはどこの大陸も一緒だが、オセアン大陸は、プラーントゥ大陸と共にマーヘ大陸を挟んでいる西の大陸。
被害はうちと同様なのだ。
広場で最初に合流したのはローザルゴーザに住んでいる4人家族で、雄体のご主人と奥さん、9歳と5歳の男の子たちだ。
厳つい冒険者が勢揃いしている中に俺がいたことで近付き易く見えたのか、気付いたら懐かれていて、クルトと二人で全員が揃うまで遊び相手をすることになってしまった。
その後で続々と集まったのがオセアン大陸の人々で、四組のうち二組が観光に来た一般庶民。
もう二組は祭りで自国の商品を売り、ついでに仕入れを済ませた商人。それぞれに自国から護衛の冒険者を連れて来ていた。
その冒険者達にも予め事情を説明済みだ。
(守らなくちゃ)
決意を新たに拳を握る。
初対面の彼らのことも応援出来るよう順番に挨拶をしていった。
と、ゲンジャルから「来たぞ」と耳打ちされて顔を上げると、二台の豪華な馬車と、付き従う12人の護衛は……冒険者なのかな。
俺がこちらの世界で初めて見ると言ってもいいくらい異様だった。
全員が頭にターバンを巻いているだけなら「異文化」の興味深い光景に目を奪われただろうけど、いまは違う。祖先の姿にとても近いと予め聞いていたものの実際に目の前に二足歩行のカエルが10人以上いるのは、ちょっと怖い。
(カエル、日本じゃ手に乗せたり小学生の頃はオタマジャクシから育てて教室で飼ってたりしたけど……あの目が可愛いなって思っていた頃もあったけど……)
怖い。
ゾワッとした。差別、迫害、そういうことはダメだという意見を変えるつもりはないが、友好的に接するには為人を知るための時間が必要だと言わざるを得ない。
(普通と違うものを恐れる、か……ホントだな)
彼らが通ると、そこにいたトゥルヌソルの人々がぎょっとして距離を取るなど、人の弱い部分を目の当たりにして気持ちが沈んだ。
あんな態度を取られれば恨みも募って当然かもしれない。
(……だからって誘拐や拉致は絶対に許せない)
そう思ったのが顔に出たのか、不意に肩を叩かれた。
驚いて目線を上げると心配そうな顔をしたクルトさんと視線が重なる。
「大丈夫?」
「……大丈夫です。マーヘ大陸の人に初めて……初めてはあの執事みたいな人か。だから、カエル科の、祖先に近い姿の人を初めて見て驚いただけです」
「そっか。うん、慣れていないとびっくりするよね」
「クルトさんは以前にもお会いしたことがあるんですか?」
「うん。それに俺の故郷にはカメ科やトカゲ科の祖先に近い人達が多かったし」
「インセクツ大陸には人間を恨んでいないカエル科も多いんでしたっけ」
「そうそう。ただ、まぁ……暑いのと、虫を食べる習慣がなければ、もうちょっと誘いやすいんだけど」
「うっ……」
虫か。そうか、爬虫類系だもんね。
……なるほど。
気軽に旅行したいと言える大陸ではなかった。
(オセアン大陸には水人族が多いって言ってたけど、あの人たちはみんな獣人族人っぽいな)
気分を変えたくてオセアン大陸の人たちに視線を転じる。
水人族は水辺に暮らすというからトゥルヌソルには来られないのかな。水の都と名高いオセアン大陸にはいつか行ってみたいが、あちらの主食は何だろう。
プラーントゥ大陸と変わらないと良いな……そんなことを考えていた脳内に、不意に響いた甲高いアラーム。
「!」
驚いて周囲を見渡せば、いつの間にか合流地点に到着していたマーヘ大陸の団体に……。
「うっ……わ」
思わず漏らした声にクルトが「どうしたの?」と声を掛けて来る。
「い、いえ、何も……」
どう説明すべきか判らなくて誤魔化したけど、これ、どうしようかな。
12人の護衛全員。
馬車の中の、4人。
(そっか、これが天啓か……)
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